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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

「虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷についての法的考察」(平成28年度専門実務研究:予定ですが;)

 神奈川県弁護士会が毎年出している【専門実務研究】について、頒布を希望するかどうかを尋ねる問い合わせが、会員である我々弁護士に来ました。 

 専門実務研究は、神奈川県弁護士会に所属する弁護士が、研究会や委員会、個人等で研究・調査した論文などを投稿して、神奈川県弁護士会から年に1回発行されるものですが、会員である神奈川県の弁護士は、希望すれば貰うことができます。 

 私自身は毎年、1つか、場合によっては2つ書いて投稿しています。共著がほとんどどなのですが。

 

 今年、私が原稿を書いたのは,情報問題対策委員会の有志で担当した共著の「情報公開の差し止め―逆FOIAの実情―」ともう一つ,このブログのタイトルに書いた「虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷についての法的考察」になります。

 こちらは、1人で書いたものになりますね。

 「虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷」(Abusive Head Trauma:AHT)とは,まだ脳も、頭の骨も、首も強いわけではなく,身体に比べて頭が大きい赤ちゃんには、ゆさぶることでも脳に傷ができてしまったり、手荒く扱われた場合に頭に傷を負ってしまうことが成人よりも多いことから,「虐待の疑い」がある場合に通報等を行うために、こどもに関わるお医者さん達の間で形成されてきた呼び名です。

 代表的なものとしては,母子手帳にも書かれている「揺さぶられ症候群」(Shaken Baby Syndrome:SBS)がありますが,それ以外の頭部外傷も赤ちゃんの命に関わったり,一生続く障害の原因になってしまうことがあるようです。

 

 こうした乳幼児の頭部外傷については,神奈川県立こども医療センターの田上幸治医師から,平成28年の6月頃,「かながわこども虐待勉強会」にてお話を頂きました。

 児童相談所が介入する場合には、児童福祉法28条による措置などが問題になることもありますし、ニュースで報道されるように刑事事件となることもあり得ます。他方で、被害者の赤ちゃん自身は、自分に起きたことを言葉で訴えることが難しいため、そうした裁判での証拠・証明も、普通の事件と違うように思われました。田上医師の話を聞きながら、「自分がこうした場面に弁護士として関わるとしたらどうするだろう。」「こうした問題に取り組むお医者さんや,児童相談所の活動は,法律でどう裏付けられているのだろうか。」等と関心を持ち,調べ始めてみたものです(もう一つのブログのこの辺りと、この辺りに書いてありますね。取りかかったのはもう少し以前だったと思いますが…)。

 実は、「かながわこども虐待勉強会」は、関連する団体が持ち回りで発表することを想定されていましたので、弁護士会側からの発表にできないかと思って密かに用意していたものになります。

 時期的に間に合いませんでしたし、私自身がもう「子どもの権利に関する委員会」をやめることにしましたので、別の題材を考えてもらうほかないでしょうが…(こちらのブログで、「置き土産になってしまうか」といっていましたが、「置き土産」になってしまいました。)。

 

 このテーマについて調べ始めたころは,まだ,児童相談所に配属する弁護士を常勤・非常勤化するという話は出ておらず,いずれ自分にも児童相談所の嘱託弁護士になる機会が頂けるのではないかと思っていましたね…。だからこそ,取り組めたところもあるのでしょうね。

 もっとも,なかなか考えがまとまらず,最後は事務所に泊まり込みをしたりして、なんとか第1稿を仕上げることが出来ました。ちょっと情けないですかね…。

 

 お陰様で,私が三年間,児童虐待に関わる部会で活動してきたことについて,ささやかとはいえ,一つ形になるものを残しておくことが出来たことは,うれしく思います。

 …まあ、昨年の合同福祉勉強会で作成し発表した,児童相談所の措置を巡る行政法上の問題(一時保護と施設入所を中心に、行政訴訟対応と予防法務のために)」のほうが,時間も費用もかかりましたし,多くの弁護士や児童相談所の方が関心をお持ちになるかもしれませんが、あちらは公開したものではありませんので…。

 書き終わってみると、刑事弁護を専門にやられている方の考えや、被害者弁護士であったらどうかかわるか、また、警察や検察の立場の意見なども、伺うことができれば、また別の発見もあったかもしれないな…とも思いますね…。

 また、こちらのブログには、その後厚生労働省の研究発表を聞いて、「今後行政としてはこんなことに取り組めるといいのかな」、と思ったことを少し書いたりもしています。

 考えていってしまうと、きりがないのですけれどね…。

 

 私自身は,弁護士会の「子どもの福祉部会」の正副部会長等から(※)児童相談所の非常勤弁護士に選んで頂くことは出来ず,また,今後もまず見込みがないことが分かったことで,「子どもの権利に関する委員会」を退会させて頂くことにしましたので(参照),今後こうした「児童相談所の対応」の問題について今後関わることはありませんし、「子どもの権利に関する委員会」等からの問い合わせにも対応するつもりにもなれないでしょうね。

 それは,過去に嘱託弁護士として勤められたり、これから非常勤弁護士・嘱託弁護士として関わられる方々が担っていくべき課題だろうと思います。

  とはいえ,ひっそりとではあっても一つの形として残しておくことで,この問題に直面された方-児童相談所の職員,医師,児童相談所に関わる弁護士や,刑事弁護人,警察や検察の方々等-の何かの時に役立てば。

 そう思っています。

 

 最後に,

 この論文を仕上げるに当たっては,研修委員会の先生に何度も目を通して頂くことで,私自身が論文を見直すことが出来たことで,とても助かりました。

 こうした論文を「後進」や「関係する方々」に残していく「場」を設けて頂いた神奈川県弁護士会の研修委員会の先生方。どうも有り難うございました。

 来年も、また「知りたい」と思える問題・テーマに巡り合えるといいな、と思っています。

 

※ 今年度の【専門実務研究】の発行自体は、もう少しかかると思います。発行された専門実務研究はあちこちの関係機関にはお送りしていると伺っています。具体的にどこに送られているのかは、詳しくは知らないのですが…。

 この個所の記載について、誤解された方がいらっしゃいました。すみません。

児童相談所、あるいは自治体が私を選んでくれなかった」という話ではありません(謝られて、びっくりしてしまいました。難しいですね。)。神奈川県内の児童相談所は【公募】はしておりませんでしたので。

 (参照)としてリンクを張ったブログに書きました通り、弁護士会の「子どもの福祉部会」の正副部会長が、今回ほかの弁護士を非常勤・嘱託にすると決められたということ、また、今後の募集人数の推移の見込み、正副部会長の人事についての意思表明、私の年齢等からして、今後私を児童相談所の非常勤・嘱託に回すつもりはないようだと判断できた、ということです。

 ほとんどの自治体は、私が非常勤を希望していることすら知らなかったでしょうし、ある児童相談所では、私を非常勤にできないかと頑張っていただいた「気配」も感じました(あくまで「気配」なので、私の思い違い、自意識過剰ということもあり得るのでしょうね。)。

 正副部会長がどういったお考えで人事を決めたかについては、いろいろと風聞を耳にするところもありますが、確たる話ではない以上、基本的には、こうした場に書いたり、私の口から他の方にお話ししたりすることは、考えていませんね。

 いずれにせよ、人事を決めるのは正副部会長であると思っていますので、それに異を唱えるつもりはありません(逆に、その人事を受けてその後も委員会に所属し続けるかを決断するのは、個々の会員だと思っています。)。今回選ばれた先生方には、私としても期待している先生が多く含まれていらっしゃいますので、頑張っていただければと思っています。