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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

後見人とマイナンバー(その3:マイナンバーが必要な主な事務)

  委員会の関係で、後見とマイナンバーの整理を担当することになりましたので、それに関連した内容を。 

1 後見人の業務の中で、マイナンバーを取り扱うものは?。

 この質問、聞かれることあるんですよね…。

 とはいえ、後見人は、被後見人の持つ権利のうち、一身専属権を除くすべての権利を代理行使できることが原則ですので、まあ、正確にいえば、「マイナンバー法に規定されているほとんどすべての事務を取り扱う可能性があります」となるんじゃないかな…という気がします。

 ですので、実際には役所や施設、会社等から請求された場合に、個々的に確認するしかないのではないか、という気がしますが、主なものを挙げるとしたら、以下のようなものかな?、と思います。

 見落としもあるかもしれませんし、独断での記載となってしまいますが…。

  なお、内閣官房のホームページの「マイナンバーの提供を求められる主なケース」を参照されてもよいと思います。

2 高齢の方の【成年】後見人

 マイナンバーは、「税」「社会保障」番号ですので、

「税」

社会保障」そして

マイナンバー法固有の場面」

「その他」

の4つに分けて書いて見てます。

(1)税金関係

ア 確定申告

 被後見人に収入があり確定申告を行わなければならない場合、後見人が確定申告を行う必要があります。そして、確定申告書には被後見人の個人番号を書かなければなりません。

 なお、老齢年金や退職年金など課税年金の受給者は、その年の公的年金等の収入金額の合計が400万円以下で、かつ、公的年金等以外の所得金額が20万円以下である場合は、確定申告は不要とされています(公的年金等に係る確定申告不要制度)。該当するか疑問があるときには、国税庁の一般相談に問い合わせるなどして確認するとよいと思います。

イ 相続税の申告

 被後見人の親族がお亡くなりになり、被後見人が財産を相続される場合があります。

 その場合、平成27年1月1日以降に相続が発生した場合であれば、遺産の額が基礎控除額である「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を上回れば、確定申告の必要かもしれません。

 そして、平成28年1月1日以降に相続税の申告を行う場合には、その申告書第1表には、被相続人、相続人の個人番号の記載が必要となります。

ウ 法定調書に個人番号を記載する必要がある場合

 「法定調書」とは、税務署が取得税に関わるお金の動きを知るために、法律で定められた特定の取引等について、お金を支払う側が、支払った額やお金を支払った相手の情報を、税務署に報告するためのものです。

 いわゆる源泉徴収票も、こうした法定調書の一つとなります。

 具体的には、以下の法定調書に個人番号の記載が必要とされています。

 https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jizenjyoho/hotei/index.htm

 このうち、後見業務である程度取り扱いそうなものを見ていくと…。 

① 法人から不動産等の使用料の収入がある場合

 年額15万円以上の家賃や地代等を法人や不動産業者が支払う場合には、法人・不動産業者は「不動産の使用料等の支払調書」を国税庁に提出しなければならず、そこには【支払先】である「大家・地主」の個人番号を書かなければなりません。

 そのため、こうした賃貸物件をもつ被後見人の場合には、「店子・借り手」である法人・不動産業者から個人番号の提供を求められると思われます。

② 不動産を売却した場合

 被後見人の所有不動産を、法人や不動産業者である個人に売却し、支払額が100万円を超える場合には、譲り受けた「法人・不動産業者」は「不動産等の譲受けの対価の支払調書」を作成しなければならず、そこには「支払先」の個人番号を書かなければなりません。

 そのため、これらの場合には、「買主」である法人・不動産業者から「売主」である個人番号の提供を求められると思います。

③ 株式・投資信託

 株式等を保有している被後見人に対して、その会社が配当金を支払う場合、会社は原則として(提出省略範囲は、細かく定められていますので、記載を省略します。以下この③について、同様の扱いです。)「配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書」を税務署に提出する必要があり、ここには「支払先」である株主の個人番号を記載する必要があります。また、株式が売買された際の譲渡益についても、それが一般口座で行われたものであれば、対価を支払うものが「株式等の売却の対価等の支払調書」を税務署に提出しなければならず、これにも支払先の個人番号を記載する必要があります。そして、特定口座で取引を行っている場合には、配当・譲渡益ともに「特定口座年間取引報告書」において申告され、これにも支払先の個人番号を記載する必要があります。

 そのため、こうした場合、株主等である被後見人の個人番号について、後見人は、会社(非上場の場合)又は証券会社(上場の場合)から、個人番号の提供を求められると思われます(既存顧客等については制度導入後3年間の猶予期間があります。)。

④ 生命保険関係

 生命保険については、一時金の支払いのうち1回の支払金額が100万円を超えるもの、また、年金の支払額が年20万円を超えるものについては保険会社において法定調書の作成が必要とされ、そこに支払先の個人番号も記載しなければならないこととなります。

 また、被後見人の親族等がお亡くなりになって、その生命保険金を被後見人が受け取る場合にも、生命保険金・共済金受取人別支払調書において、受取人の個人番号の記載が求められます。

 これらの場合は、保険会社等から個人番号の記載を求められると思われます。

⑤ 損害保険関係

 損害保険契約等の満期返戻金等の支払金額が100万円を超える場合、年中の年金の支払額が20万円を超える場合にも、支払う側は支払調書を作成しなければならないため、支払先の個人番号の記載を要します。

 また、損害保険金・共済金のうち、死亡に伴って支払われるもので保険金の支払金額が100万円を超えるものについては、受取人別支払調書に受取人の個人番号の記載を要することになります。

 そのため、これらの場合にも、保険会社等から個人番号の記載を求められると思われます。

(2)社会保障関係  

ア 医療保険(健康保険・国民健康保険後期高齢者医療保険

 被後見人について、これらの資格の取得、喪失が生じたり、高額費用の還付や限度額認定請求等を行う場合に、被後見人の個人番号の記載が必要となります

 なお、「療養費の請求」にも必要ですが、これは【現物としての療養】を受けることなく、後で療養費を請求する場合の話ですので、通常の病院の診察等で必要になるわけではありません。

イ 介護保険

 介護保険資格の取得は、高齢で成年後見となられている方の場合、すでに手続きが済んでいるかと思われます。資格を喪失した場合や、高額費用の還付・限度額認定の請求といった医療保険と同じような場面でも、被後見人の個人番号は必要になってきます。

 さらに、要支援・要介護の認定・更新の際に被後見人の個人番号の記載を求められる点が重要です。

ウ 生活保護

 被後見人について生活保護を申請する場合には、被後見人の個人番号の記載を求められます。

エ 年金

 法施行時期が延長されたこととの関係で、現時点ではどういった場面で個人番号が要求されるかはわかっていません。 

(3)マイナンバー固有の手続き

ア 転居等の届出

 いわゆる(住民基本台帳法の)転入届を提出する際、マイナンバー法では、「通知カード」(7条)、「個人番号カード」(17条)についても同時に地方自治体に提出しなければならないとされています。カードに記載された住所等を書き変えるなどの作業のためです。

 法令上はこの届けを代理人が行ってよいか明らかではありませんが、「通知カードおよび個人番号カードの交付等に関する事務処理要領について」(平成27年9月29日総行住第137号)では、法定代理人等もこれを行うことができるとされています。ただし、「個人番号カード」による手続きの場合には、住民基本台帳アプリケーションについての4桁の暗証番号を記入しなければ住所の書き換えができないことになりますので(上記通知第3-3-(1)-ア)、被後見人等からこれを教えてもらっておくと手続きがスムーズに行えるのでしょう。

 暗証番号を教わらないままに法定代理人が手続きを行おうとする場合は、上記の通知でははっきり書かれていませんが、①自治体からの被後見人に「回答書」を送ってもらい、本人に暗証番号を記載してもらうか(第3-1-ウ―(オ)-C。本来は法定代理人以外の任意代理人についての処理なので、自治体が認めてくれるかどうかはわかりません)、②個人番号カードの暗証番号の変更の手続き(第3‐3-(3))を行うことになるかと思われます。

 法定代理人は、暗証番号を入力できるとされ、暗証番号変更の手続きもできるようですので、法定代理人がいる場合には法定代理人が暗証番号、個人番号カードの管理を行うことを念頭に置いているのかもしれませんね。

 ちなみに、上記で引用した「通知カードおよび個人番号カードの交付等に関する事務処理要領について」は、ぎょうせいの「平成27年版住民基本台帳法令・通知集」を参照しています。

イ 個人番号カードの受領    

 15歳未満の方や被後見人が個人番号カードの申請を行った場合には、法定代理人である後見人が市町村の事務所に出頭して、個人番号カードの受領を行うことになるようです(第3-2-(1)-ウ―(ウ))。また、このときに法定代理人である後見人に暗証番号の入力を求められるのではないかと思われます。

ウ 個人番号の指定の請求

 マイナンバー法では、「個人番号が漏えい」して「不正に用いられる恐れ」がある場合に、従前の個人番号に代わる個人番号の指定を請求できる(法7条2項)とされています。

 法律では、本人しか請求できないように見えますが、法施行令3条6項により本人が個人番号指定請求書を作成すれば、その提出は代理人でも行うことができるとされています。

 さらに、上記通知では、「法定代理人に限」っては「本人に代わって請求することができることとするのが適当である。」としていますので、法定代理人である成年後見人は、みずから請求書を作成し、申請することもできると思われます。

(4)その他:死後事務について

 本来の成年後見人の職務ではありませんが、被後見人がお亡くなりになった後にも、被後見人の個人番号が必要とされる手続きがあります。

 医療保険において葬祭費等を請求する場合には、個人番号の記載が必要とされていますし、生命保険や損害保険(死亡)の保険金を請求する場合、そして、相続税の申告の場合にも、お亡くなりになられた被後見人の個人番号は必要とされます。

 そうした手続きの多くは、成年後見人が行うものではありませんが、親族が被後見人の個人番号を知らず、被後見人と同一世帯ではない場合には、個人番号を伝えてあげる必要が出てくることもあります。

 マイナンバー法で「第三者への提供」が制限されているのは、「特定個人情報」(法19条)であり、「特定個人情報」の中にはお亡くなりになられた方のものは含まれません。そのため、お亡くなりになられた被後見人の個人番号を、その親族にお教えしてもマイナンバー法には触れないことになります。

 Q17-5死亡保険金の支払に伴って提出する支払調書に記載する保険契約者の個人番号について、保険契約者が死亡しているケースが想定されますが、その場合どのような対応が適切ですか。
A17-5保険契約者が死亡している場合であっても、支払調書には保険契約者の個人番号を記載することとなっています。死者の個人番号については番号法上の提供制限は及びませんので、保険契約者の個人番号を知っている者に適宜提供を求めることとなります。 

「特定個人情報の適正な取り扱いに関するガイドライン(事業者編)に関するQ&A」Q17-5

 ただ、親族間で紛争にならないよう、引継ぎを行うときと同様の配慮は必要と思われます。

3 【未成年者】の後見人(未成年後見人)

 上記2の「高齢の方の成年後見」で触れた手続きで、未成年後見人の場合でも問題となる手続きもありますが、それについては重複するので説明を省きます。

 未成年後見人に特に関係してくるものは、以下のようなものでしょうか。

(1)児童手当の新規認定請求

 児童手当法施行規則が改正され、児童手当を新規に認定してもらうための様式である、第1条の4の様式2号【児童手当・特例給付認定請求書】に、当該請求者(つまり、未成年後見人)及び配偶者がいるときには配偶者の個人番号が必要とされます(平成27年12月18日内閣府令第73号)。 

(2)児童扶養手当の認定請求

 児童扶養手当の受給は、未成年者の「養育者」が行うものですので、未成年者の親族等の後見人であればともかく、弁護士のような専門職後見人請求することはあまりないのかもしれませんね。

 児童扶養手当法施行規則が改正されたことにより、1条の様式第1号【児童扶養手当認定請求書】に、当該請求者及びその扶養親族、そして対象となる児童の個人番号が必要とされるようになっています(平成27年9月29日厚生労働省令第150号の、第19条)。

(3)子ども・子育て支援法20条の支給認定(20条1項)

 幼稚園・認定子ども園・保育所・小規模保育への申し込み等に関係してくる、子ども・子育て支援法20条の支給認定を受けるためには、保護者(この場合は未成年後見人)の個人番号の記載が必要とされています(子ども・子育て支援法施行規則第2条)。

(4)奨学金

 奨学金については、まだ制度導入時期となっていないため、現時点では詳細は定まっていません。

 

※ あるいは、間違い、見落としもあるかもしれませんが、メモとして書き残しておくこととしました。

 実際に手続き等を行う場合には、管轄の役所に問い合わせ等を行われてはどうかと思います。