【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

定年後再雇用と労働契約法20条(その4:平成28年5月13日東京地裁判決についての思いつき)

う~ん,なるほど。そういうことなのか…。
少し,頭が整理されてきた気がします。

先の,6月26日のブログの「2(1)」で,

yokohamabalance.hatenablog.com

1(4)で触れたように、「65歳定年」として同じ「期間の定めのない社員」となれば、60歳直前と、直後で就労条件を変えても、直ちに労働契約法20条違反にならないことを考え合わせると、期間の定めがある場合にだけ差が認められないのは、少し均衡を失する気もします。それは突き詰めれば、「【61歳から65歳の期間の定めのない社員】と比較したわけではない」という点に帰着してしまうのかもしれませんが…。

と書いたのですが,突き詰めるとどういう事なのか】が,分かってしまったような気がします。

 つまり,これは,【「定年後再雇用の(61歳の)有期雇用社員」と比較される(同一の)「期間の定めのない社員」は誰なのか】ということを巡る立場の違いに帰着するのかもしれません。

1 【考え方その1】:定年直前の正社員と比べる

 まず,一つの考え方としては,「61歳の期間の【定めのない社員】がその会社にいない以上,「同一」として比べられるのは,定年直前の期間の定めのない社員だ」という考え方があるでしょう。
 もっとも自然な考え方でもあり,平成28年5月13日の判決が取っている立場といってもいいと思います。

2 【考え方その2】:もし定年延長制度が取られていたら,その会社にいるであろう正社員と比べる

 もう一つ,考えられるのはこれなのでしょうね。
 つまり,
 ① 高年齢者の雇用の安定等に関する法律は60歳定年までしか定めておらず,当該会社の就業規則も60歳定年だったのだとすれば,労働者は(民事的効力として)60歳以降も当然に雇用が続くわけではない。
 ② ①を前提に,会社が就業規則を変更して65歳定年にすると仮定した場合,60歳以降の雇用条件を低くしても,そもそも労働者は60歳以降雇用される権利までは有していなかったことからすれば,就業規則の不利益変更には当たらない可能性がある。
 ③ そうすると,被告会社が65歳定年を採用していたとしても、その場合の期間の定めのない社員の雇用条件は,現在の期間の定めのある社員の雇用条件と変わらないと思われる。

 こう考えてしまうと,例え「定年直前の正社員」との間に差があったとしても,「採用時の定年以降の雇用については,それまでの労働条件が補償されるものではないから,差があっても合理的である」となる可能性があるのかもしれませんね…。

3 結局

 ちょっと困ってしまいました…。

 どちらの立場を取っても,【0か100か】になってしまい,「ある程度の差があっても良いのでは?」という個人的に良いと思う【落としどころ】に結びつきません…。
 でも,これ以上は,いま考えつくことはありませんね…。

 やっぱり,判断する立場を離れると,鈍ってしまうのかもしれません。
 どなたかが,【落ち着きの良い理屈】を考えて下さればよいのですが…。。。
 すみません。。。。

 とりあえず,今回はここまでに。。。

※ 7/20 「違和感を覚える問題」について、【法律的に構成】するとどうなるのか、少し考えを進めてみました。

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