【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

養護教諭のためのいじめ対策プログラム(平成29年度こころの健康セミナー)

1 養護教諭が「いじめ」の問題にできること?

 前の記事よりも、日付は遡ることになりますが…。
 8月26日の土曜日には,平成29年度の「こころの健康セミナー」(神奈川県精神保健福祉協会主催)に参加してきました。
 このセミナーは、以前勉強会で面識を得た児童精神科医の先生が、主に関わっておられたもので、その縁で一度参加して以降,割と毎年参加しているイベントです。

 今年は、養護教諭の先生が「いじめ」の問題に気付き・関わって行くにはどうしたらよいか、というお話でした。

 まず、ベテランの養護教諭の先生から、ストレスなどを過剰に抱えた子に気がついたり、そうした生徒が保健室を訪れるきっかけになるものとして、「”こころのSOSサイン”に気づくためのチェックシート」というものを作成した試みなどが紹介されました。こうしたチェックシートだけではなく、保健調査票や来室カードなどから、問題に気がつくことができることもある、ということでした。
 インターネットで見てみても、全国いろいろな学校で、こうした取組みを独自に行っているところも,ある気がします。

2 養護教諭のためのいじめ対策プログラム

 また、東京大学大学院教育学研究科の北川裕子先生からは、日本学校精神保健研究会において作成された養護教諭のためのいじめ対策プログラム」の紹介(こちらの記事などで紹介されていますね。)と、さらに現在行っている【保健室にタブレット端末を置いてもらって、そのタブレット端末での質問に生徒が答えることで、メンタルヘルスに関連する注意点をスクリーニングできるアプリケーションの開発】について、話していただけました。
 これらの取り組みは、以前私も別のブログで簡単に触れた、「オルヴェウスいじめ防止プログラム」を参考にしたものだということです。
 また、同じく前にお話を伺ったカナダのクッチャー先生も、日本で児童・生徒のメンタルヘルスへの意識を高めるためには養護教諭のかかわりが重要ではないか、と言っておられました(あ、これ同じ「日本学校精神保健研究会」のイベントでしたね。)。

3 個人的な感想(養護教諭のかかわり方はどうしたらいいのか)

 この取り組みは、養護教諭からの情報をきちんと学校が受け止めることができれば、受け止めてくれるのであればある程度の効果を発揮するかもしれないと思います。

 実は、別のブログをそれぞれ見ていただければわかるのですが、私自身は、オルヴェウスいじめ防止プログラムにも限界は感じたところがありますし、クッチャー先生のお話でも、養護教諭に過大な負担を負わせてしまう可能性が問題ではないかと思ったところはあります。

 オルヴェウスいじめ防止プログラムは社会学的な要素を含んでおり、本来的にはいじめへの教育指導の方法等を考えたというにとどまらず、「地域社会における自治としていじめにとりくむ仕組み」を開発したものではないかと感じています。
 いじめの問題は、「どうしたらよい」という「正解」が常にあるものではない(と私個人としては思っています)ので、それを学校の先生の責任だけにしてしまうと答えが出せないこともでてきてしまう-【だから地域社会の人もどうしたらいいかを一緒に考えよう】というのがオルヴェウス・プログラムの一番の骨ではないかな・・・と思っていました(まあ、そうした自治を作るためにもまず学校の先生がいじめ根絶に声を上げましょう、となっているのですが)。
 学校から求められる業務も多くPTA活動もなかなか担い手がいないと伝え聞くところですので(その背景には経済的に厳しく地域社会の人も学校支援に回せるリソースがないのではないかと思っていますが…)、「地域社会」の自治としてそういった取組みを行うことは難しいのではないかと考えていました。

 また、クッチャー先生のカナダでのメンタルヘルスの取組みを聞いた際も、養護教諭が「この子には、ストレスがかかっているのではないか」と判断できたとしても、【そのあとどうするのか】という「道筋」ができていないと、養護教諭が一人で抱え込んでしまうことにならないかが、心配でした。

 しかし、今回の「養護教諭のためのいじめ対策プログラム」であれば、養護教諭は「この子にはストレスが強いかな」と感じたときに、それを学校側に伝え学校として組織的に対応していくという形のようですので、「学校側がそれを受け入れてくれれば」養護教諭が一人で抱え込むことにはならないのかもしれません。
 そして、メンタルヘルス」の問題は、いじめと関係はあってもいじめそのものと必ずしも同じではないので、いじめの被害者や加害者が生じてしまう前に、学校側からの働きかけて生徒の心の負担を軽くすることができる場合もあるかもしれません。

 それが、「一定の効果はあるかも」と思うところですね。

 他方で、税収や予算等が増えているかは私は把握していませんので、学校にそれだけのリソースがあるかはなかなか悩ましいと思うのですが・・・。

4 こうした問題について

 私自身は以前このブログで書いたとおり、【経済的な問題】がこうした問題の背景にあると思っていますし、それについては、他国との関係もあることで容易に好転させる方策があるわけではないのではないか(少なくとも自分自身は思いついていない)と思っています。
 そうした状況の中では、①家庭でも共働きや仕事にまわす時間が増えて子供に回せる時間が減ってしまったり、子供がストレスに直面することが増えるかもしれないと思っていますし、②同時に地域社会全体で見ても、子供にまわせるリソースが少なくなっていく可能性はあると思っていますし、③税収も減る可能性がありますので、学校等の対応にも限りはくるのではないかと思っているところがあります。

 そのため、こうした問題に対応する「答え」が、何かあるのかはわかりません。
 でも、何もしないよりは、一つ一つは効果が限られるかもしれませんがこうした取り組みを増やしていくことからはじめてもよいのではないか、そんなことを思います。
 私自身は、教育に関しては素人なので、正しいのかはわかりませんが・・・。
 そんなことを、思いますね。