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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

日本知的財産仲裁センターシンポジウム

今日は、日本弁護士会館で実施された日本知的財産仲裁センターの第15回シンポジウム「日本企業の海外進出とADRの活用」に出席して話を聞いてきました。 理由としては、私が所属する横浜弁護士会業務改革委員会商工部会のメインイベントである「中小企業シンポジウム」の来年度以降のテーマとして、中小企業の知的財産権の活用方法等を考えることが一つありうると考えていたことと、今年度の中小企業シンポジウムの準備を行う中で、海外取引先との契約を行うに当たっては、仲裁制度の理解が重要だと感じていたことから、勉強・調査しておく必要性を感じたものです。 その中でも、日本知的財産協会の専務理事の方が行ってくださった、産業界の期待についての基調講演が非常に興味深いものでした。 その講演では、中国や韓国が国策として国際知財競争力に力を入れていることと、また日本企業の今後の方向性として、日本で研究・技術開発をし、それを知的財産として海外から日本に利益を移すというビジョンがあることが説明され、そのためには国際的な紛争解決のルールが必要であるものの、裁判はどうしても国ごとに影響を受けてしまう可能性がある上、日本の裁判所で判決を得ても外国では執行できないため、「仲裁制度」に期待していること、またそうした点で、日本においても世界に認められる仲裁機関、仲裁人が育ってほしいこと等について話していただけました。 そのほか、①中国は、国内でも知的財産訴訟が活発であるため、地方の弁護士も知的財産訴訟について相当の力を持っていること、②日本の企業が外国の企業と締結する技術移転契約や、合弁契約等には、提供する技術の「特定」が十分ではないこともあること等について語っていただけました。 なるほど、と思いましたね。 裁判官だったころ、知的財産権についての裁判実務を学ぶため、東京地裁で何日か研修を受けました。 ちょうど知財高裁ができて間もないころで、「知財立国」という言葉が盛んに使われていたころだったと思います。 当時の私は、佐藤正明先生の作品「陽はまた昇る」などでベータを巡ってのアメリカでの裁判等のくだりを読んだりして、知的財産が他国との関係で重要になることまでは理解していたものの、これからの時代に日本が知的財産権を得ても、ルールの全く異なるアジア諸国との間では権利利益の保護に結びつかないのではないかと思っており、知財高裁の設立の意義についてもいささか懐疑的な思いを持っていたものです。 ただ、こうしてみると、知財高裁の設置は、①それによって知的財産権に詳しい裁判官を生み、知的財産についての判決の精度を上げるとともに、②それを取り巻く専門家の質を上げることが目的だったことがよくわかります。 当時もそのことは念頭にあったのですが、それでも、「外国との間の裁判に何らかの打開策が見いだせないと、やはり権利利益は保護できないのでは?」と思っていました。今になってみれば、そうはいっても他国との取引をあきらめることはできないでしょうし、何らかの手段を講じないといけないことは確かだったことがよくわかります。 また、技術の「特定」という話について、講師の先生からは、「弁護士の先生も、契約書の文章は作っても、技術の特定は会社のほうでやってくださいといっているのではないか」という発言をされてしまいました。たぶん、この問題は、特許における特許の範囲を確定するための「クレーム」の特定の問題と同じだと思うのですが、東京地裁の知的財産部で研修を受けた時も、特許の「クレーム」をどう解釈していいのかが、法律問題ではないだけに難しいと感じましたし、実際、東京の知的財産部や知財高裁では、特許庁等から出向された「調査官」が理学や工学・医学・薬学等の知識について調査報告し、それを参考に裁判官が判決や和解をしていました。 さすがに、こうしたことをすべて行うことは難しいでしょうが、 こうした中で、はたして横浜の弁護士に地元の中小企業に対してお力になれるところがあるのかどうか。 そうした点を探ると、このテーマをシンポジウムにしていくことができるような気もしました。