【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

SOS子どもの村「里親養育の質の向上をめざして」に参加して

 正直、間もなくパソコンを事務所から撤去しますし、そもそもパソコンの前に座る時間が少なくなってきました。

 そのため、委員会・研究会やイベント・研修等もあまり参加できない状態ですが、先日のこのイベントだけは、是非見ておきたいと思いかねて申し込んでいたものでしたので、(一晩くらい事務所の泊まり込みが増えるかもしれませんが)参加してきました。

【里親支援のフォーラム開催】東京会場は満員御礼/九州会場受付中です!|子どもの村ブログ|SOS子どもの村JAPAN

1 SOS子どもの村

  福岡にあるSOS子どもの村は、子供のための施設を作ることもなかなか難しいときに、「育親」さんが子供を育てる家をいくつか集めて作る形で始まった試みだった…と思います。

 SOS子どもの村自体は、国連の「キンダードルフ」という取り組みだったかと思いますが、福岡において、その関係者を幾度がお呼びしてお話を伺うなどし、ついにはキンダードルフとして認定を受けた…という話だったように、記憶しています。

 もともとは、福岡市の児童相談所に勤めていらっしゃる久保健二弁護士とお話などをした際にその取り組みのお名前を伺い、昨年、「日本子ども虐待防止学会」に「SOS子どもの村」がブースを出しておられましたので、そこで配布されていた過去の市民フォーラムの報告書や、「フォスタリングチェンジプログラム実施報告」などをいただき、目を通していました。

2 外部と交流のある社会的養護

  前のブログで、施設や里親は、外部・社会の視点を入れていくこと,オープンになっていくことが必要ではないかと書きましたが、そう考えるようになったのは、この福岡の「SOS子どもの村」の取り組みを知ったことによる影響が大きいでしょうか…。

 もともと、久保先生の書籍を通読させていただいたときに、自分とは見解が異なる個所や、出典がわからず検証ができない箇所等はあったものの、その学びの深さに驚きました。

www.kajo.co.jp

 その後、福岡市の児童相談所長である藤林先生と久保先生がご一緒にイベントに参加された際、お話を伺って、「トップの藤林先生がおられてこそ、久保先生もあそこまで力をつけられたのかもしれない」とも思うようになりました。

 そして、このSOS子どもの村開設にいたる取り組みの過程を、報告書を追って読ませていただいたときに、「ああ、これは地域の複数の方々がこうした積極的な取り組みを望まれたからこそ、藤林先生も久保先生も、お力を発揮できたのかもしれない」と思うようになりました。

 上で触れた「フォスタリングチェンジプログラム実施報告」を見ると、SOS子どもの村が、フォスタリングチェンジプログラムを学ぼうとした経緯が、以下のように書かれています。 

 しかし、4年を経過し、育親やスタッフに疲れが見られるようになり、今までの支援や研修にはない「新しい支援」の必要性を痛感することが多くなりました。そのような中で、上鹿渡先生の「子どもの問題行動への理解と対応」を読み、プログラムの一部「アテンディング」を体験し、このプログラムが、求めていた「新しい支援」なのではないかと感じ ました。生活の中で実践し、日々の生活が変わっていくことが大きな魅力でした 

 専門家に対して、育親の方々が直面されている問題や必要な援助を率直に伝えることができたのであれば、すごいなと思います。

 先のブログで触れた安全委員会方式でもそうですが、子どもを育てて行くに当たって直面する様々な問題は「まだ小さい兆候のうち」に対応することが、結局大きな問題となることを防ぐことに繋がるのではないかと思いますし、それには、施設や里親が外部に対して開かれることが必要だと思っています(もちろん、子供のプライバシーはありますので、すべて誰に対してあけっぴろげにすればよいわけではありませんが)。

 とはいえ、実際にお話を聞いてみると、「SOS子どもの村」という枠組み自体、まだまだ試行錯誤を続けている段階であり、その成果もまだ未知数のような印象も受けました。

3 イギリスの里親研修

 なお,この日のお話の中心は「SOS子どもの村」のことではなく、イギリスで行われている里親の登録制度・研修等についてのお話でした。

 イギリスでは、里親に対しては毎年、里親としての登録を継続するかどうかが【審査】され、そこで継続が認められない方も多くいらっしゃるようです。また、里親としての信頼性について警察に照会を行うなど、日本とは比べ物にならないほど、里親と認定するかどうかに慎重であり、また里親に責任を求めているように見受けられたことが印象に残っています。

 …通常であれば、イベントの前に関連する文献等を探して目を通し、それができなくても、講義後に論文等を探して、知識の補強をするように心がけているつもりですが、当分、そうした余裕を持てそうにありませんので、あるいは聞き違いや誤解もあるかもしれません。その際には申し訳ありません。

 まだ、今の時点では、聞いた内容を消化したり、自分なりの見解を考えるところまでたどり着けないのですが…。

 また、余裕ができたら、イギリスの里親制度について調べ、学び、考えてみたいと思います。