【天秤印】名古屋・横浜弁護士雑記

現在名古屋市に勤めている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

日本子ども虐待防止学会第23回学術集会ちば大会に参加してみて

http://zenninnet-sos.org/ こう土日が潰れると,前に参加したイベント等や,前に読んだ本についてブログに書くことが,どんどん難しくなっていくなあ…と思いつつ。

 12月2日は,日本子ども虐待防止学会の,第23回学術集会ちば大会に参加してきました。

1 1日目

 この大会への参加は初めてになるので,最初から参加したいと思い,また抄録を見て参加する分科会を決めたいと思い,8時30分に海浜幕張に着くようにしましたが,それでも,参加する分科会はなかなか選べませんでした。
 他のセミナーの演題と比べると,【子どもを含めた当事者】の意向を聞いてそれをソーシャルワークに活かす内容の演題が心持ち多めな気もします。

 

 大会特別講演と,国際招聘講演は,他の企画とかぶっていないのでよいのですが,午後をどうするか…。
 先日,第20回子ども虐待防止シンポジウム(書き残せていませんね,この時感じたことも…)に参加した際に関心が強まったのが「リスクアセスメント」についてであり,また,日本子ども虐待防止医学会に参加した際に関心が強まったのが「在宅支援」についてでしたので,その関係のことを知りたいと思っていました。
 迷いましたが,結局,「大会企画シンポジウム2」と「S-19家族応援会議は何故効果があるか」に参加してお話を伺ってきました。でも,こうしていろいろと自分で選んでお話を聞けるのはいいですね。より関心を持ちやすく,お話の内容をよく吸収できそうに思えます。

 国際招聘講演では,エビデンスに基づくソーシャルワークの話を伺うことができました。「エビデンスに基づく」といわれると,法律家としては「裁判での証拠」を考えてしまうのですが,そうではなく,いわば「債権・証券」の世界における「格付け」に近いもののようです。つまり,一種の格付け機関が,「その福祉サービスが本当に効果があったのか」を「統計的に調べて検証」し,それを参考に自治体やファンドがお金を出す,というシステムに思えます。
 こうしたエビデンスに基づくソーシャルワークがどれだけ根付くかも,補助金を出す自治体(ひいては住民)や,寄付金等を出す企業や慈善団体等が,どれだけそういったものを要求するかにもよるのかな,と思います(そうしたエビデンスを作成すること自体にコストが掛かりますので,自然,それは福祉サービス等どこかに転嫁されるか,税金がそれに回されることにもなりうるのかもしれません。もっとも詳しくはないので,わかりませんが)。金融について先進的なイギリスだからこそ,そういった判断手法が根付いたものかもしれませんね。
 「大会企画シンポジウム2」と「家族応援会議は何故効果があるか」では,在宅支援の手法として,子ども本人や,加害親をも参加して子どもの家庭復帰,在宅支援について話し合っていく実践例等(サインズオブセーフティ、家族応援会議等)が紹介されました。
 その手法には,とても感銘を受け,あるいは自分がこの手法を知っていたら,いくつかの事件でまた違ったアプローチを試みることができたかもしれない…そんなことを思いました。
 他方で,本当に効果をあげるためには,家族からの同意の取得や,支援者からの支援の取り付けなどに,膨大な時間がかかるケースもあるようなので,すべての事件にこうした方法を用いることができるかというと,そこまでは難しいかもしれませんし,事件によってはより簡易な形で活用することもあるのかもしれません。在宅支援が,こうした手法だけなのか,他にも手法があって使い分けているのかなどは,また今後勉強してみたい気もしますね。
 とはいえ,大会企画シンポジウム2において,講師の先生が言われた,ソーシャルワーカーは専門家の意見を聞こうとするが,だれよりも実践家こそが専門家であるから,実践家が自らの体験を発表し,理論として示していくべき】という趣旨の言葉や,ソーシャルワーカーは失敗したときだけ世間から注目されることを知っているのだから,親に対してもそれと同じ目を向けるだけではいけないのではないか,良い努力も一緒に聞くべきではないか】という趣旨の言葉は,感銘を受けるものでした(漠然と記憶しているものなので,正確ではないかもしれません。すみません。)。

 会場では,パネル展示もあり,かねて関心のあった「SOS子どもの村JAPAN」の資料なども頂けましたし,子どもの虹情報研修センター平成28年度研究報告書「児童相談所における弁護士の役割と位置づけに関する研究」も頂くことができました。

 また,出版社の出張販売がありましたので,ついつい6冊ほど書籍を購入しました…。関心があるから買うのだとは言え,永遠に追いつけない鬼ごっこに参加している感じになってきました…。
 さて,今日はこれから抄録集を読みながら,明日お話を聞く分科会を決めないといけませんね…。

2 2日目

 

  2日目は,「S-16 子どもを中心に家族を支援するとは?(省略)」「S-45 生後0日の虐待死亡を防ぐ(省略)」「S-15 養子縁組分野における官民連携の課題と展望」「実践からの学び3 児童虐待防止医療ネットワーク事業」の4つの話を,伺ってきました。

 「子どもを中心に家族を支援するとは?」は,今年読んだ「子ども虐待在宅ケースの家族支援」の著者の方が名前を連ねていたこともあり,お話を伺いに行ったものです。

 内容としては,主に平成28年の児童福祉法改正で本格化した,市町村と県の役割分担・協働についての内容で,通告の振り分け方,共通アセスメントシートを使用しているかどうか,県から市町村に移送する場合にどれだけの記録を送るか,などといったことについて,各県・市の取り組みが紹介されると共に,①市町村としては「介入」と「支援」を一緒に考えるのは難しくかといって分けてしまうと混乱する,②セーフティとリスクをどう活かすかが難しい,③DVや保護者の精神疾患が関わる事件については,保護者の支援と立場が異なることがあるなどの「悩み」があることも紹介されました。

 次に「生後0日の虐待死亡を防ぐ」は,本当に中身のある,有意義なお話でした。

 これまでは【妊娠期からの切れ目のないサービス】を行うにあたっては、①「妊娠の届け出を行うかどうか」②「出産直後から生後1か月までのサービスがない」ことの2つが「切れ目」になってしまっていたところ、子育て世代包括支援センターができることで②については切れ目が解消されつつあるとのことでした。

 ①については、【妊娠した後はじめて産婦人科等に行く場合には、いまだ母子健康手帳をもらっていないため割引が利用できない】ことと、【母子健康手帳自体「子どもを産む母親のためのもの」と見られ、産むかどうか迷ってしまう人はもらいに行こうと思わない】ことなどが【切れ目】を作ってしまっているとのことでした。そうした人からの相談に対応するために、全国妊娠SOSネットワークなどが、ラインなども使って妊娠相談を行っているとのことです。こうしたことは不勉強でしたね…。考えさせられました…。

 さらには、「こうのとりのゆりかご」などの取り組みを行っているドイツへ調査に行かれたことが紹介され、「匿名出産」という制度があることや、「秘密出産法」という法律があるということが、とても勉強になりました。

 その後の「養子縁組分野における官民連携の課題と展望」においては、これまでに養子縁組を長年にわたって行ってきた民間団体等のお話を伺うことができましたし、「児童虐待防止医療ネットワーク事業」においては、医療機関が連携を行うことで、他の医師の意見などを聞くことができることや、関係機関と顔の見える関係を構築できることなどについて、お話を伺うことができました。

3 参加してみて

 

 2日間にわたる濃密な研修漬けで、なかなかすべてを吸収することはできなかったように思います。

 また、興味のある分科会を選んで参加できる反面、他に聞きたい分科会があっても聞くことができないなど、「せっかくこれだけの発表があるのに、なんだかもったいない」気もしました。

 とはいえ、児童虐待分野について、どれだけの人が熱心に取り組んでいるか、先進的な取り組みとしてどんなことがなされているのかの一端を知れるだけでも、参加する価値があると思います。

 また、関心のある分野については、書籍等も購入できましたし…。いつ読むのでしょうね…(汗)。

 この分野において、自分がまだまだ勉強が足りないことがわかったことは、良かったと思っています。

 本当にありがとうございました。