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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

知財経営 その活用(平成25年度中小企業シンポジウム)

知的財産・ベンチャー
9月13日、私が企画に関わってきた今年の中小企業シンポジウム「知財経営 その活用」 が、神奈川中小企業センタービルにて行われました。 今回の企画は、①知的財産に経験をお持ちの地元の弁護士である「海老名・綾瀬法律事務所」の中道徹先生に、ライセンス契約についてご講演をいただくとともに、②同じく地元の弁理士である「神原特許事務所」の神原貞昭先生知的財産権の申請手続きや留意点を、そして最後にレーザーテック株式会社にお勤めの弁理士である小川潔先生に、具体的に社内で行ってきた知的財産活用への取り組みをお話しいただきました。 まず、中道先生は、生産性の高い企業しか生き残れない時代になっていることや、安倍政権の第3の矢においても「イノベーションの促進」や「課題先進国としての需要創造」などが謳われていることいることをあげて、中小企業にとっても知的財産権が重要になりつつある現状をお話しいただいた上で、ライセンス契約を結ぶことの重要性や、具体的な条項を例に契約書を内容・文言きちんと検討することの大切さについて解説していただきました。 また、神原先生は、なぜ知的財産権の取得が必要かといったところから、取得すべき知的財産権をどのように決定したらよいか(場合によっては特許権より意匠権等の方が向く場合もある)、外国出願も考える時にはあらかじめそれを念頭に置いて国内出願を行うこと、信頼できる弁理士や弁護士を探すコツといったこと、そのほか出願の際の必要な資料や費用、手続き、海外出願まで、知的財産の取得にまつわる様々な事項をお話しいただきました。 そして、最後に、レーザーテック株式会社のインハウス弁理士である小川潔先生からは、実際に経営・社内運営の中に「知的財産権」を取り入れたを実例についてお話を伺うことができました。 レーザーテック株式会社は、「研究開発型ファブライト企業」であり、自社業務は開発・試作に特化し、実際に製品を量産する工程は協力会社に委託するという業態の会社です。半導体の検査装置や、レーザー顕微鏡などが特徴的な製品であり、社長自身も発明をされる方とのことでした。 印象深かったのは、社長の依頼から小川先生が社内で知的財産管理のためのシステムを作り上げるところで、①インフラとして社内用の知的財産管理データーベースを作成し、自社特許はもちろん、重要と思われる他社特許についても社員が見ることができるようにしたこと、そして、②社内の知的財産権の発掘については、「開発会議・発掘会議」で発明を見つけ出し、先行技術調査等を行った後、特許として公開するか、それとも特許出願しないノウハウ(電子公証を利用)として残すかを検討するというシステムを構築していること、さらに、③社員に対してはインセンティブとなる報酬制度を設けていること、このような取り組みによる成果として、特許権等の知的財産権保有につながるのみならず、株式公開する際にも知的財産権が威力を発揮し、さらには社員の知的財産への意識自体の改革につながったことなどが紹介されました。 レーザーテック株式会社の取組は、先行技術調査まで含むもので、あたかもパテントに掲載された論文「小説『男たちの特許戦争』より製法特許と製材特許を巡る特許攻防25年史」を彷彿とさせるような、専門性の高いものだと思います。 でも、そうしたレベルの特許戦略ではなくても、少なくとも国内では自社製品のまねされないようにする、例えば、株式会社井之商が日本国内に「スカイライトチューブ」を導入するに当たって、同じ日本国内で競合製品が出ないよう、「日本家屋に合わせた特徴的な個所」を特許で保護したように、もっと身近な形で競合相手を生じないようにすることができるのだろうと思います。(パテント掲載論文「中小企業における知財との出会いから活用への事例と弁理士の果たす役割」参照)。 TPPにより国際的な流通がますますその重要性を大きくし、知財自体がTPPにおける重要な争点となりつつある近時、こうした知的財産にも、少しでも多くの企業に関心を持ってもらい、「守れるべきものを守れる」ことにつながっていけばと願っています。