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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

プロフェッショナルの情報術(喜多あおい著:祥伝社)

1 弁護士は、裁判官より情報収集が必要?

 ここ数日の通勤時間で、この本を読みました。

「プロフェッショナルの情報術」喜多あおい著、祥伝社

 弁護士になった際、「情報収集の力も身につけないとなあ」と思い買った本です。

 いざ弁護士になってみると、もともと弁護士や当事者にいろいろと質問するタイプだったせいか、本業である裁判では、証拠の収集能力に不足を覚えることはありませんでした。しかし、それ以外の知識…裁判官時代にあまり触れていなかったマイナンバー法個人情報保護法、子どもや高齢者についての福祉系の知識、戸籍の知識など…については結構調べ物を余儀なくされます。

 そんなこともあり、久しぶりに手を取ってみた本です(いえ、法律文献に戻る気力がわいてこないのが最大の理由なのですが…。講義しなければならないマイナンバーの資料だけは集めています…。) 

2 情報収集の仕方

 情報収取の仕方…その基本ソースなどについては、それほど目新しいものがあるわけではありません。

 この本では、書籍、新聞、雑誌、インターネット、対人取材などが挙げられていますが、我々弁護士の場合、「裁判」等の事件であれば、「書証(書面による証拠)」が第一順位に来ることや、対人取材が非常に比重が高くなることを除けば、情報を仕入れるソースは同じです。裁判以外の、例えば法制度等であれば、本格的に取り組むときには、この本に書かれているような順序で調べるでしょう。本から入るのは、全体像を身につけるために効率が良いためだと個人的には思っています。

 読む本は、法律学の分野に限りません。個別の事件を正確に理解するためには、法律以外の知識も必要になりますから。裁判官だったころも、ボイラー技士の事件があればボイラー技士の本を読み、議員秘書の事件があれば議員秘書の本を読んでいましたね。先日書いた経済学の本なども、そうした「事件理解に必要な背景」としての知識にあたるのかもしれませんね。

 書籍が重要であることは、そうしてもちろん履践していたことなのですが、この本で紹介されている【雑誌】の活用法は、少しワクワクさせられました。

 我々弁護士の場合、どうしても法律系の雑誌が中心で、それ以外の雑誌に手が伸びにくいところがありますが、この本に書かれているような、「月刊むし」「月刊総務」などという雑誌の存在を知ると、「こういう雑誌も調べると、もっと説得力が増すかな?」とワクワクするところはありますね(いえ、「月刊むし」の知識が役立つ裁判は、さすがにないのではないかとは思いますが…)。

 …基本的には、事件の依頼に来たお客さんが、事件が関係する業界についてある程度知識を持っていることが多いので、【餅は餅屋に】ということで、お客さんから教えてもらったり、資料をもらったりすることが実際には多いのですが。 

3 整理することと棄てること

 一番身につまされたのは、情報を整理することと棄てることです。

 とにかく、何か関心を持つと、大量の文献をコピーしたり、プリントアウトしてしまうものですから…。

 書籍だと今回のこの本などのようにいつか手にとって読むのですが、論文のコピーだと、断片化してしまって、手が出ないことがあります。

 すこし、事務所においてある大量の文献を整理しようと思いました…。 

4 本を「読」まずに「見」る?!

 あと、知っていたことながら、改めて考えさせられたのは、本やレポートを「読」まずに「見」るということでしょうか。

 この本の著者が「テレビ番組リサーチャー」という映像に関わる仕事をされていたからかもしれませんが、ディレクターなどはレポートを【読まずに見る】と書いてあります。

 この本の著者も、それに近いやり方で、「1日10冊」の本を読んだことがあると言っていらっしゃいます。

 いえ、速読法として、そういった方法があることは知っているんですよね…。

 また、役人時代に、「ポンチ絵」などを先輩が作っていたのも見ていますし…。

 そして、やる気になれば、できるんじゃないかとも思ってはいるんですよね…。

 ただ、「折角2~3日の通勤時間でじっくりいろいろ考えたり、書き込んだりして楽しめる本を、そんな飛ばして読んだらもったいないじゃないか」とついついついつい思ってしまって…。

 例えて言うなら、映画のDVDを早送りで見ればそれは大量に見ることができるけれど、それで面白いのかな…、ということに近いでしょうか(^^;)。

 もちろん、プロである以上、「面白い」「面白くない」で決めてしまうのはダメなのですが、そうして「じっくり読む」ことが、色々と考える力に繋がることもあるんじゃないか、また、「文章での表現力」に繋がることもあるんじゃないかなあ…、と言い訳めいた事を考えてしまいます。 

 でも、たまっている文献を読み進めるために、少し飛ばし読みも取り入れるべきですね…。