【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

多様な『社会的養護』の試行錯誤より―NPO法人ゆめ・まち・ねっとの活動

 今日は、「社会的養育における里親制度と里親支援研修会」として開催された講演会、「多様な『社会的養育』の試行錯誤より」に参加してきました。

  「社会的養育」というと堅苦しく聞こえてしまいますが、「家庭」にも余裕がなかなかなく、「学校」等にも居場所が見つけられにくい子どもがいる―そうした子どもの【居場所】を作ることが、社会を良くしていくこと、社会を支えていってくれる人を増やすことにつながるのではないか、ということではないかと個人的には感じています。

  里親制度ももちろんその一つですが、それだけに留まらない、多様な方法があるのでは―ということで、プレイパーク、寺子屋子ども食堂、里親等、様々な取り組みをされている、NPO法人ゆめ・まち・ねっとの渡部夫妻に来ていただいて、お話を伺う企画でした。

  こうした取り組みをされているNPOが全国にあることは、神奈川で弁護士をしていた時に、話を聞きに行ったり、見学に行ったりして知っていました。

 川崎市「子ども夢パーク」を開設された、NPO法人「たまりば」西野博之さんの取り組みがこうしたものでしたし(見学に行かせていただいたことや、お話を聞かせていただいたことがあり、お話については以前、別のブログでも触れています)、また、ジャスプカンのブースで知った福岡の取り組みSOS子どもの村福岡を作る前に行われた取り組みの一つとして、プレイバークを作る取り組みがされていたことを、報告書で読ませていただいた覚えがあります。

  (NPOによって内容に多少の差があるにせよ)「ルールのない、子供が自由に遊べる場を作る」「承認してもらえる場所を作る」ということの意義は、大きいのだろうな、と思います。

 昔と違い、いまは当然に右肩上がりの時代であるとは思っていませんし、さらに少子高齢化も進んでいる以上、子どもにかかるプレッシャーというのは大きいのでしょうし、家庭や学校においてもそうしたプレッシャーがかかりうる以上、そうした場所に【居場所】を見つけにくくなったお子さんが、「いることのできる場所」というのは、大切なのだろうと思います。

  もちろん、上記のような「ルールのない遊び場」以外の、他のいろいろなNPOがされている特定分野の社会的養護の取り組みも、それぞれ「それに向いたお子さん」がいると思うので、大切なものだと思います。

  …こうしたお話を聞くと、まだまだ自分が到底かなわない人が本当にたくさんいらっしゃるなという思いとともに、こういう方々がいらっしゃってこそ、社会も、児童相談所も、何とか成り立っていられるのだな、ということを痛感させられますね。

 また、明日から頑張ります。 

 …以前購入したまま、まだ読めていない、西野博之さんの「居場所のちから―生きているだけですごいんだ」を、読んでみたくなり、本棚から引っ張り出してみました(いつか読みたいとは思っていて、名古屋には持ってきていましたので…)。

 

※ 長らくブログの更新が滞っていましたが、この間、里親登録希望の方々の研修会を一緒に聞かせていただいたり、名養クラブの方々が行っている子どもの自立に向けての取り組みなどに参加させていただいています。

 ただ、一般に公開されているものではなかったため、記載を遠慮させていただいたことと、児童相談所の業務の中でなかなか余裕がなかったこともあって、ブログの更新までできませんでした。

 とはいえ、今日のお話は、「里親制度普及」という枠にとどまらず、一人でも多くの方に聞いて、考えてもらいたいと感じたことも多々ありましたので、ブログに書き残してみることにしました。

 すみません。日々充実していますが、更新は滞りそうに思います…。

南部地域療育センター「そよ風」スプリングバザー

 昨日は、南部地域療育センター「そよ風」で行われたスプリングバザーを見に行ってきました。

 「療育センター」というのは、障害を持つお子さんに対して、診察をしたり、障害に合ったサービスなどを行う施設です。

 当日の会場では、フリーマーケットや飲食店(屋台)、子どもの遊び場(スライムづくり、ビーズづくり、エアトランポリン)、ステージでの音楽、福引などがあり、たくさんの地域のお子さん・お父さんお母さんが来ていらして、とても賑やかでした(エアトランポリンやスライムづくりは、部屋から人(子ども)があふれているような状態でした…)。

 南部地域療育センターは、近くに小中学校や同じNPOが運営する福祉施設などもあり、「地域の子どもの集まる場所・子供の声が聞こえる場所」になっているところが、とてもいいと思います。

 横浜にいたころ、特別養護老人ホームと併設された川崎の乳児院を見学に行った際、施設の方から「子どもの声が聞こえると、お年寄りの方も、『アラ、赤ちゃんがいるわ』といって、うれしそうになる、しゃきっとする」という話を伺った覚えがありますが、こういう場所があると、その地域全体がやさしくなれるのかもしれないな、と思いますね。

 さて、とうとう5月7日が名古屋市東部児童相談所の開所になりますので、準備も大詰めですね…。

はや2週間

児童相談所に勤めて、はや2週間がたちました。

あっという間でした。

 

充実しています。

悔しいのは、まだまだ自分が知らないことが多く、現場のスピードについていくにはまだまだ不足していると感じることでしょうか。

書籍を読む時間も(自由業であったこれまでと比べると)限界があるため、工夫は要るのだろうと思います(工夫に時間を使うことが億劫になり、工夫を放り出す気もしますが…)。

そして、学びたいことが際限なく広がっていきますね…。

自分が「かなわない」ところを持っている人たちと、一緒にいられるのは、とてもありがたいと思います。

正直、そのまま手を出してしまうと、絶対に消化不良になるので、

何を学んで、何を学ばないかを、本当は考えていかないといけないのでしょう。

 

でも、苦手ですね。

できることは、何でも知りたいし、やってみたい、

そう思ってしまいますので…。

どうにか、更新可能に。

何とか、名古屋で生活できる状態になれそうです。

インターネットにもつなげるようになりました。

この間、名古屋で行われた安全パートナリングという、児童相談所の方々が参加している勉強会に出席して見たり、東京のCCAPの行っていた「妊娠期からの切れ目のない支援」のイベントでお話を聞かせていただいたりしていました。

あとは、塩野先生の行政法の本を読んでいましたね。行政法Ⅲを横浜に忘れてしまったようなので買わないといけないかな、と思います(今買うのならば、宇賀先生の概説の方が、最新の改正に対応しています。ただ、塩野先生のご本の方が、他の先生の学説や文献紹介が詳しいようにも思え、行政法の論文を読むときによいかもしれないと考え、あえて塩野先生の本を読んでみました。読み比べてはいないので、わかりませんが…。)。

しかし、今後、このブログをどうするかが少し悩みどころです。

公務員の端くれになる形ですので、これまでのように「忌憚のない意見」を書くというわけにもいかないかもしれません。

まだ、どうするかを決められてはいないのですが…。

なお、題名は少し直しました。(本体のホームページも改訂してあります。)

 

 

ありがとうございました。

今日は、事務所泊まり込みで作業をしています。

そのおかげで、久々にパソコンに少し向かう時間ができました。

 

横浜で7年間、弁護士をやってみて。

いろいろなお客様と出会うことができました。

それぞれのお客様にどれだけのお返しができたのか…。

 

自分がお客様にとって最善の弁護士であることができたかはわかりません。

いまだ私自身勉強を続けている身なので、今日の自分より明日の自分の方が力をつけていると思いますし、

自分の力というのは、客観的にとらえることが難しいものですので…。

そしてなにより、弁護士の仕事のスタイルによっても、それぞれのお客様と会うかどうかの問題はあると思いますので…。

 ただただ一生懸命お客様と事件に向き合うだけでした。

 

とはいえ。

「紛争」は、いつまでもそれにとらわれていると、その人自身が前に進むことができなくなってしまうものです。

そうした「紛争」に「解決」をつけるために「裁判」というものがありますが、裁判の結果にも納得できなくなってしまわれると、その方の中で「紛争」が終わらなくなってしまいます。

弁護士の仕事は、お客様が「紛争」に対して「できることをした」「やれることをやった」と納得できるようにする「お手伝い」だと思っています。

この7年間、一緒に事件に関わらせていただいた幾人かのお客様が、「紛争」に区切りをつけ、前に進めるようになられていることを、そして今も前に進まれていることを、願っています。

※ しばらく、更新を休むと思います。すみません。

SOS子どもの村「里親養育の質の向上をめざして」に参加して

 正直、間もなくパソコンを事務所から撤去しますし、そもそもパソコンの前に座る時間が少なくなってきました。

 そのため、委員会・研究会やイベント・研修等もあまり参加できない状態ですが、先日のこのイベントだけは、是非見ておきたいと思いかねて申し込んでいたものでしたので、(一晩くらい事務所の泊まり込みが増えるかもしれませんが)参加してきました。

【里親支援のフォーラム開催】東京会場は満員御礼/九州会場受付中です!|子どもの村ブログ|SOS子どもの村JAPAN

1 SOS子どもの村

  福岡にあるSOS子どもの村は、子供のための施設を作ることもなかなか難しいときに、「育親」さんが子供を育てる家をいくつか集めて作る形で始まった試みだった…と思います。

 SOS子どもの村自体は、国連の「キンダードルフ」という取り組みだったかと思いますが、福岡において、その関係者を幾度がお呼びしてお話を伺うなどし、ついにはキンダードルフとして認定を受けた…という話だったように、記憶しています。

 もともとは、福岡市の児童相談所に勤めていらっしゃる久保健二弁護士とお話などをした際にその取り組みのお名前を伺い、昨年、「日本子ども虐待防止学会」に「SOS子どもの村」がブースを出しておられましたので、そこで配布されていた過去の市民フォーラムの報告書や、「フォスタリングチェンジプログラム実施報告」などをいただき、目を通していました。

2 外部と交流のある社会的養護

  前のブログで、施設や里親は、外部・社会の視点を入れていくこと,オープンになっていくことが必要ではないかと書きましたが、そう考えるようになったのは、この福岡の「SOS子どもの村」の取り組みを知ったことによる影響が大きいでしょうか…。

 もともと、久保先生の書籍を通読させていただいたときに、自分とは見解が異なる個所や、出典がわからず検証ができない箇所等はあったものの、その学びの深さに驚きました。

www.kajo.co.jp

 その後、福岡市の児童相談所長である藤林先生と久保先生がご一緒にイベントに参加された際、お話を伺って、「トップの藤林先生がおられてこそ、久保先生もあそこまで力をつけられたのかもしれない」とも思うようになりました。

 そして、このSOS子どもの村開設にいたる取り組みの過程を、報告書を追って読ませていただいたときに、「ああ、これは地域の複数の方々がこうした積極的な取り組みを望まれたからこそ、藤林先生も久保先生も、お力を発揮できたのかもしれない」と思うようになりました。

 上で触れた「フォスタリングチェンジプログラム実施報告」を見ると、SOS子どもの村が、フォスタリングチェンジプログラムを学ぼうとした経緯が、以下のように書かれています。 

 しかし、4年を経過し、育親やスタッフに疲れが見られるようになり、今までの支援や研修にはない「新しい支援」の必要性を痛感することが多くなりました。そのような中で、上鹿渡先生の「子どもの問題行動への理解と対応」を読み、プログラムの一部「アテンディング」を体験し、このプログラムが、求めていた「新しい支援」なのではないかと感じ ました。生活の中で実践し、日々の生活が変わっていくことが大きな魅力でした 

 専門家に対して、育親の方々が直面されている問題や必要な援助を率直に伝えることができたのであれば、すごいなと思います。

 先のブログで触れた安全委員会方式でもそうですが、子どもを育てて行くに当たって直面する様々な問題は「まだ小さい兆候のうち」に対応することが、結局大きな問題となることを防ぐことに繋がるのではないかと思いますし、それには、施設や里親が外部に対して開かれることが必要だと思っています(もちろん、子供のプライバシーはありますので、すべて誰に対してあけっぴろげにすればよいわけではありませんが)。

 とはいえ、実際にお話を聞いてみると、「SOS子どもの村」という枠組み自体、まだまだ試行錯誤を続けている段階であり、その成果もまだ未知数のような印象も受けました。

3 イギリスの里親研修

 なお,この日のお話の中心は「SOS子どもの村」のことではなく、イギリスで行われている里親の登録制度・研修等についてのお話でした。

 イギリスでは、里親に対しては毎年、里親としての登録を継続するかどうかが【審査】され、そこで継続が認められない方も多くいらっしゃるようです。また、里親としての信頼性について警察に照会を行うなど、日本とは比べ物にならないほど、里親と認定するかどうかに慎重であり、また里親に責任を求めているように見受けられたことが印象に残っています。

 …通常であれば、イベントの前に関連する文献等を探して目を通し、それができなくても、講義後に論文等を探して、知識の補強をするように心がけているつもりですが、当分、そうした余裕を持てそうにありませんので、あるいは聞き違いや誤解もあるかもしれません。その際には申し訳ありません。

 まだ、今の時点では、聞いた内容を消化したり、自分なりの見解を考えるところまでたどり着けないのですが…。

 また、余裕ができたら、イギリスの里親制度について調べ、学び、考えてみたいと思います。

【安全委員会方式研修会】に参加して

 先日は,名古屋での生活拠点を探しがてら,「安全委員会方式研修会」に参加してきました。
 「安全委員会」方式というのは,話を伺った限りでは,児童福祉施設の中で,力関係に差がある「身体への暴力」等を主に対象として,外部の委員を含めた安全委員会が,定期的な聞き取り調査や委員会の開催などによって対応を行う方法のようで,九州大学名誉教授の田蔦誠一先生が考案されたもののようです(もし,誤解や不正確な理解があったら,申し訳ありません。)
 こちらの全国児童福祉安全委員会連絡協議会のホームページや,同協議会の築山高彦先生の書かれたこちらの論文などを読むと,もっと詳しいことがわかるのかもしれません。

 以前,別のブログで書評を書いた「オルヴェウスいじめ防止プログラム」に少し似ていますね。オルヴェウスいじめ防止プログラムは,もともと社会学的なアプローチが背景にあるように思われますので,子どもの集団や地域社会といった各「コミュニティ」での話し合いと合意形成を重視しているのかな…と思える点,そして,他に家庭という生活の場がある「こども」が集まる場である「学校」を主な対象としている点で,安全委員会とは違いが生じているかな,と思います。

 お話の中では,「愛着(アタッチメント)は,安心・安全なしには育めない」という言葉が印象に残っていますね。

 また,外部・社会の視点を入れていくこと,オープンになっていくことは,社会的養護(施設・里親を問わず)というものに社会の理解を得なければならないこれからの時代には,必要とされることだろうと個人的には思っています。

 もちろん,こうした方法を用いれば,全て問題が解決するといったものではないのでしょうし,導入する施設がどれだけ真摯に取り組むかによって,効果にも差があると思われます。
 しかしながら,もし施設の方が真摯に実施しようとお考えになるのであれば,一定の効果はある方法ではないかと思いますね。