【天秤印】名古屋・横浜弁護士雑記

現在名古屋市に勤めている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

居場所のちから―生きているだけですごいんだ【書評】

 以前ブログを書いたとき「読もう」と思った、この本を、少し前に読み終わりました。

 横浜から持ってきておいて、正解だったな、と思います。

 著者の西野博之さんは「NPO法人フリースペースたまりば」という活動を、平成3年頃から続け、平成15年には、川崎市が「子ども夢パーク」を設立する際に関わられ、さらにはその中において公的な「フリースペースえん」を発足させる、などの活動をされた人です。

 神奈川県弁護士会で、こどもの日の記念イベントにお呼びしたり、子ども夢パークを見学に行かせていただいたり、イベントにお話を聞きに行ったりしたことがあり、「ゼロから体当たりで模索し、何かを作り上げてきた人」の話に聞き入ったものでした。  

 この本では、1章でそうした「フリースペースを作り始めた際の体験」を、2章で様々な試行錯誤を取り扱った後に、3章で「居場所」という形態と経済的な問題について触れ、4章では子育てにおいて大切なことを、5章では、居場所を生み出すにあたっての心得を書いています。

 読んでいてわくわくするのは、1章と2章ですが、個人的には3章にもっとも関心がありますし、また、自分でも考えなければならないのは5章だと思っています。

  私自身は、福祉の場面においても経済的な問題は抜きにはできないと考えていますのでNPOで行うにせよ寄付が必要ですし、公的な運営であれば税金=払ってくださる納税者の方々が当然必要ですので。)、「経済の壁」との葛藤について書かれた第3章はとても興味深く読ませていただきました。この章の答えは、まだ終わりではないのかもしれない、これからも続いていく問題なのかもしれないと感じています。いまは「子ども夢パーク」「フリースペースえん」は、公的な費用で賄われていますが、そこに「どの程度の税金を投入する」ことに「市民の方々のコンセンサス」が得られるのか、また、「こうした活動が市民の方々に何をお返しできるのか」は、常に問いかけられる問題だろうと、個人的には思っていますので…(もっとも、昔ブログ内でも少し触れたのですが、その効果測定のために、あまりに多額の費用をかけてエビデンスを求めることも、本末転倒になりかねないと感じていますし、そうした「測定」が本当に正しいのか、大事なものを切り捨ててしまわないかという懸念も感じるので、「難しいな」と思っているのですが…。)。

 また、第5章「居場所を生み出すまなざし」は、1つ前のブログでも触れた、「大人になるという現実との直面」という問題ともかかわっているなと思います(昔別のブログでも、子どもとの面会場面で何を話すかについての自分の悩みという形で書いていますね…)。そうした現実との直面の「隙間」「猶予」を与えてあげることが、一つの「エンパワメントの方法」になるのではないか、というのが、この本の立場なのだろうと思っています。

 この本に書かれているようなことについて、私自身答えは出せていません。

 でも、読むと、考えてみたいことを「投げかけてもらえる」本だと思います。