【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

性暴力救済センターの全国連絡会に参加してみました。

 9月28日、29日は、児童相談所と連携をさせてもらっている、日赤なごやなごみ

のご厚意で、性暴力救済センターの全国連絡会に参加させていただきました。

 性暴力救済センターの方々から見た児相や警察の対応や、協働面接の課題について、お話を聞かせていただくことができ、いろいろと有意義な時間を過ごすことができました。

 異なる機関の方からのお話を聞くと、児童相談所の内部にいただけでは気が付きにくい問題に、気付かせてもらえることがあります。

 児童相談所は、様々な機関と連携しているのですが、まだまだ私自身が、そうした機関の事を十分に知らないこともあり、こうした機会をとらえて、私自身も少しづつ他の機関を理解し、また、他の機関にも児相の活動を理解してもらえることができたら、と思っています。

 

事例解説 保育事故における注意義務と責任【書評】

 食物アレルギーばかりになっている」と2つ前のところで書きながら、1つ前の話もアレルギーの話になってしまいましたが…。
 前の連休で読み終わったこの本のことも少し。

事例解説 保育事故における注意義務と責任|商品を探す|新日本法規WEBサイト | 新日本法規出版株式会社

 古笛先生の本は「介護事故における注意義務と責任」(最近改訂が出ましたね)を、前の役所にいたころ読んでいましたが、たまたま書店でこの本を見かけ、類書をあまり見ない分野の本だったので、買っておいたものです。
 …とりあえず、買えなくなると嫌だなあと思うので、関心を持った本は買っておくのですが、読むまでに「積読」になってしまうことが多いですね…僕の場合…。

 買うときには、題名からもてっきり「保育園」「幼稚園」での事故について扱った本だと思っていました。それが中心であることに間違いはないのですが、著者である古笛先生は、「家」「学校」以外の事故について取り扱われたということで、「学童保育」や、「塾」「ボランティア」での事例も扱われています。
 以前読んだ、「未成年者・精神障碍者の監督者責任―Q&Aと事例」と比べると、当たり前ですが①保育園等での事故が中心となっていること(未成年者・精神障碍者監督責任―Q&Aと事例では、あまり保育園、幼稚園は扱われていなかった印象があります。)、そして、②保育園等での事故類型ごとに分けで書かれていること、③過失相殺についても、古笛先生の視点からの一定の見解が書かれていること、他方で④親権者と事業者との責任の割り振りなどは、「未成年者・障碍者の監督者責任―Q&Aと事例」の方が詳しいかなと感じられること、などが印象でしょうか?(いじめについての記載は、少し古いのかもしれません。平成22年初版の本ですので…)。

 ただ、この2冊の取り扱い分野については、最近の重要な複数の最高裁判例が今後の裁判所の判断にどのように影響してくるかが見定め難いところもあるので、これらの本に書かれていることそのまま受け取るだけではいけないのかな、と感じています。
 とはいえ、この分野は、交通事故などに比べると(公開される)裁判例の数自体が少ないので、こうした本を読んで、あとは自分で考えていくほかないのだろうと思います。

 保育園については、「Q&A保育所・幼稚園のための法律相談所」も、少し前に通読しましたね。こちらは、「事故」に限ったものではなく、また、「裁判」以外の事柄も広く含み、「開園の準備」「リスクコントロール」「人事労務」等についても広く触れられていることが特徴です。ただ、いずれも記載としては比較的あっさりしているので、他の書籍で補う必要があるところはあると思っています。
 学校関係では、「改訂 教職員のための学校の危機管理とクレーム対応」「事例解説教師対象暴力」「新しい学校法務の実践と理論」などは通読しましたね…。「積読」になったままの学校関係の本も、まだ二冊残っていますね…(一冊は、読まないうちに最近改訂版が出ました…。ううっ)。
 児童相談所の常勤弁護士、というのは、もちろん裁判対応が第一なのですが、それ以外にも何ができるかは、自分で探していかないといけないと思っています。また、裁判等できちんとプレゼンテーションをするためには、まず自分が理解していないと相手に伝えることはできない、とも思っています。
 そのため、プライベートでこうした関連分野の書籍にも目を通していますが…学校・保育園関係は少しお休みでしょうか。とりあえず10月17日までに読みたい本が一冊あるので…(あまりこれまで通読してこなかった分野の本なので、少してこずっていますね…。)。
 本当は、こうした本を読んだ後の振り返り、復習をもっとできると、もっと力になると思うのですが…。

アレルギー大学実習「エピペン・スキンケア等」を受けてきました。

 9月22日には、アレルギー大学の実習「エピペン・スキンケア等」を受けてきました。

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…単純に、エピペントレーナーを渡してもらって、打つ練習をする講習は、これまでに2度ほど受けています。

 ただ、アレルギー大学の実習は、以前書いたように何かしらの工夫がされていることが多いので、「おそらくエピペントレーナーを打つだけではないだろう」と思っていました。

 内容としては、①アレルギー治療における喘息コントロールの大切さ、吸入具の種類と、その使い方についての特徴、②アトピー性皮膚炎のスキンケアの方法、③エピペンの使い方の3つでした。喘息の吸入具についても、なかなかイメージしにくいものだったので、とても助かりましたが、なんといっても③が一番身になりました(これまで2度講習を受けていても)。

 なぜなら、実際に「担任教師」「校長」「アレルギー児」などの配役を振られたうえで行う、ロールプレイまで含んでいたためです。

 実際にロールプレイをしてみると、アレルギー児の状態が悪くなったことが、何が原因かはわからなくても、アレルギー症状であることを疑って行動をしなければならないことがよくわかりました。

 また、「どういった対応をすればよいか」について混乱してしまうため、名古屋市の作成している「緊急時個別対応マニュアル」を逐一参照することでいかに動きやすくなるか、が非常によくわかりました。

 この緊急時個別対応マニュアルは、意識せずに見てしまうと、「当たり前のことが書いてあるな」で終わってしまうかもしれませんが、一度ロールプレイをやってみると、いざ緊急に判断を迫られた場合に、「何をすればよいか」が書いてあることでどれだけ助かるかが、よくわかります。

 もちろん、実際の現場では、この緊急対応マニュアルだけでは、足りないところというのも、あるのでしょうし、学校と福祉が同じマニュアルでよいのかはありますが…。

 とても参考になりました。

 

 これで、アレルギー大学の上級までの一通りの講習は受けてみたことになります。

 受ける前は、「これだけの数の研修を受ける意味があるのか」、特に(栄養士のように食事を作る立場ではないので)「実習を受ける意味があるのか」について、少し悩んでいました。しかし、どの実習も「学んだ知識をただの知識で終わらせないための一工夫」がされていて、「実際に現場に立ったらどうするか」ということについての「視野」を広げていただくことができました(なお、一緒に参加した方々と、お昼休みなどに話す中では、「管理職の人にこそこうした研修を受けてほしい」という声が聞かれました。)。

 まだまだ、足りないことは多いのでしょうが…。

 それでも、ありがとうございました。

アレルギー大学実習「小麦粉を代替した各種の料理」

 9月14日は、アレルギー大学の実習に参加してきました。 

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 これまでの実習では、「災害対策」「コンタミネーション防止」と、なにかしら応用的な視点を取り混ぜた実習だったために、正直、今回の実習も、ただ渡されるレシピを作るだけではないのではないか…と思っていました。

 …ちょうど、上級講座で、アレルギー除去だけを考えると、栄養バランスが崩れてしまうことが多い…という話を聞いていただけに、もしかして、こんな実習かな?、と考えていたものはありました。

―アレルギー対応でないレシピを渡されて「このレシピを卵、小麦、乳を他の物に代替して、かつ、栄養バランスの取れた品にして作って下さい」と言われて、最後に合格かどうかを栄養士の先生が判断するというような―

 実際に参加してみると、そんなことはなく、講師の先生から渡された代替食のレシピを作成する実習でした。ただし、そのレシピを作るときに、講師の先生がどれだけの工夫を織り交ぜたかについて伺えたことは、とても勉強になりました。講師の先生は、「子どもがおいしく食べられるように」という食育の観点から、「味」はもとより「色彩」や「食感」まで配慮して、代替する粉の種類(米粉、片栗粉等)や割合を細かく決めたからです。

 そして、午後には、実際にいくつかの種類の粉を水で溶いて加熱し、その硬さや色合いを実際に体験する作業もありました。

 アレルゲンを除き、栄養バランスが取れた食事、というだけでも非常にハードルが高く感じたのですが、さらに、おいしさ、色、食感まで追求するとなると、なかなか際限がない気がしてきます。

 …とはいえ、アレルギーのお子さんを持たれたお母様方は、おやりになっていることなのですよね…。いくら代替食の栄養バランスがとれていたとしても、お子さんが食べてくれなければ、栄養が届かないのですから…。

 考えれば考えるほど、大変だと思います…。

 最後に。

 講師の伴亜紀先生が言われた言葉で、印象に残っている言葉を一つ書いておこうと思います。

 「食べる時間は、一番子供の様子を見ることができる時間です。今後子どもが大きくなれば、そんな時間は無くなってしまいます。ぜひ一緒に食べてください。」

 

※ このところ、アレルギー大学が容赦(?)をしてくれないので、ブログの記事が食物アレルギー一色になってきました…。できれば、この連休の残りは、読みかけの書籍を1冊読んでしまい、次の1冊に取り掛かりたいと思っているのですが…。

アレルギー大学上級講座を受けてきました。

 9月8日は、プライベートで、アレルギー大学の上級講座を受けてきました(アレルギー大学は、すべてプライベートで私的に受講しています。)。

 「上級」にふさわしく、これまで教わったことを今一度振り返らせ、受講生の心に新たな「課題」を置いて行ってくれる、そんな内容の講座でした。

 1限目の「最新医療・免疫療法」は、これまでの講座で話の出てきた食物アレルギーの治療法である免疫療法に話題を絞って、詳しくお話しいただくものでした。免疫療法の原理は、なんとなく理解していたものの、実際に実施するときのイメージはあまり持てていなかったので、会場からの質問と相まって、多少なりとも理解が進み、助かりました。

 2限目の「アレルギー児の栄養食事指導」は…。衝撃でした。これまでの実習で、アレルゲンを除去した食事を作ることをやってきただけに、毎食アレルゲンを除去した「だけ」の食事では、どれほど栄養価のバランスが崩れてしまうかを目で見える形で示していただき、それをどのように補うかの「問い」を投げかけられたことは、「誰のためにアレルギー対策をしているんのか」という原点を振り返させられる内容でした。

 そして、3限目の「アレルギー児と家族の支援」は、どうしても親御さんの考えで治療が進められることが多く、なかなか子どもの治療意欲を引き出しにくい食物アレルギー治療の現場において、どのように子どもの納得を得て治療を進めていくか、という、まさにこれまでの講義の中に含まれていなかった視点の話でした。ただ、実際には簡単な話ではなく、個別の事例に応じた対応を積み重ねるしかないのだろうとも感じましたが…。

 そして、最後には、他の参加者と、話し合うひと時を持ちました。

 ここで聞いた話、ここで学んだことを、どうしたらほかの人にもわかってもらえるのか。

 アレルギー問題に関わってこられた先達の話を聞きつつ、そうしたことについて、思いを巡らせることができました。

 ここで学んだことを、どう生かしていくか、これからどのように学びを続けるのか、そうしたことの答えはまだ出ていませんが…。

 いろいろな課題を手渡された気もします。

 僕にできることは多いものではないのかもしれませんが…。

 ありがとうございました。

アレルギー大学実習「アレルギーっ子の災害対策」に参加して。

 8月31日は、アレルギー大学の実習、「アレルギーっ子の災害対策」に参加してきました。

 実のところ、参加する前には、「今回は、それほど受講する必要はないかもしれない…」とも思っていました。平成31年3月10日の「第3回小児アレルギーを学ぶセミナー~アレルギーの基本から災害の備えまで~」で、宮城県立こども病院の三浦克志先生の「災害からアレルギー児と自分たちを守る」という講義を受けたことがあり、東日本大震災の経験を基にしたお話…アレルギー児に必要な物資の提供が途絶えたこと、外部から物資提供を行おうとしてもアレルギー児の知識・情報をもって仕分けしてくれる部署がなかったこと…を聞いたことがあったからでした。

 たぶん、同じような内容かな、と思いつつ、それにしては「講義」ではなく「実習」で、かつ、会場が「国際調理師専門学校名駅校」必要な持ち物が「エプロン、三角巾…」という通知に、ちょっと首をかしげていました…。

 

 いや、これは受けておいてよかったと思いますし、受けた方が良いです。本当に。

 なぜなら、実際に(被災地現地に入ったというような仮定で)果たしてアレルギー児に配慮した炊き出しを行えるか、という「炊き出しの実習」だったためです。

 調理条件は以下の通り。

 1、水は2Lのみ使用可。

 2、コンロ二つ、鍋2つ使用可。

 3、食器・調理器具は洗えない。

 4、ラップ・ホイル・キッチンペーパー・クッキングシート・ポリエチレン手袋・アルコール消毒薬は使用可。

 

  はじめこの条件を見た時点でも、お恥ずかしいことに「どれだけ難しいか」がすぐには理解できなかったのですが…。

 野菜を洗うにも、水の使用に限りがある。調理器具は洗えないし、フライパンも使えない。そして何より、ゆでたジャガイモをつぶしたくても、水が足りなくて冷ますことができず、つぶすにつぶせない(想定外でしたね…水が使えるって、便利なんだなぁ…ということが分かりました…)。

 調理をしていくうち、そうしたことで、どれだけ作るメニューに制限がかかるかがやっと(身に染みて)わかってきました。

 また、被災時は、ごみの収集がされるわけでもないので、「できるだけごみを出さない」という要請もあり、これも地味に効いてくるものでした。 

 この調理条件の上で、7大アレルゲン(卵、乳、小麦、そば、えび、かに、落花生)を使用しないようにする。材料もあるもので作る。特に主菜のたんぱく質は、各種缶詰のうち一種が、抽選で指定されるという方法。

 そして、わが班は、見事「大豆の水煮缶」を引き当てます…。

 

 大豆の水煮で主菜…。すでにこの辺で僕個人の対処能力を超えたような気もします。

 同じ班の皆さんの力があって、何とかなりましたが…。

 僕は、ほぼもっぱら、力仕事(ゆでたジャガイモをつぶしたり)とか、他班の偵察?(他班がアルミホイルで(ふたのなかった)鍋にふたをしていたのを見て、それをうちもやろう、とか、アルミホイルでジャガイモの皮をむく方法をみて、あそこもああやってる、とか…)で、多少なりともお役に立てた…のかはわかりませんが…。

 う~ん、これを一度経験すると、アレルギーのお子さんのいるご家庭では、災害に備えて「自助」を用意したほうがいいことも非常に納得がいくし、また、炊き出しを実施する側としても、いきなり災害時に「アレルギーの子がいるから対応してほしい」と言われても難しいだろうなあ(もっと前に言っておいてほしいだろうなあ)、ということが、よくわかります。

 やっぱり、知識として知っているのと、実習でやってみるのは、全然違いますね…。

よくわかる予防接種の基本【書評】

 児童相談所では、ケースの検討する場合等で、お子さんの予防接種に触れられることも、多々あります。

 そこで、少し前にこんな本を買っておきました。

www.chugaiigaku.jp

 本屋さんで、類書3~4冊を比較検討して買った本です。

 あらかた目を通しましたが、僕個人にとっては「当たり」だったな、と思っています。

 特徴としては、医学的な知識から始まり、制度について、各個別の疾患についてと、幅広く網羅的に触れられている点だと思います。医学的な基本にのっとり、かつ、全体像を把握するのによい本です。

 他方で、ごく普通の方向けには、少し難しすぎるところはあると思います。

 僕も、「食物アレルギー」についてある程度勉強していたおかげで、何とか大雑把には内容をつかめましたが、正確に内容を理解するためには他の書籍等で勉強しないといけないかな、思っています。

 なお、法律面のことはそれほど触れられていません。もっとも、この分野で法律面の本というのがあるのかどうか、わかりませんが…。

 それにしても、感染症・予防接種等や、食物アレルギーについて勉強してくると、「免疫学」というものをきちんと押さえないと、呑み込めないままのところが出てきてしまうのだろうなあ…と感じています。

 いずれ「免疫学」の本も読んでみたい気もしますが、そうした本を仮に読むとしても、さすがに今年はもう難しいかもしれませんね…。