この年末年始には、2冊の本を読みましたが、そのうちの1冊がこの本です。
面白い本です。ただ、児童相談所にそのまま使える内容ではないだろうと思うので、新人の方などにはお勧めし難いところがあるでしょうか。
著者の八木亜紀子先生は、アメリカの大学でソーシャルワークを学び、その後もアメリカの現場で活動された方とのことです。そして、この本では、アメリカのソーシャルワーカーが記録を作成する際に注意していることや、具体的な方法が紹介された後、さらに、日本で各分野のソーシャルワーカーが記録を作成することを想定し、いくつかの分野について記載例(「悪い例」と「修正例」が比較できるもの)が載っています。
そうした記載例の充実や、訴訟や個人情報といった視点にも触れてあることは、良い本だと思います。
ただ、ソーシャルワークは、多種多様な社会福祉の場面で行われ、場面ごとに期待される・果たしている役割が異なるものです。ですので、その特定分野の記録作成について書かれた書籍があれば、その特定分野のソーシャルワーカーにはそちらの方が役に立つことは、ありうると思います。
そして、この本に書かれている内容は、児童相談所向けの記載とは言えないように思います。
多くのソーシャルワークに見られるように、相談に対して本人が適切に支援を「選択」できるよう援助する(ケアマネジメント的)という役割ばかりではなく、児童相談所においては「児童虐待」あるいは「不適切な養育」という問題への対応(立入調査等や裁判といったものも含めて)が強く求められていますので…(そうした、児童相談所に対応した記載箇所はありませんでした)。
また、アメリカと異なり、日本においてはソーシャルワークにおける裁判例の蓄積がそれほどあるわけではありませんので、この本に書かれている個人情報や訴訟の視点についても、日本ならばこうなるのでは?、という、筆者の推測によるものであって、確たることは言えない部分もあります。
とはいえ、こうした本を読むと、『自分ならどうするか』を考えさせられるので、とても有意義でした。また、改めて他のソーシャルワークと児童相談所がやらなければいけないこととの「違い」を認識することもできました。
なかなか、『自分ならどうするか』の考えが、すぐに固まるわけではありませんが…。