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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

社会保険の実務相談【書評】

www.shakaihokenroumushi.jp

 以前のブログで,転籍・出向とマイナンバーとの関係を書いた際に,少し引用した本です。マイナンバーの関係で3分の1に目を通したため,「どうせなら」と少し前に通通読しました。

1 社会保険についての知識の身に付け方

 社会保険社会保障は,裁判等で直接その知識が必要になることは少ないのですが,「判決」などをもらった後どうなるかという点では,あった方が良いこともありますし,ときには直接裁判で争われることもあります。
 とはいえ,社会保障法は,①「横」という意味では複数の法律が重なり合っており,全貌の把握が難しい,②「縦」という意味では法律が細かな内容を規則・政令に委ねており,その点でも全貌の把握が難しい,③「深さ」という点では,改正が重ねられており,いつ生まれた方かによって適用される法律が異なる点が,さらに全貌の把握を難しくする,そして④具体的な年金額の計算については,実際に執務しないと身につかない,という,身につけることが難しい点があると感じています。
 もっとも,年金額の計算等は,社会保険労務士でも必ずしも要求されないこともあるでしょうし,ソフトウェアを使用する方もいると思います。また,弁護士等の隣接職種に正確な理解が必要とは思いませんし,それを目指すと肝心の法律分野がおろそかになってしまう恐れがあると感じています。
 そのため、社会保障社会保険は,「重要であるけれどもなかなか手が付けられない」という分野でした。以前のブログでも,自治体向けの本などを紹介したように,時々勉強するものの,それだけでは身につきにくいという所でしょうか。

2 この本の特徴

 この本の特徴は,「Q&A」が中心となっているためとりつきやすく読みやすい,ところが第1です。目次に「Q」の要約を一文で書き表し,さらに,内容部分では,それをノベライズした具体的な事例問題を挙げてあるため,理解しやすく,また目次から関心のある部分を探し出して目を通すことも容易です。
 難があるとすれば,①索引がないことと,②通達レベルのものについては,その年月日等が明らかにされておらず,根拠である通達等を探すことが難しい点の二つでしょうか。ただ,①については上に書いた目次の工夫である程度解消していますし,こういった要望まで出してしまうと,執筆の労力も大変になってしまいます。
 改正が多いことから「単年度」版の本とされていることや,価格,持ち運びのしやすさからいっても,このくらいがちょうど良いのだろうと思っています。

3 知識としての社会保障の活用

 とはいえ,マイナンバー法はまだこの本には触れられていないので,来年以降の版ではそうしたことも触れられるようになるのかもしれません。
 また,「社会保障・税一体改革」の関係で,複数の法律が改正されていますので,平成27年度版に書かれた内容も,どんどん変わっていくのでしょう。
 ですので,正確な知識が必要とは思いません。業務の中で関係した問題があれば「念のために社会保険労務士の意見も聞いてはどうか」と勧めることもあるでしょう。
 とはいえ,どこかで一度目を通さないと,なかなか知識が向上しませんし,「問題点があるのではないか」ということに気付けるだけでも意味はありますので,たまにはこうした本を読んでみても良いのではないかと思います。