【天秤印】名古屋・横浜弁護士雑記

現在名古屋市に勤めている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

【書評】トラウマセラピー・ケースブック 症例に学ぶトラウマケア技法

 横浜にいたときには、児童精神科医の先生方の勉強会に加えてもらっていましたが、名古屋に来てからは、トラウマについて勉強する精神科医の先生方の勉強会に加えてもらうことができました(今は、コロナの関係もあり、お休み中ですが…。)。

 はじめは、トラウマやそれに対する治療方法について、全く知らず、なかなか会話についていけなかったのですが、虐待を受けた子どもの中には、トラウマがあるのではないかと思われる例もあることに気づき、先生方が話されている技法がどういったものか、トラウマとはどういうものなのかを、もっと知りたい。そう思って手に取った本です。 

www.seiwa-pb.co.jp

 この本を読むかぎりでは、トラウマというものがなぜ生じるかといったことや、それがどうしたら治るかといったことは、一義的に明らかではないものの、それぞれの「技法」によって、「こうではないか」という仮定や推測によって、説明を行っているようです。そのように、トラウマ自体はまだまだ明らかではないものの、外国では「効果がある」と思われたいくつかの治療法が行われていることが分かりました。

 この本でよいところは、治療を実際に行っているかのような会話のやり取り等を載せているため、それぞれの治療法の具体的なイメージが非常につかみやすいことです(治療法によっては、記載が薄い箇所もあります)。なにせ、素人にはそうしたことが全くわかりませんので…。

 暴露療法については、想像していた以上に、患者側に治ることに向けての強固な意思、動機付けが必要に感じられました。

 EMDRについても、勉強会で名前を聞いていたものの、どういった治療法かイメージがつかめておらず、この本のおかげで、「実際にどのように行われるのか」のイメージを、はじめて持つことができました。

 かねて関心を持っていた、TF-CBTについては、少し記載が薄く感じられました。いずれTF-CBTについてだけ書かれた、別の本を買って読んでみようかな、と思っています。

 対人関係療法などは、この本で初めて知りましたが、ソーシャルワークにも生かせる点があるように思われ、面白かったです。ただ、患者が治癒を求めてくる医療モデルだからこそできる側面があり、ソーシャルワークでそのまま活かすことができるわけでもないのだろうとも思います。

 また、この本で読むことで関心を持つことができた本、その存在を知った本も、そのうち買って読んでみようと思っています。 

書評:事例解説 未成年後見実務(日本加除出版株式会社)

 すみません、しばらく更新は滞っていました。その間に読んだ本のことを、忘れないうちに少し。

事例解説 未成年後見実務 | 日本加除出版

 児童相談所の業務の中では、未成年後見人と関わることも多いので、未成年後見人の立場やできることについて、もう少し理解を進めるために、読んだ本です。

 他の組織や職種と「協働」するためには、できるかぎり、その相手のことを知って、できることを頼むようにしたいな、と思っていますので…(それが難しいことも多いのですが)。

 

 未成年後見人自体について書いた書籍というのは、これまであまりありませんでした。

 自分としては、未成年後見人は、「成年後見人」と多くの点で共通するため、成年後見人についての書籍を参照しながら、都度考えていたところもありました。弁護士をする中で、成年後見人と成年後見人には違いもあることが、わかってきましたが、それについて明確に書籍となったものを読んだことはありませんでした。

 

 この本は、そうした「成年後見人との違い」に特化して書かれているわけではありません。第一編で、未成年後見人について、親権者や里親、養子など、関連する事柄との関係について書いた後で、第2編で、様々な事例を挙げて、その場合の考え方について触れています。とはいえ、自分の疑問の答えに近づくことのできる記載もありました。

 

 弁護士等の第三者が未成年後見人になった場合に、保証人となることを避けた方が良い理由、未成年後見人と医療同意のことなどについて、他の本よりも詳しく書いてあるかな、と感じました。

 他方で、執筆された先生が東京の弁護士が中心であるためか、運用面で、「これは東京のことを書いているんじゃないかな?」と思わされた箇所もありました。

 同時期に読んだ、「未成年後見の実務 専門職後見人の立場から」よりも、自分の「知りたいこと」により近い事柄が書かれていたかな、と思います(戸籍制度等、細かな条文の整理という点では、「未成年後見の実務 専門職後見人の立場から」も面白かったのですが)。

 

 親御さんが亡くなられた場合など、選任される場合が法律上限られている「未成年後見」は、「成年後見」と比べると、事例は少なく、裁判所の判断が示されることも多くはないので、この2冊の本に書かれた内容でも、まだまだ結論が出てはいないのかな、と思う個所もあります。でも、そうした中でも、未成年後見実務を行うにあたり、参考になる本だろうと思います(一般の方向けとしては、どちらの本も難しいと思うのですが…。)。

 

※ 一身上のことでいろいろと悩んだこともあってブログの更新が滞っていました。「無理せずに続ける」ということを第一にしているブログなので、申し訳ありません。いろいろと心の整理もある程度つきましたので、また折を見て、可能な範囲で書いていこうと思います。

「根っこから考える子どものアレルギー」を聞いてきました。

 11月2日、3日は、日本小児アレルギー学会の学術大会「根っこから考える子どものアレルギー」を聞いてきました。

 食物アレルギーに関心を持ったのは、もともと、児童相談所に勤める前に、児童相談所でお子さんをお預かりするときに食物アレルギーに配慮しなければいけないことを知ったことがきっかけです。

 とはいえ、食物アレルギーがどれだけ危険で、どれだけ大変なのか、どうすればよいのか…そうしたことまでは知らなかったので、恥ずかしく思い、ちょうど愛知県で活動していたアレルギー支援ネットワークのアレルギー大学を受け始めたことがきっかけでした。

 ただ、「関心を持っているときに勉強することが一番身に付く」と思っていますし、勉強することは「その勉強の周りにどんな活用が広がっているか」を知ることで、より活きてくると思いますので、ちょうどアレルギー大学も上級まで受け終わったこの機会に、アレルギーについての最新の知見が集まる場に行ってみたかった…と思いました。

 

 参加してみると…やっぱり、今までとは少し違った視点や理解を持てるようになりますね。とはいえ、最新の知見が「わかる」というわけではなく、あくまで、その学問の世界がどういった広がりを持っているのかといった点の理解になりますが…。

 個々の講演・発表は難しいものも多く、「微生物」「ブドウ球菌」などが絡む発表については、ついていけなかったところもありました。

 他方で、食物アレルギーの原因となるタンパク質の構造などは多少なりともアレルギー大学で聞いていたので(S-S結合など、知らない言葉も出ては来ましたが…)、少なくとも「どういった話をしているか」くらいは、なんとなくわかりました。

 また、アレルギー専門医と、クリニックや関係機関との連携に関する様々な発表は非常に興味深い点がいくつもありました。そして、アレルギーの症状が出た患者さんについて、医師が「どの食べ物が原因なのか」を調べるためにさまざまな文献を調べたり、推論を重ねて検査をし、突き止めていく具体的な過程を知ることで、この分野に携わる医療分野の奥深かさの一端を知ることができました。

 この学会の特徴として強く感じたのは、「発展途上」「究明途上」ということでしょうか。

 発表の中でも、日本で稀な症例の発表や、医学ではない他分野の知見や、免疫学にとどまらない他の専門領域の知見に基づく発表が多く見られました。

 物販でも(また5冊ほど買ってしまいましたが…う~ん。)、アレルギーやアトピー、喘息の書籍混ざって、研究論文の書き方についての書籍が散見されましたし、講演の中にも「統計学から見た臨床研究論文の読み方」という講座があるなど、これから研究をしていこう、人を育てよう、という方向性が強い学会に見受けられました。

 単なる学術的な内容にとどまらず、「ハンズオンセミナー」として、スキンケアの方法やブリックテストの方法を学ぶ場があることも、面白い試みだと思いました(もっとも、他の聞きたい講演と被っていたこと、医療職の資格を持っていないことから、僕はハンズオンセミナーは受けていませんが…)。

 地域連携については…、もっと食物アレルギーのお子さんの情報が、必要な個所で共有され、連携が進むと良いな、と個人的には思っています。

 アレルギーについての検査情報等は、個人情報保護法で言えば「要配慮個人情報」(同条2条3項)にあたりますので、原則としては本人の同意のもとで他者に提供することになります(同意を得ることが困難な場合には、それが児童の健全育成に資するのであれば提供できます(同法23条1項3号))。

 医療連携において、スマートフォンタブレットを使って、医師、薬剤師、訪問看護師、介護士等が連携する構想があるのと同じように、食物アレルギー情報を、アレルギー専門医、地元の医師、学校や保育所等で、もっと共有できる仕組みができると、いいのではないか…と思っています(まさに今試みられていることなのでしょうが…)。

 

「成人発達支援の新しい展開」(第7回成人発達障害支援学会)を聞いてきました。

 10月26日と、27日は、成人発達障害支援学会の学術集会を聞きに行ってきました。

 ちょうど今年、名古屋で開催されることから知った学会です。

 児童相談所ではお子さんの障害の相談を受けることもあるため、発達に障害を持つお子さんが成人になったときにどういった支援・環境があるのか、という点に関心があり、参加してみることとしたものです。

  就労支援、家庭生活支援等について、大学や病院、発達障碍者支援センターなどで、いろいろと挑戦的な試みに取り組まれているお話を聞くことができ、印象に残りました。特に、「障碍者支援」という形ではなく、だれでも参加できるイベントを作り、そこに自然に、障害のある人も、ない人も参加していくことで、社会とのかかわりを築いていくお話が興味深かったです(そのお話は、前に参加した学会で聞いた、アディクションの話とも比較すると、さらに考えさせられるものでした)。

 あとは、研究会等でお話を伺っている、杉山登志朗先生から、発達障害を持つ方が複雑性PTSDを発症している場合の治療法についてお話を伺えたことと、他の発表者の発表した心理療法との違いについて考えるきっかけになったことは有意義でした。

 心理療法は、話を聞くとなにかしら漠然と「こうした感じの物かな」というイメージをもつこともあるのですが、「他の心理療法との違い」「どういった場合にどの方法が良いのか」などということを考え出すと、結局自分が何もわかっていなんだなということがよくわかります。

 トラウマに関連する書籍等も、いくつか購入しましたので、また読んでいってみたいと思います。 

 とはいえ…。学会等があるたびに、何かしら新しい知識についての本を買うので、今月だけで17冊ほど未読の本が増えました…。大赤字です…。今月読めた本は、せいぜい2~3冊ぐらいですし、いつ読み終わることができるのか…。

 11月も、土日は全て予定が入っている気がしますし…。

  でも、今知りたいと思うことに全力を尽くしてこそ、多少なりとも自分の力になるところがあると思っていますので、まあ、僕はこれでいいかな、と思っています。

日本法医学会学術中部地方会に参加してみました。

 もう、一週間前の話になってしまいますが…。

 10月19日は、日本法医学会の、学術中部地方会に参加させていただきました。

 法医学は、刑事事件でその知識が必要となることはありましたし、日本子ども虐待医学会の学術集会などで話を聞いたりした折に、関心をもっていました。

 とはいえ、素人(児童相談所常勤弁護士)が学ぶようなことができるものなのか、それを学んでどういった面で役に立てることができるのか、そうしたことも分からなかったため、まず「自分の視野を広げる」ために、とりあえず今年から法医学会に所属してみることとしたものです。

  やはり、法医学の学術集会を見せていただくと、「法医学」の取り扱う全体像を見ることができるため、自分の職種に関連するところだけを見ることとは全く印象が違ってくるな、という感触を受けました。

 法医学において、人のお亡くなりになった原因を調べる際には、さまざまな疾病、とくに心臓疾患や脳疾患との鑑別が要求されるため、それらの疾患についての基本的な知識を備えていることが必須であることが、とてもよくわかりました。

 抄録に書かれている用語などを、インターネットで調べても、その用語の説明の中にまた知らない用語が出てくるような感じでしたね…。

 これを機に、法医学の書籍も新しい版のものに買い替えましたし、また少しずつ折に触れて勉強していこうと思っています。

 

養問研の勉強会に参加してみて。

 10月17日には、全国児童養護問題研究会(養問研)中部日本ブロックの勉強会「児童養護施設における外国籍の子どもへの支援」に参加してきました。

 

 が…。う~ん…と唸ってしまいました。

 やはり、世の中には「難しい」「悩ましい」事例がいくらでもあるなあ…と…。

 弁護士として法律相談を受ける場合に、ある程度の知識を持っていると、相談を受けたときに「こんなところが参考にできるんじゃないか」「こんな知識が使えるんじゃないか」という、何かしらの「手掛かり」をつかめることは多いのですが、外国籍の方の事例では、そうした「手掛かり」として思いつくものが多くはないうえに、後でそうしたものを調べても、なかなか答えまではたどり着き難いところがあります。 

 入国管理行政等については、裁判等になっている事件や、公表されている事例・資料が決して多いわけではなく、判断が難しいことは多いものですから…。

  もう少し考えてみて、他の先生にも聞いてみるかなあ…。

 いずれにせよ、一度関心を持った事柄については、少しずつでも関心を持ち続け、学び続けるようでありたいとは思っています(…関心を持つことが多すぎて、ちょっとあふれている感じがするのですが…)。

外国につながる子どもと無国籍【書評】

 ずいぶんと前に読んだ本ですが、ちょうど、一つ前で外国の方の法律問題についての本を紹介したところですので、ついでに書いておこうと思いました。

www.kinokuniya.co.jp

 前の本(外国人の法律相談Q&A)では、「日本で生まれた子が国籍を取得できないことがあるのか」については、かならずしも詳述されてはいませんでした。というか、それについて詳述された本というのは(「無戸籍」ならばともかく「無国籍」となると)、あまり他にはないように思われます。

 この本には、日本で生まれて、子どもが国籍(日本国籍はもとより、外国国籍も)事実上取得できない場合があることについて警鐘を鳴らし、その場合にどうしたらよいかについて書かれた本です。

 同期の先生で、神奈川県弁護士会でご一緒させていただいた小豆澤史絵先生が、著者のお一人となっている本であり、小豆澤先生から勧められた本です。

  各弁護士会では無戸籍に対応する相談を行っておりますので、そうした相談に対応する法律家の方や、児童相談所をはじめ、こうした事件に関わる法律家の方にはお勧めしたい本です(マニュアルだけだと、わかりにくいところもありますので…)。

 非常にわかりやすく書かれてはいるものの、それでも難しいところがあるので、一般の職員には強く勧め難いところはあるのですが…。

 おりにふれ、この本に出てくる知識が問題となった場合に、付箋を貼って、回覧したりして、関心を持ってもらうようにしていますね…。