【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

ソフトウェア開発訴訟

 民事訴訟における事実認定―契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)-

 法曹会から、上記の本が出ました。 平成19年11月10日に法曹会から出版された「民事訴訟における事実認定」の続編的な立場にある書籍のようですが、位置づけは大きく異なります。

 平成19年の「民事訴訟における事実認定」は、事実認定の全体像に加え、どの弁護士も裁判官も基本として備えるべき「保証」「売買」「消費貸借」について書かれていました。 ですので、法律家であれば、誰が買っても、有用な文献といってよかったと思います(もちろん、いまさら基礎を修める必要はないという先生もいらっしゃると思いますが。)。

 それに比べると、今回の『契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)』は、「建築紛争」「ソフトウェア開発訴訟」「プラント建設契約」という、裁判紛争の中でも、かなり特殊な分野に限って触れられています。 これらの紛争のうち、「ソフトウェア開発訴訟」は、東京こそ件数が多く、経験を積む機会もあるものの、地方にいると、あまり経験を積めません。その割に、地方でも訴訟になることはありますし、ひとたび訴訟になると金額が大きくなる傾向があるため、裁判所での審理運営という点では悩ましいところのある事件でした。

 こうした事件については、専門委員や専門家調停委員の活用により解決されることも多いため、いきおい裁判例として公刊されている例が多いとは言えず、また、公刊されている裁判例も個々の事案が大きく異なり、裁判官の視点から書かれた文献はあまりないなど、訴訟運営上、関係者の知見を共通することが難しい類型だったと感じています。 従来、この点について裁判官が書いた文献と言えば、すでに絶版になっていますが、新日本法規の「最新民事訴訟運営の実務」と、 判例タイムズ1349号に掲載された「ソフトウェア開発訴訟の手引」、同1317号に掲載された「システム開発契約の裁判実務から見た問題点」くらいではなかったかと思います。もちろん、僕の不勉強で集め落としている文献もあるかもしれませんが…。

  ソフトウェア開発の契約・合意のやり方自体、会社によってまちまちなところもあるので、この本が出たからと言って、全ての事件に適用ができるかというと、限界があるだろうとは思います。 また、「プラント建設契約」の紛争というのは、さすがに遭遇したことがありません。 これからも、どうでしょう?。あるいあkどうか…?(^^;)。 また、相談等の中で、眼を通していきたいと考えています。

※ 平成27年8月2日 ブログの移行の際、改行が反映されていませんでしたので、改行を入れました。その後は、ソフトウェア開発かどうかはともかく、インターネットについての本は爆発的に増えた気がします。最近、ソフトウェア開発についても、弁護士の立場でではありますが、レクシスネクシスから「システム開発紛争ハンドブック―発注から運用までの実務対応」という書籍が出て、【目星】はつけていますが、いかんせんこれ以上未読文献を増やす気になれず、買い控えています。また、この分野は内容の陳腐化がはやかったり、共通認識が形成されていないこともありうるため、おすすめ本かどうかは、買って読んでみないとわからないのかな…と思っていますね…。