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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

人事労務「メンタルヘルス」

中小企業シンポジウムも無事終わり,昨日は一般社団法人 産業保健法務研究研修センターの設立記念セミナーに参加してきました。

同団体は,メンタルヘルスに対応する法務の研修・開発と,支援を目的として,2012年11月に設立された団体です。

従業員が罹患する労災の中でも,メンタルヘルスに関連する病は,なかなか会社もどうしてよいのかわからず,また,裁判所も「どうしていたらよい結果になっていたのか」が後から考えてもなかなか分からないため,対応が難しい問題です。

これまでも,こうした事件についての裁判例は多少なりともあるのですが,

①個々の事例によって,従業員の方の症状も,会社の対応も異なるので,一般的なルールによって判断がしにくい。

②従業員がお亡くなりになったケースだと,遺族が裁判に及ぶことも多いのですが,いかんせんもっとも事情をご存じの本人が亡くなっており裁判所にも事情が分かり辛い。また,ご本人がご存命の場合も,その症状などから,弁護士,裁判所に十分事情が伝わらない場合がある。

等の事情もあり,過去の判例を多数読んでも,裁判官としては判断に迷う難しい事件の一つでした。

セミナーの中で印象に残ったことは,この二つ。

「第1」 会社の対応が,「排除」か「抱え込み」のどちらかに極端化してしまうこと。

つまり,仕事が出来ない等の理由で解雇等をしてしまう(排除)と,これによる訴訟リスクを招くことになるほか,結局,当の従業員が疾患に罹患した状況は変わっていないため,後任者も同じ疾患に倒れてしまう可能性があることになりますし,

逆に,そうしたリスクを恐れてそのままにしてしまうと,周りの従業員に負担が掛かるということになります。

つまり,いずれも望ましいわけではないという問題点の指摘でした。

これは,「なるほど」と思いました。

第2に,対応策として,臨床医や産業医,弁護士,社会保険労務士産業カウンセラーコンサルタント等,この問題を取り巻く専門職の間を取り繋ぎ,どこに相談すればよいかを判断して相談・対応をしていくメンタルヘルス法務主任者」を育てるという発想です。

たしかに,弁護士は精神疾患のことが分かるわけではないし,医師は法律のことが分かるわけではない,という状態で,個々に対応していたことが,結局メンタルヘルスに対する対応策がなかなか発展しない根本にあるのかもしれないと感じました。

また,こうしたカウンセリング関係の仕事に携わる人の常として,「1人で抱え込ませず」「周りのサポートを受けさせられる状態にする」ということは,カウンセリングの観点からも理にかなっているように感じます。

これによって,一朝一夕にメンタルヘルスの問題が解決に向かうほど生やさしくはないと思いますが,それでも,こうした取り組みが実を結んでいくようになれば良いな,と思います。