この本を読み終わりました。
田口和幸他著「公益通報者保護法と企業法務」(民事法研究会 平成18年)
昔の本なので、民事法研究会のサイトにも載っていませんね。
この本は、新しく買う本としてお勧めする本ではありません。
公益通報者保護法が本格施行される前に書かれた本なので、法律施行後の事例・判例等は扱われていませんし、今、公益通報者保護法は改正に向けて、報告書へのパブリックコメントの募集などがされていますので、この本を買ってしまうと、ちょっともったいないです。
もともとは、弁護士になった時に購入した本です。
日弁連の情報問題対策委員会で、今年のイベントにおいて、「公益通報」と「公文書管理」を手伝わせていただくことにしたので、手元にあったこの本をとりあえず読んでみました。
裁判所にいた時、「公益通報者保護法」という法律ができていたことは知っていたものの、この法律を根拠とした裁判がほとんどなく、そうした裁判を担当することがなかったため、身に着ける必要を感じてはいませんでした。
しかしながら、弁護士になって、他の弁護士のホームページなどを見ていると、取扱業務として「公益通報窓口」というような記載をしている事務所があり、「企業からお金をもらうのに、公益通報の窓口をして、うまくできるものなのかな…?」と疑問を感じて、購入した本です。弁護士である以上、相談者から制度について聞かれることもあるかもしれないとも思っていたので…。
読んでみた感じでは、やはり公益通報制度の持つ「難しさ」が立ちはだかってくる気がしますね…。
もともと、企業の不祥事等は、「その企業にとってはなにがしかの必要性がある」からこそ行われることが多いのだろうと思います。
そのため、そうした不祥事を対外的に明らかにすることは、その企業の他の従業員等の生活を脅かす危険がありますので、不況等で身分が不安定な世の中になればなるほど、上司も同僚も「保身を優先したい」、という気持ちが働いてしまうように思われます。
そうすると、いかに法律があったとしても、組織の中で孤立してしまったり、他の組織からも敬遠されてしまう可能性は否定できないのですよね…。
「法律は人を変えることまではできない」
ところがありますので…。
相談に来られた方に、なかなか勧め難いところがある制度です。
他方で、こうした制度が「なくていい」とも言い難いことが、難しいところですね…。
消費者目線に立った場合にはもちろんですが、結局、こうした制度がうまく機能しないことが、ある意味「バイトテロ」と呼ばれるような匿名での書き込みに繋がっている側面もある気もしますので、企業側としても、本当はきちんとできればそれに越したことはないのだろうと思います。
公益通報関係では、もう一冊、東京弁護士会の公益通報者保護特別委員会編の「事業者の内部通報トラブル」(法律情報出版)も買ってはあるのですが、ちょっとそちらまで読む時間がありませんでした。
とりあえず、宇賀克也著「情報公開と公文書管理」(有斐閣)に移らないと…。「通勤読書」で読むには少し難しめの本(多分)ですが、「公文書管理」関係では、逐条解説以外に持っているのは、この本だけですので…。
正月は、結局、相談があった事件について建築系の書籍を3冊と複数の論稿を読んだほかは、目を通すことが出来たのはこの書籍ぐらいで終わってしまいました。
子どもの権利に関する委員会を辞めたことに伴い、事務所にあった関連書籍や資料を整理したり、持ち帰ったりしたことにも時間を取られてしまいましたね…。
もう少し、いろいろと読めると思っていたのですが…。
情けない限りです。
※ 公益通報については、昨年12月21日に日弁連で行われたシンポジウム「公益通報(内部告発)を社会に活かすために~公益通報者保護法改正に向けて~」も聞いてきたのですが、なかなか、「どうすればいいのか」が難しいですね…。
今年、自分の委員会関係のシンポジウムに関与する中で、もう少し勉強できたらとは思っているのですが…。