よういくの日(NPO法人Wink)
やれやれ、春になると忙しくなるのか…瞬く更新が滞っていました。
日頃の業務以外にも、JICA等の主催する「中小企業の海外展開支援事業に関する説明会」とか、日弁連のシンポジウム「子供の安心・安全から面会交流を考える」とか、色々と勉強になり、情報発信もしてみたいイベントにも参加したのですが…。いや忙しいですね。各種委員会に入っている関係で、以前から取り組んでいる中小企業シンポジウムはもちろん、さまざまなイベントの実施や本の執筆に関わることになってきました。さすがに、中小企業シンポジウムに中心的にかかわることも、今年までかもしれませんね。
さて。
4月27日には、NPO法人Winkの「よういくの日」のイベントに参加してきました。
NPO法人Winkは、離婚家庭の問題について昔から様々な取り組みを行い、いまはそれを超えた「家庭のひずみ」全般について取り組みを行っている団体で、札幌家庭裁判所に勤務していたころ、その存在を知りました。
当時、面会交流について積極的な高裁判決が出たこともあり、家庭裁判所においても面会交流の申し立ては数が多い事件でした。
しかしながら、多くのケースでは、どちらの親も①「子どものため」を理由に「認めるべき」「認めないべき」という主張を展開するので、どちらを、どの程度活かすべきかという点が難しいことと、②実際に認容の審判を出しても、片親が非協力的な場合に、これを有効に実施する方法がなかなかなかったことから、非常に悩ましい事件でもありました。
そんな際に、インターネットの検索で見かけ、「少しでも当事者の感情がわかれば」と思い購入して目を通したのが、Winkが中心となって作成した「離婚家庭の面接交渉実態調査」という本でした。
もちろん、ここに掲げられたアンケートが世間の声をどれだけ反映しているかは、明らかではないところが残りますので、読もうとした目的は、アンケートによってでてきた「数字」ではなく、自由記載欄に書かれたと思われる具体的な回答内容のほうでした。
もっとも、読めば読むほど、「認めてほしい」「認めてほしくない」どちらの気持ちにも「なるほど」と思うところはあって、さらに迷いを深めてしまったのですが・・・・。
今回のWinkのイベントでは、離婚後親が再婚したケースにおける、親の方々と、お子さんの方々をお招きして、「どうしてほしかったか」「どういうところに気を使ったか」「どういうところに気を使ってほしかったか」など、いろいろな話を伺うことができました。
…やっぱり、離婚は、あまりすすめられませんね。
裁判官を務めていると、「自分が出す判決によって、どちらの当事者も幸せになれないのではないか」と思いながら判断を出す時が、一番やり切れません。
労働事件で争っている当事者、離婚事件で争っている当事者…裁判所で見ていると、「本当にこうしたことを望んでいたわけではないのに、引き返せなくなってしまっているだけではないか」と感じたことは多々ありました。
実際、上記の日弁連のシンポジウムでも、大学の医学部の小児科の先生が、家庭の不和や暴力は、子供にとって(胎教にとっても)よい影響を及ぼさないと話されていたように記憶してします。
かといって、一方が「我慢をすればよい」という話ではないですし、裁判をしないと事態が変わらないこともあるので、とにかく「争いを避ければいい」ということも、間違っているとは思うのですが…。
同様に、家庭裁判所に勤めていた際に購入し、読んだ本として棚村一代先生の
「離婚と子ども」があります。
この本では、アメリカで行われている離婚や面会交流の際のカウンセリング活動が紹介されています。
アメリカと日本では、そもそも結婚、離婚についての考え方についても違いがあるでしょうし、そもそも離婚、再婚が多くなること自体、決して良いことではないと思うので、全く同じ制度構築ができるとは思えません。
他方で、夫婦間でも、あるいは子供と親の間でも、コミュニケーションをとることがもっと要請されるようになってきているのに、日本にはなかなかそうした機関が育っていないことは、少し悲しく思います。
Winkのような組織や、こうしたことに携わる人が、少しずつでも増え、その活動を地道にでも続けていってくれたらと思います。