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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

マイナンバーは危険なのか(その3:詐欺・消費者被害を少なくするために)

マイナンバー

1 はじめに

 マイナンバーに関して、詐欺等の電話がかかることが続いているようです。

 以前、タウンニュースの取材をいただいた時にもお答えしたことですが、個人的にはこれが一番懸念していたことなのですよね…。

  なぜこういったことが起こるかと言うと、①マイナンバー制度(及びそれに伴く個人番号カードの制度)自体が、まだ実施されていないところ、未確定のところがあること、②そもそも制度が複雑で、なかなかわかりづらいこと、によって、【一般の方々が混乱してしまっている】ことが背景にあります。

 こうしたことが、①犯罪者にとっては付け込む余地になりますし、②こうした方々から相談を受ける立場のものにとっても、なかなか明確な回答がし辛いことに繋がります。

  ②のわかりにくさ、については、内閣官房がホームページで「マイナンバーの提供を求められる主なケース」が掲載されたので、これを見ると、少しわかりやすいかもしれません。ただ、これに挙げられたものがすべてではないことも、悩ましいところです。 

 しかし、付け込まれているのは、「分かり辛い」こともさることながら、そこから生じる「混乱」なのですから、【本人】も【周りの相談者や支援者】も、少しでも本人の「混乱」を収めることで被害の発生をある程度減らすことができると思います。

 そうした意味では、「制度がどうなっているか」を事細かく正確に知らなくても、【間違っていないこと】を把握し、そこから考えて、仮に不当な電話があったときに【おかしい】と思える知識を身に着けて、冷静な対応をするよう心がけるが重要だろうと思います。

 2 どんな混乱に付け込まれやすいか

 これまでに役所に報告された主な手口は、国民生活センター警察庁消費者庁などのサイトで掲載されています。

 最近の特徴としては、お金を要求するだけではなく、まず資産状況等を聞きだすケースもあることや、メールでの事例が増えつつあることなどがあげられるでしょうか。

 ともあれ、犯人の最終目的は「お金」なのですから、「マイナンバーに関わること(漏えい等)で、このまま放置すると、あなたに【強い不利益】が及ぶ可能性がある。それを防ぐためには費用がかかる」等として、【不利益】を告げ、それを避けるためにはお金が必要、と告げることが最も考えられることになります。

 告げられる【強い不利益】の内容としては、

A 犯罪

B 損害賠償の請求

C プライバシー情報の流出

D 「なりすまし」

などが考えられるでしょうか。

 だとすれば、そうした不利益が生じる可能性が【ない】あるいは【低い】ことを理解していれば、少なくとも「何かおかしい」と感じ、混乱を少しでも収めて対応できるのではないかと思います。

 CとDについては、基本的に危険はないことをこれまで触れてきました。

yokohamabalance.hatenablog.com

yokohamabalance.hatenablog.com

3 マイナンバーに関して、【消費者】が犯罪に問われることがあるか

 結論から言えば、まずないです。

 マイナンバー法が定める犯罪は、以下の通りです。

  主体 行為 法定刑
1 情報連携や情報提供ネットワークシステムの運営に従事する者が従事していた者 情報連携や情報提供ネットワークシステムの業務に関して知りえた秘密を洩らし、または盗用 3年以下の懲役、または150万円以下の罰金(併科刑あり)
2 国、地方公共団体地方公共団体情報システム機関などの役職員 職権を乱用して、もっぱら職務以外の目的で個人の秘密に属する特定個人情報が記録された文書などを収集 2年以下の懲役、または100万円以下の罰金
3 特定個人情報保護委員会の委員長、委員、事務局職員 職務上知ることのできた秘密を洩らし、または盗用 2年以下の懲役、または100万円以下の罰金
4 個人番号利用事務、取扱事務などに従事する者や従事していた者 正当な理由なく、業務に関して取り扱う個人の秘密が記録された特定個人情報ファイル等を提供 4年以下の懲役または200万円以下の罰金
5 同上 業務に関して知りえた個人番号を不正な利益を図る目的で提供または盗用 3年以下の懲役、または150万円以下の罰金(併科刑あり)
6 「何人も」 人を欺き、人に暴行を加え、人を脅迫する行為、または財物の奪取、施設への侵入、不正アクセス行為により個人番号を取得 3年以下の懲役、または150万円以下の罰金
7 「何人も」 偽りその他不正の手段により個人番号カードまたは通知カードの交付を受けた 6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金
8 特定個人情報の取扱いに関して法令違反のあったとして特定個人情報保護委員会から命令を受けた者 特定個人情報保護委員会の命令に従わなかった 2年以下の懲役、または50万円以下の罰金
9 特定個人情報保護委員会から報告や資料提出の求め、質問、立ち入り検査を受けた者 報告・資料提供をしない 虚偽報告、虚偽の資料の提出 職員の質問に答えない、虚偽の答弁をする 検査を拒否したり、妨げたり、忌避する 1年以下の懲役、または50万円以下の罰金

 このうち、番号1から3は、それらの仕事についている公務員に成立するものですので、公務員でない消費者に成立することはありません。

 番号4と5は、会社の仕事などでマイナンバーを扱う業務についている人に成立するものなので、そうした立場にない通常の消費者に成立することはありません。

 番号8と9は、特定個人情報保護委員会から、命令を受けたり、調査等を求められたときに従わなかった場合の話なので、通常の消費者には関係ありません。

 残された、番号6と7を見てみましょう。

「人を欺き、人に暴行を加え、人を脅迫する行為、または財物の奪取施設への侵入不正アクセス行為により個人番号を取得」

偽りその他不正の手段により個人番号カードまたは通知カードの交付を受けた」

 これ、マイナンバー法があろうがなかろうが、ほとんど犯罪です。

 通常の消費者であれば、「そんなことはしていない」ことがわかるのではないかと思います。

 このように、まず通常の消費者に犯罪が成立すること自体が考え難いことになります。もちろん、誤って情報を漏らしてしまったなどの【過失】の場合は犯罪にはなりません。それでも不安なら、警察やマイナンバーコールセンターに相談をしてはどうかと思います。

4 マイナンバーに関し、消費者が損害賠償を問われることはあるか

 

 これもまずないと思います。

 情報漏えいなどをしたことで損害賠償を負うのは、原則としては「情報漏えいしない義務」=「管理義務」を負っている人になります。

 会社の仕事でそう言う立場に立っている人であればともかく、普通の消費者がこうした義務を負うことはありません。

 それでも心配な時は、マイナンバーコールセンターなどに問い合わせをされてはどうかと思います。

5 他の方法

 

 他には、マイナンバーを取り扱う公務員や、業者だと名乗って、会話ややり取りをするうちに信頼させて、情報やお金を引き出そうとするケースがあるかもしれません。

 こうした場合はなかなか気が付きにくいですが、資産情報や、費用の話になったらおかしいと思いましょう。

 そして、相手が名乗った役所や、マイナンバーコールセンター、国民消費者センターなどを、きちんと自分で電話番号を調べて電話しましょう。そこで聞けば、「そんな話はない」ことがわかるのではないかと思います。

6 最後に

 

 詐欺や消費者被害では、次々と新しい手口が考え出されてきます。

 すべての手口を事前に考え、予測することまではできません。

 世の中の仕組みの基本を押さえることで、「おかしい」と気が付くようになれることが、身を守る方法としては有効でしょう。

 多くの場合、相手は「今ここで話を決めないといけない」という印象を与えるでしょうが、そうしたことは世の中にあまりありません。すぐに、相談すべきところにきちんと相談しましょう。

 そして…。

 政府・警察におかれても、こうした事案の摘発・防止に力を注いでいただけるよう、是非お願いしたいと思っています。