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【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

「顧問弁護士」って,何だろう…?。(『企業法務バイブル』)

ちょっと時間がかかりましたが,弘文堂の「企業法務バイブル」を読み終わりました。 企業法務について,かなり網羅的に整理して書かれた本としては,類書が少ないタイプではないかと思います。 私が司法試験に合格した頃は,すでに,「企業法務」「渉外」などの弁護士が脚光を浴びていましたが,他の修習生に聞いても,あるいは,事務所訪問に行ってみても,具体的にそうした弁護士が何をやっているのかについては,誰も明確には教えてくれませんでした。 その後,実務家として修習生を指導する段になったときも,その修習生が企業法務や渉外を志している場合には,何を教えればいいのか,教えてあげられることがない,という状態が結構ありました。 そうした中で出会ったのが「企業法務と組織内弁護士の実務」という本です。企業法務について網羅的なことは書かれていませんでしたが,「会社の営業部門との間で契約書の作成を具体的に詰めていく作業手順」を記載してある点で,面白い本でした。当時はまだロースクールが始まって間もない頃で,今ほど「契約書の作成」について書かれた本もなく,契約書の本と言えば,契約書の書式例を集めた本が主流だった中で,この本は踏み込んだ内容が書かれていて,面白かったと思います。 この本の論考に目を通してもらった上で,契約の解釈が問題になるような事案を担当させてみると,企業法務を志す修習生も結構喜んでくれました。 そんな私が,いざ弁護士になってみて,周りに聞いてみても分からなかったのが「顧問」というものでした。 「顧問になって何をやるの?」という質問を他の先生にしてみても,なかなか回答が返ってこなかったのです。 そこで,書店で数種類の本から選んだのが,この「企業法務バイブル」でした。はじめは,「フェーズ0」「フェーズ1」などという記載を見て,「細かすぎる」と思い本棚に戻した(!)のですが,次に書店に足を運んだ際,中身に少し目を通してみると,決して「細かすぎる」訳ではなく,むしろ全体像の把握という観点からは適当な量の記載であることがわかったためです。 「顧問」になって何をやるのか,それは弁護士が個々のクライアントと話し会って決めていくことですが,その際には,クライアントに対して弁護士としてどういったメニューを提供できるか,それを説明・提案していけるのか大切ではないかと思います。もちろん,わかりやすいのは「内容証明郵便」「債権回収」「法律相談」などですが,債権回収などは常日頃から問題になるものかは何とも言えませんし,法律相談は,まさに「何を相談したらよいか」という顧問弁護士の「活かし方」を知っていて,初めて活きてくるものです。 「顧問」の使い方,「顧問」が役に立つかどうかが,まだ判断できていない会社と一緒に,「顧問契約のカタチ」を作っていく為には,弁護士が提供できる企業法務にどういうものがあるかを知り,提案していくことが必要だと思いますし,そうした全体像が頭にあってこそ,「そのうちのどの分野を身につけるか」「特定の知識・文献が企業法務のどの分野に属するものか」を考えていくことが出来ると思います。 とはいえ,だからといって,この本を丸のまま一冊読むというのは多分少数派だろうなあ…,横浜では特に…,とは思いますが…。 いえ,面白いんですよ。全体像のほかに,顧問弁護士としての基本的な視点(あくまで著者の先生の,ですが)が書かれていたり,情報を集める為のツール等も挙げられていて。ただ,「ここまで広い範囲の企業法務を,多くの中小企業が求めているか」というと,「?」という気はします。弁護士の業務は結局「整理」「助言」が基本なので,会社側に弁護士側の整理や助言に対応しうる素地がないと,この本に書いてある内容も活かすことは難しいかもしれません。 もともと,この本は「弁護士向け」というよりもむしろ,そうした企業の「法務担当者向け」に書かれたものだそうです(しかし,この本を読みこなすほどの法務がいる企業というのもすごいですね…)。「はじめに」にそう書いてあります。その時点で読もうとする弁護士も少ないかもしれませんね。 でも,企業の法務担当者向けということは,必ずしもこの本のレベルが低いことを意味しないと思います。企業法務に携わっている人の中には,すごい知識を持っている人もいます。このサイトなど,本では得られない,いろいろなことが書いてありますし,なまじな弁護士よりも詳しいのじゃないかと思う箇所もあります。 そうしたことを,知り合いの先生に話してみると… 「いや,そりゃあ彼らは年中それをやっているから,僕らよりも詳しいよ~」 …それをいっちゃあ…,どうでしょう…?^^; 役立てる弁護士であるために,精進を続けたいと思います^^。