【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

外国人の法律相談Q&A【書評】

 本当は、この週末も、いろいろと予定は入っていたのですが、折からの台風19号のために、参加予定がすべてなくなりました。

 正直、先々週・先週と、2週続けて週末の休みを、プライベートで学会等を聞きに行くことで使ってしまっていたので、正直、休みが取れたのは助かりました。

 …で、この本を読んでいました。

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 なお、これから読もうと思う方は、近日中に(9月下旬って書いてあるのですが、まだみたいです…)第4次改訂版が出るようなので、そちらがおすすめです。

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特定技能に関する入管法の改正技能実習に関する法の成立国際裁判管轄に関する人事訴訟等の改正などが、盛り込まれているんじゃないかな…と思います。)。

 

 もともと、神奈川県で弁護士をしていた時に、購入した本です。

 神奈川で弁護士をしていたころには、労働等で外国とかかわる相談もないわけではなかったものの、ある程度の知識を要求されたのは、外国人の刑事事件をめぐる手続きでした。「先の見通し」(日本での在留を続けられる可能性があるか、どの程度かなど)を説明できないと適切な弁護戦術のアドバイスが難しい場合があったためです。

 もともと、「法廷通訳ハンドブック」はもっており、外国の方に日本の刑事手続きを説明する際などに重宝しましたし、外国人の刑事事件にまつわる注意点などは、「外国人刑事弁護マニュアル」などを折に触れて参照していました。

www.gov-book.or.jp

www.genjin.jp

 それでも、特に「在留特別許可」等についての知識が必要になったこともあり、類書を比較検討して、この「外国人の法律相談Q&A第3次改訂版」を購入しました(横浜の至誠堂書店さんには、いつもお世話になっていました…。)。

 

 この本の特徴は、①単に出入国制度(在留関連)や刑事手続のみならず、国籍、結婚や離婚、親子関係、相続、就労、留学から、税金、社会保障等に至るまで、幅広い記述があること、②Q&A方式であり、比較的記述がわかりやすいところです(といっても、一般の方にお勧めできるかというと…少し難しい気もするのですが…)。

 他方で、実際にある特定分野の事件を受任するためには、この本だけでは心もとないと思っています。その場合には、それぞれにより特化した書籍で知識を補うか、経験のある先生等の助力を得た方がいいのではないかと思います。

 とはいえ、出入国管理及び難民認定法についての基本書をいきなり読むのはなかなかきついとも感じていたので、(通読はしなくても)手元に置いておく一冊としておすすめです。

 多くの弁護士にとっては、1冊あればかなり心丈夫な本ではないかと思います。

 それにしても、第3次改訂版も平成28年に出たものなのに、もう上に触れたような各種の法改正があるというのは…。この分野も移り変わりが激しいなと思いますし、なかなか、この分野を専門にした先生でないと、こうした外国の方の事件に取り組むのは難しいかもしれないと感じてしまいます。

 

 なにも、いま第4次改訂版が出る前に通読しなくてもよかったのですが、10月17日の勉強会で、外国籍の児童に関する問題が取り扱われると聞いており、こうした機会(そうしたイベントがあるから、それまでに読もう!)を活かさないと、通読できない気がしたのですよね…(やはり通読しないと、理解に限界があると思っています。)。

 今後は、第4次改訂版も出たら購入するでしょうし、また別に出入国管理及び難民認定法の本も買ってみたいと思います。

 いろいろな問題となる事例を読んだいまであれば、基本書も読みやすいと思いますので…。

「アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会」を聞きに行っていました。

 10月の4日、5日、6日は、「アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会」を聞いてきました。

 児童相談所がかかわるケースの中には、何らかの依存症をお持ちではないかと思われる方などもいることもありますので、こうした知識は役に立つのではないかと個人的には感じていますし、児童虐待やトラウマといったものと、深く結びついていると感じています。

 そもそも、児童相談所に入る前から、神奈川にいたころに小林桜児先生のお話などを伺い、感銘を受けたこともありましたので、名古屋でも依存症に明るい先生などとお知り合いになれないものかと考えていました。

 …短絡的というか、そうした思いがあり、「どんな方々がこの世界(学会)にいらっしゃり、どんなことが研究されているのか」。それを知りたくて、参加した学会です。

 とにかく、濃密で、充実していました。治療法としては、認知行動療法等に基づくものが多いようでしたが、その方法が工夫を重ねられ、精緻なものとなっていることが印象に残りました。他方で、具体的な症例について伺うと、そうした「方法」が症例に単純に適応できるわけではなく、一人一人の相談者を目の前に、試行錯誤を重ねざるを得ないということも、おぼろげながら感じられました。

 そうした心理的なアプローチばかりでなく、薬理学―薬品等が体に働きかける仕組み、や脳の仕組みなど、医学・薬学に関わる話も聞けたことは(ついていけないところも多々ありましたが)とても興味深かったです。

 …それまで触れていないジャンルの話を聞くと、そこに、まだ知らない「問題解決の方法」があるようで、ついのめりこんでしまいます。

 会場には物販もあり、5冊ほど本を買ってきましたが、少しづつでいいので、読み進めていきたいと思います。

 …こうした時に買う本は、「ブックマーク」や「あしあと」、「お気に入り」に近いものだと思っています。講義で聞いたことだけだと、頭に残らないことも出てきてしまいますが、本を買って本棚においておけば、いつか疑問に思った時に本を開いて思い出すこと、学び始めることができますので…。

 あわよくば、来年も聞きに行きたいものですが…。こうした学会に触れるにつれ、参加者の方から新しい別の学会を教えていただけたりするので、困ってしまいます。

 未熟な僕に、また新しい世界への窓を開いていただき、ありがとうございました。

 可能であれば、また来年も聞きに行きたいと思っています。

性暴力救済センターの全国連絡会に参加してみました。

 9月28日、29日は、児童相談所と連携をさせてもらっている、日赤なごやなごみ

のご厚意で、性暴力救済センターの全国連絡会に参加させていただきました。

 性暴力救済センターの方々から見た児相や警察の対応や、協働面接の課題について、お話を聞かせていただくことができ、いろいろと有意義な時間を過ごすことができました。

 異なる機関の方からのお話を聞くと、児童相談所の内部にいただけでは気が付きにくい問題に、気付かせてもらえることがあります。

 児童相談所は、様々な機関と連携しているのですが、まだまだ私自身が、そうした機関の事を十分に知らないこともあり、こうした機会をとらえて、私自身も少しづつ他の機関を理解し、また、他の機関にも児相の活動を理解してもらえることができたら、と思っています。

 

事例解説 保育事故における注意義務と責任【書評】

 食物アレルギーばかりになっている」と2つ前のところで書きながら、1つ前の話もアレルギーの話になってしまいましたが…。
 前の連休で読み終わったこの本のことも少し。

事例解説 保育事故における注意義務と責任|商品を探す|新日本法規WEBサイト | 新日本法規出版株式会社

 古笛先生の本は「介護事故における注意義務と責任」(最近改訂が出ましたね)を、前の役所にいたころ読んでいましたが、たまたま書店でこの本を見かけ、類書をあまり見ない分野の本だったので、買っておいたものです。
 …とりあえず、買えなくなると嫌だなあと思うので、関心を持った本は買っておくのですが、読むまでに「積読」になってしまうことが多いですね…僕の場合…。

 買うときには、題名からもてっきり「保育園」「幼稚園」での事故について扱った本だと思っていました。それが中心であることに間違いはないのですが、著者である古笛先生は、「家」「学校」以外の事故について取り扱われたということで、「学童保育」や、「塾」「ボランティア」での事例も扱われています。
 以前読んだ、「未成年者・精神障碍者の監督者責任―Q&Aと事例」と比べると、当たり前ですが①保育園等での事故が中心となっていること(未成年者・精神障碍者監督責任―Q&Aと事例では、あまり保育園、幼稚園は扱われていなかった印象があります。)、そして、②保育園等での事故類型ごとに分けで書かれていること、③過失相殺についても、古笛先生の視点からの一定の見解が書かれていること、他方で④親権者と事業者との責任の割り振りなどは、「未成年者・障碍者の監督者責任―Q&Aと事例」の方が詳しいかなと感じられること、などが印象でしょうか?(いじめについての記載は、少し古いのかもしれません。平成22年初版の本ですので…)。

 ただ、この2冊の取り扱い分野については、最近の重要な複数の最高裁判例が今後の裁判所の判断にどのように影響してくるかが見定め難いところもあるので、これらの本に書かれていることそのまま受け取るだけではいけないのかな、と感じています。
 とはいえ、この分野は、交通事故などに比べると(公開される)裁判例の数自体が少ないので、こうした本を読んで、あとは自分で考えていくほかないのだろうと思います。

 保育園については、「Q&A保育所・幼稚園のための法律相談所」も、少し前に通読しましたね。こちらは、「事故」に限ったものではなく、また、「裁判」以外の事柄も広く含み、「開園の準備」「リスクコントロール」「人事労務」等についても広く触れられていることが特徴です。ただ、いずれも記載としては比較的あっさりしているので、他の書籍で補う必要があるところはあると思っています。
 学校関係では、「改訂 教職員のための学校の危機管理とクレーム対応」「事例解説教師対象暴力」「新しい学校法務の実践と理論」などは通読しましたね…。「積読」になったままの学校関係の本も、まだ二冊残っていますね…(一冊は、読まないうちに最近改訂版が出ました…。ううっ)。
 児童相談所の常勤弁護士、というのは、もちろん裁判対応が第一なのですが、それ以外にも何ができるかは、自分で探していかないといけないと思っています。また、裁判等できちんとプレゼンテーションをするためには、まず自分が理解していないと相手に伝えることはできない、とも思っています。
 そのため、プライベートでこうした関連分野の書籍にも目を通していますが…学校・保育園関係は少しお休みでしょうか。とりあえず10月17日までに読みたい本が一冊あるので…(あまりこれまで通読してこなかった分野の本なので、少してこずっていますね…。)。
 本当は、こうした本を読んだ後の振り返り、復習をもっとできると、もっと力になると思うのですが…。

アレルギー大学実習「エピペン・スキンケア等」を受けてきました。

 9月22日には、アレルギー大学の実習「エピペン・スキンケア等」を受けてきました。

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…単純に、エピペントレーナーを渡してもらって、打つ練習をする講習は、これまでに2度ほど受けています。

 ただ、アレルギー大学の実習は、以前書いたように何かしらの工夫がされていることが多いので、「おそらくエピペントレーナーを打つだけではないだろう」と思っていました。

 内容としては、①アレルギー治療における喘息コントロールの大切さ、吸入具の種類と、その使い方についての特徴、②アトピー性皮膚炎のスキンケアの方法、③エピペンの使い方の3つでした。喘息の吸入具についても、なかなかイメージしにくいものだったので、とても助かりましたが、なんといっても③が一番身になりました(これまで2度講習を受けていても)。

 なぜなら、実際に「担任教師」「校長」「アレルギー児」などの配役を振られたうえで行う、ロールプレイまで含んでいたためです。

 実際にロールプレイをしてみると、アレルギー児の状態が悪くなったことが、何が原因かはわからなくても、アレルギー症状であることを疑って行動をしなければならないことがよくわかりました。

 また、「どういった対応をすればよいか」について混乱してしまうため、名古屋市の作成している「緊急時個別対応マニュアル」を逐一参照することでいかに動きやすくなるか、が非常によくわかりました。

 この緊急時個別対応マニュアルは、意識せずに見てしまうと、「当たり前のことが書いてあるな」で終わってしまうかもしれませんが、一度ロールプレイをやってみると、いざ緊急に判断を迫られた場合に、「何をすればよいか」が書いてあることでどれだけ助かるかが、よくわかります。

 もちろん、実際の現場では、この緊急対応マニュアルだけでは、足りないところというのも、あるのでしょうし、学校と福祉が同じマニュアルでよいのかはありますが…。

 とても参考になりました。

 

 これで、アレルギー大学の上級までの一通りの講習は受けてみたことになります。

 受ける前は、「これだけの数の研修を受ける意味があるのか」、特に(栄養士のように食事を作る立場ではないので)「実習を受ける意味があるのか」について、少し悩んでいました。しかし、どの実習も「学んだ知識をただの知識で終わらせないための一工夫」がされていて、「実際に現場に立ったらどうするか」ということについての「視野」を広げていただくことができました(なお、一緒に参加した方々と、お昼休みなどに話す中では、「管理職の人にこそこうした研修を受けてほしい」という声が聞かれました。)。

 まだまだ、足りないことは多いのでしょうが…。

 それでも、ありがとうございました。

アレルギー大学実習「小麦粉を代替した各種の料理」

 9月14日は、アレルギー大学の実習に参加してきました。 

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 これまでの実習では、「災害対策」「コンタミネーション防止」と、なにかしら応用的な視点を取り混ぜた実習だったために、正直、今回の実習も、ただ渡されるレシピを作るだけではないのではないか…と思っていました。

 …ちょうど、上級講座で、アレルギー除去だけを考えると、栄養バランスが崩れてしまうことが多い…という話を聞いていただけに、もしかして、こんな実習かな?、と考えていたものはありました。

―アレルギー対応でないレシピを渡されて「このレシピを卵、小麦、乳を他の物に代替して、かつ、栄養バランスの取れた品にして作って下さい」と言われて、最後に合格かどうかを栄養士の先生が判断するというような―

 実際に参加してみると、そんなことはなく、講師の先生から渡された代替食のレシピを作成する実習でした。ただし、そのレシピを作るときに、講師の先生がどれだけの工夫を織り交ぜたかについて伺えたことは、とても勉強になりました。講師の先生は、「子どもがおいしく食べられるように」という食育の観点から、「味」はもとより「色彩」や「食感」まで配慮して、代替する粉の種類(米粉、片栗粉等)や割合を細かく決めたからです。

 そして、午後には、実際にいくつかの種類の粉を水で溶いて加熱し、その硬さや色合いを実際に体験する作業もありました。

 アレルゲンを除き、栄養バランスが取れた食事、というだけでも非常にハードルが高く感じたのですが、さらに、おいしさ、色、食感まで追求するとなると、なかなか際限がない気がしてきます。

 …とはいえ、アレルギーのお子さんを持たれたお母様方は、おやりになっていることなのですよね…。いくら代替食の栄養バランスがとれていたとしても、お子さんが食べてくれなければ、栄養が届かないのですから…。

 考えれば考えるほど、大変だと思います…。

 最後に。

 講師の伴亜紀先生が言われた言葉で、印象に残っている言葉を一つ書いておこうと思います。

 「食べる時間は、一番子供の様子を見ることができる時間です。今後子どもが大きくなれば、そんな時間は無くなってしまいます。ぜひ一緒に食べてください。」

 

※ このところ、アレルギー大学が容赦(?)をしてくれないので、ブログの記事が食物アレルギー一色になってきました…。できれば、この連休の残りは、読みかけの書籍を1冊読んでしまい、次の1冊に取り掛かりたいと思っているのですが…。

アレルギー大学上級講座を受けてきました。

 9月8日は、プライベートで、アレルギー大学の上級講座を受けてきました(アレルギー大学は、すべてプライベートで私的に受講しています。)。

 「上級」にふさわしく、これまで教わったことを今一度振り返らせ、受講生の心に新たな「課題」を置いて行ってくれる、そんな内容の講座でした。

 1限目の「最新医療・免疫療法」は、これまでの講座で話の出てきた食物アレルギーの治療法である免疫療法に話題を絞って、詳しくお話しいただくものでした。免疫療法の原理は、なんとなく理解していたものの、実際に実施するときのイメージはあまり持てていなかったので、会場からの質問と相まって、多少なりとも理解が進み、助かりました。

 2限目の「アレルギー児の栄養食事指導」は…。衝撃でした。これまでの実習で、アレルゲンを除去した食事を作ることをやってきただけに、毎食アレルゲンを除去した「だけ」の食事では、どれほど栄養価のバランスが崩れてしまうかを目で見える形で示していただき、それをどのように補うかの「問い」を投げかけられたことは、「誰のためにアレルギー対策をしているんのか」という原点を振り返させられる内容でした。

 そして、3限目の「アレルギー児と家族の支援」は、どうしても親御さんの考えで治療が進められることが多く、なかなか子どもの治療意欲を引き出しにくい食物アレルギー治療の現場において、どのように子どもの納得を得て治療を進めていくか、という、まさにこれまでの講義の中に含まれていなかった視点の話でした。ただ、実際には簡単な話ではなく、個別の事例に応じた対応を積み重ねるしかないのだろうとも感じましたが…。

 そして、最後には、他の参加者と、話し合うひと時を持ちました。

 ここで聞いた話、ここで学んだことを、どうしたらほかの人にもわかってもらえるのか。

 アレルギー問題に関わってこられた先達の話を聞きつつ、そうしたことについて、思いを巡らせることができました。

 ここで学んだことを、どう生かしていくか、これからどのように学びを続けるのか、そうしたことの答えはまだ出ていませんが…。

 いろいろな課題を手渡された気もします。

 僕にできることは多いものではないのかもしれませんが…。

 ありがとうございました。