【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

年初の思い出:先達の背中

明けましておめでとうございます。

今年の正月にあった出来事ではなく、以前の年初めにあった出来事の記憶を、少し書いておこうかと思います。

私が新人だったころ、当時の高等裁判所の長官が、仕事始めに講話をされ,こんな事を言われていました。

-自分は、初めの任地の仕事を終えた時、25歳だった。そのとき、ああ、あと30年しか裁判に携わることができないのかと思って、これからは一期一会のつもりで、一つ一つ事件に全力で打ち込もうと思った- 

もしかしたら、違っているところもあるかもしれませんね。メモなどは取っておらず、あくまで私の記憶ですので。

 

こうしたことを言われたその場の裁判官・職員は、心の中でちょっと引いたかもしれません。

私も、心の「半分」は引いていました。

やっぱり、裁判官になって初めて担当した刑事事件は、重いものも多く、精一杯の状態で、正直に言えば、あと30年「しか」という考えはなかなか浮かばない状態でしたから。

 

でも、心の「残り半分」は、うれしかったですね。

やっぱり、裁判所という場所であれば、自分が「敵わないかもしれない」「すごい」と思えるような先達がいる,そんな気持ちが満たされましたから。

 

こうした判決への姿勢は、他の裁判官も大なり小なり持っていたと思います。

これは別の年の3月頃の記憶になりますが、

高等裁判所に異動されることが予定されていた民事部の部長が、突然深夜にふらっと刑事部の私のところに来て、「中野君はまだ裁判ができるんだね…」と言っていかれたことがありました。

その場に右陪席裁判官もいらっしゃったので、今の部長は高等裁判所に栄転されるわけだし、これからも裁判をする立場なのでは?、と聞いてみたところ、

「それでも、自分で悩んで判決を書くのと、他人の判決を評価するのでは全然違うから…」と教えてもらいました。

 

さて、裁判所では、他にもいろいろな敬服すべき方に出会えましたが、新年を迎えるとやはりあの長官の講話が思い出されますね。

-もっとがんばらないと、笑われちゃう気がしますね。-

 

今年も,よろしくお願いします。