10月27日は,東京弁護士会主催の,「常勤弁護士のいる児童相談所と子どもの権利保障」というイベントを聴きに行ってきました。
以前別のブログに書いたとおり,児童相談所の弁護士に関心はあります。神奈川県弁護士会の子どもの権利に関する委員会を辞めた今でも,自分の心を偽ることはできませんので,やはり聞きたいと思い参加しました。
1 インハウスローヤー
常勤弁護士を配置している児童相談所や,嘱託弁護士を持つ児童相談所はこれまでにもありました。しかし,平成28年の児童福祉法の改正によって法律に定めが置かれたため,近時,配置が増えているものです。
12条3 都道府県は、児童相談所が前項に規定する業務のうち法律に関する専門的な知識経験を必要とするものを適切かつ円滑に行うことの重要性に鑑み、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。
(児童福祉法)
もっとも,「配置またはこれに準ずる措置」というものがどういったものを指すのか,非常勤職員や嘱託等でもよいのか,中央児童相談所に1人配置すればよいのか等については,かならずしも明確となっていなかったと思います。
こうした弁護士も,いわゆる「インハウスローヤー」ですので,【弁護士を内部に持ったことのない組織が,弁護士に何をさせるか】が難しく,逆に弁護士としても【弁護士としても何を行うことを持って組織に貢献するか】が課題であり,組織も弁護士も,そうしたことをお互い【手探り】で探っていくことも多いように聞いています。
単に,裁判を任せるだけならば組織内に弁護士を置く必要まではないこともあるでしょう。
そうした点からすると,インハウスローヤーは,それを使う組織の意識や,またそこに所属する弁護士の創意工夫によって,その効果が大きく変わるものではないかと思っています。
そのため,はたして児童相談所に常勤弁護士が配置された場合に,(訴訟代理や法的アドバイスは勿論として)実際の所,どういった点で役に立てるのかは,関心がありました。
2 シンポジウムの内容
シンポジウムの内容は,①東京弁護士会の3人の先生が,いずれも常勤弁護士が配置されている福岡と名古屋の児童相談所を,4~5日見てきたことに基づく報告と,②名古屋の常勤弁護士である橋本佳子先生を交えてのパネルディスカッションというものでした。
前者については,それぞれの児童相談所の常勤弁護士のスケジュールや,職員との距離感などが伺え,非常に興味深いものでした。ただ,できうれば数日見学した結果だけではなく,常勤弁護士が入る前から児童相談所に勤めていた職員の方々の具体的な声などを聞いてみたいな,と思いました。
そこで役に立てていると思われているかが,やはり一番気になりますので…。
後者については,まだ常勤弁護士が何をやるかが必ずしも明確でなかったころに児童相談所に入り,まさに体当たりで組織の一員になっていった先生のお話に,正直頭が下がりました。
3 思うこと
インハウスローヤーについて書かれたこちらの文章などでは,われわれ独立して事務所を構えている弁護士を「監督でありコーチ」と表現しているのに対し,インハウスローヤーのことを「選手」と表現しています。
しかし,はたして「選手」をやったことのない状態で,「監督・コーチ」といての役割も十分に果たせるのでしょうか。
児童福祉審議会に所属し,またときおり横浜市の児童相談所の申立代理人等を勤めてつつも,ずっと,自分の児童福祉についての理解が現場を見ていないことで表面的なものにとどまっているのではないか,血の通ったものになっていないのではないかという恐れも感じていました。
また,現場の苦労を自ら体験しないままに,法律家として話をすることに,忸怩たるものも感じていたことも否定できません。
だから,やっぱり,話を聞きながら,
うらやましいと思いましたね。
お話をお聞かせ頂き,有り難うございました。