【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

ベーシック発達心理学【書評】

更新が久しぶりになってしまったなあ…。

そう、言うしかない状態ですね。

この間、休みの日はさまざまな書籍や文献を読んだり、あちこちのイベントを聞きに行ったり、様々な施設に行ったりもしたのですが、日々新しいことに遭遇し、それを消化するだけでも手一杯(というか、未消化の山)で、とてもとてもブログにするだけの余裕もありませんでした。

 

いくらか前に読み終わったものですが、この本が面白かったので。

ベーシック発達心理学 - 東京大学出版会

  参加した研修で、講師の先生から、「子どもの状態から【見立て】を立てていくためには、子どもの発達について知らなければならない」と言われた言葉(不正確かもしれません。すみません。)が琴線に触れたので、購入してみた本です。

 その先生に、子どもの発達について学ぶにあたり適当な本を伺ってみたものの、「これ」という教示がなかったので、名古屋の三省堂で、保育や発達についての書棚を捜し歩き、いくつかの書籍を手によって読み比べて、選んでみた一冊です。

 この本を選んだ理由は、

 ①身体的な発達ではなく、むしろ、心理的な発達を中心に、今後勉強する土台となるような幅広い記載があること、

 ②より勉強したいな、と思った個所向けに、参考文献(さらに学ぶための文献)が充実していること、

 この2点です。

 

 「選んだ」だけあって、「当たり」でした。

 「ベーシック」と銘打たれているように、個々の「章」についての記述の量は少なめなのですが、少ない量の中に相当に濃い内容が詰め込まれており、読むのに結構時間がかかります。

 自分自身が知りたかったこととの関係では、第8章「認知の発達」、第9章「言語の発達」、第10章「社会性・道徳性の発達」が面白かったでしょうか。

 赤ちゃんの目をのぞき込んでみると、その頭の中で赤ちゃんが何を考えているのかなあ…ということは、気になります(いや、そういった考えが浮かぶのではなく、「かわいい」ということに夢中になってしまう人の方が多いのかもしれませんが…)。

 第8章は、赤ちゃんが生まれてから、目に見える内容とは違う「物」をどう認識していくかといったことから始まり、生物と無生物の違いをどう認識するか、他の人の視点からものを考えることはいつごろできるようになるかといった内容が触れられていて、興味深かったですし、第9章は、あかちゃんが言葉を覚えていく過程を、「だれ・なに」と「どうした」というような2語文で表現するようになるのはいつからか、さらに、その二つの関係を表現する「が」や「を」(格助詞)を使用するようになるのはいつからか、発語はほかの人とのコミュニケーションのためだけではなく、赤ちゃんが自分の考えを整理するためにも使われているのではないかなど、いわば「赤ちゃんにとっての世界の広がり方」が書かれていて、おもしろいですね。

 もちろん、こうした「発達のスピード」には個人差がある、ということも繰り返し触れられていて、「こうならないといけない」ということではないのでしょう。実際、言葉なんかは後から追いついてくる子も多いみたいだな…と感じます(保健師さんの活動のたまものでしょうけれど)。

  この本と、少し前に読んだ「乳幼児期の健康診査と保健指導に関する標準的な考え方」「標準的な乳幼児の健康診査と保健指導に関する手引き」を合わせて、子どもの年齢に応じた発達について、表のようなものを作ってみても、いろいろなことがもっと関連付けて分かるのかもしれません。ただ、他にも読めていない、積まれている本はたくさんあるので、難しいでしょうかね…。

 書中で挙げられている文献の中には、すでに読んでいる本―「0歳児が言葉を獲得するとき―行動学からのアプローチ」などもありましたし、「行動分析学入門」に書かれていたのと同じような内容などは、随所に見られましたね。

 それにしても…引用文献のかなりが外国の文献ですね…。この手の研究では、まだまだ外国の方が進んでいるのでしょうかね…。

 まだまだ、日本の文献すら十分に読めていないので、そこまでは到達できませんが…。

 そして、面識のある精神医学の先生から聞いたように、「心理」といいつつ、この分野には脳神経学的な知見もどんどんと取り入れられている気もします。

  ても、もしかしてこれ、お母さん向けの育児書の方が、「より分かりやすい表現」で「いろいろ」なことが書かれているかも…とも思ってしまいました(赤ちゃんの世界の広がり方を知りたいお母さんには、そちらの方が圧倒的におすすめでしょうね…)。

 そこまでは、探すときに考えませんでしたね…。ううん…。