サプライ・チェーンにおけるCSR
本年度の、日本CSR普及協会の労働・環境チームのセミナーが近づいてきました。
このセミナーでは、新人の私は、もっぱら発表者の話を伺って勉強させて頂く立場ですが、やはり東京で企業法務に携わる先生方のお話は、興味深いお話が多く、また、裁判所の経験などでは知らなかった話も多いため、時間が許す範囲で参加してお話を伺っています。
本年度のテーマは、「CSRの観点からみた調達とデューディリジェンス」。
調達におけるCSRというのは、CSRの原点でもあるとのことでしたが、たしかに、経済産業省のサイトの「CSR政策の方向性」によると、過去にCSR研究会において取り上げられたこともありました。
いい機会でしたので、以前購入しておいた物流に関する本を2冊程度と、参考資料として研究会においてあげられたサプライチェーンCSR推進ガイドブックや、サプライチェーンにおけるCSR法務戦略(上)(中)(下)(NBLNo1001~1003。CSR普及協会所属の先生方の論稿です。)を読み切りました。こうして少しずつでも読んでいかないと、どんどん本がたまっていってしまうので。
NBLの論文は、特に勉強になりました。木材や紛争鉱物といった広い範囲において、諸外国で規制が広まっている事や、日本の大手企業がいち早くそれらに対策を取っている事例が出ていて、とても面白い内容です。
そういえば、相談を受けている会社の方とお話している際に、「うちの雇用の方法を評価してくれる取引先もありますので…」というお話を伺った事がありましたが、なるほど、こうした労働CSRの一環だったのだな、ということが、実例としてよく理解できました。
やはり、日本も、また世界の国々でも景気が良くなく、人々の不満が高まっている今日においては、他人に迷惑をかけないように努力していくことが、企業が長く存続するためには必要なのだなと、改めて考えさせられました。
最近、みずほ銀行、米の産地偽装、ノバルティス、JR北海道など、企業不祥事が大きく取り上げられていることも、そうした世間の動きを映しているのだろうと思います。
こうした不祥事がこれまで全くなかった、というよりも、時代の変化によりこうした不祥事が以前より大きな問題として取り上げられることになったということでしょう。
そして、上に書いたCSRにおける取組における各企業の積極的な姿勢にもかかわらず、他方でこうした企業不祥事もなくなっていかないことを比べて考えてみると、改めて、たくさんの人が一緒に生活している組織をまとめて、はみ出さないようにしていくコンプライアンスというのは、難しいものだなと痛感させられます。
裁判で個人、会社を問わず「誰か」に責任があるという判断をする場合‐法律によって要件などが大きく異なるので、一概には言えませんが、根底にあるのは、「ではどうすればよかったのか」ということだろうと思っています。
「その人」「その企業」は、「危険を予想」できたのか、そして「予想でき」「こうしていれば事故が発生しなかった・防げた」と言える場合には、責任ありという結論に結び付くことも有り得ます。
上記の各不祥事も、(会社が把握していたような場合や、紺本的な意識に問題がある場合もあるかもしれませんが、そうしたことも含めて)どうしていればそうした不祥事が生じることを会社が把握でき、防ぐことができたのか。
裁判になるか否かにかかわらず、おざなりにされることなく一つずつ「どうすればとかったのか」が明らかになっていってくれればよいなと思います。