【天秤印】名古屋・横浜弁護士雑記

現在名古屋市に勤めている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

子ども・家族支援に役立つ面接の技とコツ【書評】

 

 

複雑にしてシンプル、シンプルだけれども複雑

読後感を表すと、そんな印象を受けるでしょうか。

 

複雑かな、と思うと、書いてある内容は意外にシンプルにも思えるところがありますが、簡単に実践できるかというと、とても難しい―。

www.kinokuniya.co.jp

この本は、子どもや家族支援に関わる専門家が、それぞれ【異なる立場】あるいは【異なるスタンス・視点】から、子供や家族に関わってきた経験をもとに、子どもや家族との面接について書いた本です。

 ある一つの考え方に貫かれた本、ではなく、さまざまな考えが示された本ですので、混乱するところもあるかもしれませんし、初学者向きのところもあれば、初学者に向かないところもあるように思います。初学者向きのところもあるのではないかと思ったのは、さまざまな立場・スタンスからの面接への取り組み方が書かれているため、自分の見方・考え方に近い取り組みや、逆に思いついていなかった取り組みを見つけることができ、そこから学びを広げていけるのではないかと思ったためです。

他方で、この本に書かれている、各執筆者の「想い」や「苦労・工夫」は、実際に同じ立場で呻吟した方ではないと、十分に受け止めることが難しいのだろうな、と思います。

それぞれに違う立場やスタンスで書かれているといっても、底流にあるものは同じところがあり、

①常に二つの視点をもつこと(安定と変化、強みと弱み等)

②相談者の「枠」や、関わるにあたっての想い、人間性

というものをきちんと持ったうえで、

 ・それぞれの場面での自分の立場、相手の立場に応じた、相手とコミュニケーションをとっていくための工夫

・子どもや保護者・家族をどのように見て、捉えていくか

というものが大切なのだろうと思います。

これだけ書いてしまうと、ある意味当たり前のことでもあり、こうした事柄を念頭に置きながら、実践で工夫したその部分にこそ本質があるようにも思われますので、同じ立場で呻吟し、苦しんだ人でないと、本当の工夫は受け取れないのかもしれないと思いました。

その意味では、自分の場合、一度読んだだけではまた【受け取れるものを受け取れていない】のだろうと思っています。 

それでも、この数か月の経験を見直し、児童福祉司という仕事について、いくつかとても大切な「気づき」を得ることができました。

いい本だな、と思います。

たぶん、これからの仕事において、悩みに直面して読み返すごとに、新しいことに気づかせてくれそうに思えますので…。

居場所のちから―生きているだけですごいんだ【書評】

 以前ブログを書いたとき「読もう」と思った、この本を、少し前に読み終わりました。

 横浜から持ってきておいて、正解だったな、と思います。

 著者の西野博之さんは「NPO法人フリースペースたまりば」という活動を、平成3年頃から続け、平成15年には、川崎市が「子ども夢パーク」を設立する際に関わられ、さらにはその中において公的な「フリースペースえん」を発足させる、などの活動をされた人です。

 神奈川県弁護士会で、こどもの日の記念イベントにお呼びしたり、子ども夢パークを見学に行かせていただいたり、イベントにお話を聞きに行ったりしたことがあり、「ゼロから体当たりで模索し、何かを作り上げてきた人」の話に聞き入ったものでした。  

 この本では、1章でそうした「フリースペースを作り始めた際の体験」を、2章で様々な試行錯誤を取り扱った後に、3章で「居場所」という形態と経済的な問題について触れ、4章では子育てにおいて大切なことを、5章では、居場所を生み出すにあたっての心得を書いています。

 読んでいてわくわくするのは、1章と2章ですが、個人的には3章にもっとも関心がありますし、また、自分でも考えなければならないのは5章だと思っています。

  私自身は、福祉の場面においても経済的な問題は抜きにはできないと考えていますのでNPOで行うにせよ寄付が必要ですし、公的な運営であれば税金=払ってくださる納税者の方々が当然必要ですので。)、「経済の壁」との葛藤について書かれた第3章はとても興味深く読ませていただきました。この章の答えは、まだ終わりではないのかもしれない、これからも続いていく問題なのかもしれないと感じています。いまは「子ども夢パーク」「フリースペースえん」は、公的な費用で賄われていますが、そこに「どの程度の税金を投入する」ことに「市民の方々のコンセンサス」が得られるのか、また、「こうした活動が市民の方々に何をお返しできるのか」は、常に問いかけられる問題だろうと、個人的には思っていますので…(もっとも、昔ブログ内でも少し触れたのですが、その効果測定のために、あまりに多額の費用をかけてエビデンスを求めることも、本末転倒になりかねないと感じていますし、そうした「測定」が本当に正しいのか、大事なものを切り捨ててしまわないかという懸念も感じるので、「難しいな」と思っているのですが…。)。

 また、第5章「居場所を生み出すまなざし」は、1つ前のブログでも触れた、「大人になるという現実との直面」という問題ともかかわっているなと思います(昔別のブログでも、子どもとの面会場面で何を話すかについての自分の悩みという形で書いていますね…)。そうした現実との直面の「隙間」「猶予」を与えてあげることが、一つの「エンパワメントの方法」になるのではないか、というのが、この本の立場なのだろうと思っています。

 この本に書かれているようなことについて、私自身答えは出せていません。

 でも、読むと、考えてみたいことを「投げかけてもらえる」本だと思います。

ROOKIES就職体験会を見学させていただいて

 今日は、「ROOKIES」の就職体験会を見学させていただきました。

児童養護施設等を出身の若者を、雇用と応援する職親の会|ROOKIES

 「ROOKIES」というのは、児童養護施設等を退所した後や、事情があって親の援助や保証を受けられない方々を応援してくださる団体です。

 今日の取り組みは、この団体に所属している各会社の方が、自分の会社の仕事についてお話しして下さるものでしたが、「体験」できるものが多かったこと、またいくつかの仕事については「自分たちの生活のどこに役立っているかが、改めてわかる」ものであったことなどに、団体の方々の工夫と熱意を感じました。

 ありがたいな、と思います。 

 子どもに関わるとき、いつか「巣立つ」時期が来ることを、どう扱ったらよいかは、個人的には悩みがつきないところです。

 「いずれ自立しなければならないから、その時のために準備をしなければならないよ」というのは、「間違っていません」。少年審判官をしていた時も、付添人をしていた時も、シェルターの子ども弁護士をしていた時も、そうしたことは、程度の差はあれ、触れてきたことも多かったように思います。

 やはり、経済的な理由や制度上の理由から、いずれ自立しなければならない時期が来てしまうことが明らかである以上は、それをわかっていながら告げずにいることが良いことだとも言い切れませんでしたので…。

 他方で、そうした現実を受け止めることが難しかったり、そうしたことが親子間の葛藤等の原因となってしまっている場合もありますので、ただ現実を告げればいいというものでもありません。まさに、そうした側面に着目することが、前回のブログでも書いた「居場所の取り組み」につながっているのだろうとも感じていました。

 

 子どもと接する場面において、こうしたこと―大人になっていくことを話した方がいいのかどうか、どう話していったらいいのか、もっと違う話し方をしていたら子どもの反応も変わったのか…、そんなことをいつも考えながら、少年審判官、付添人、子どもシェルターの弁護士をしてきました(以前、こちらのブログで少し書きました。)。

 そうした自分の歩いてきた先にあったのが、いまいる児童相談所なのだろう、と思っています。

 

 そんな悩みを持つ立場からすると、今日のような「深刻に考えなくても、まず気軽に参加・体験できる」イベントというのは、ありがたいな、と思います。

 それぞれの子どもが、すぐに壁を乗り越えることができるか、進む道を決められるかは、そう簡単ではないかもしれません。

 でも、いつか壁に直面した時に、ここで体験したことを思い出してくださる方も、いらっしゃるかもしれませんので…。

多様な『社会的養護』の試行錯誤より―NPO法人ゆめ・まち・ねっとの活動

 今日は、「社会的養育における里親制度と里親支援研修会」として開催された講演会、「多様な『社会的養育』の試行錯誤より」に参加してきました。

  「社会的養育」というと堅苦しく聞こえてしまいますが、「家庭」にも余裕がなかなかなく、「学校」等にも居場所が見つけられにくい子どもがいる―そうした子どもの【居場所】を作ることが、社会を良くしていくこと、社会を支えていってくれる人を増やすことにつながるのではないか、ということではないかと個人的には感じています。

  里親制度ももちろんその一つですが、それだけに留まらない、多様な方法があるのでは―ということで、プレイパーク、寺子屋子ども食堂、里親等、様々な取り組みをされている、NPO法人ゆめ・まち・ねっとの渡部夫妻に来ていただいて、お話を伺う企画でした。

  こうした取り組みをされているNPOが全国にあることは、神奈川で弁護士をしていた時に、話を聞きに行ったり、見学に行ったりして知っていました。

 川崎市「子ども夢パーク」を開設された、NPO法人「たまりば」西野博之さんの取り組みがこうしたものでしたし(見学に行かせていただいたことや、お話を聞かせていただいたことがあり、お話については以前、別のブログでも触れています)、また、ジャスプカンのブースで知った福岡の取り組みSOS子どもの村福岡を作る前に行われた取り組みの一つとして、プレイバークを作る取り組みがされていたことを、報告書で読ませていただいた覚えがあります。

  (NPOによって内容に多少の差があるにせよ)「ルールのない、子供が自由に遊べる場を作る」「承認してもらえる場所を作る」ということの意義は、大きいのだろうな、と思います。

 昔と違い、いまは当然に右肩上がりの時代であるとは思っていませんし、さらに少子高齢化も進んでいる以上、子どもにかかるプレッシャーというのは大きいのでしょうし、家庭や学校においてもそうしたプレッシャーがかかりうる以上、そうした場所に【居場所】を見つけにくくなったお子さんが、「いることのできる場所」というのは、大切なのだろうと思います。

  もちろん、上記のような「ルールのない遊び場」以外の、他のいろいろなNPOがされている特定分野の社会的養護の取り組みも、それぞれ「それに向いたお子さん」がいると思うので、大切なものだと思います。

  …こうしたお話を聞くと、まだまだ自分が到底かなわない人が本当にたくさんいらっしゃるなという思いとともに、こういう方々がいらっしゃってこそ、社会も、児童相談所も、何とか成り立っていられるのだな、ということを痛感させられますね。

 また、明日から頑張ります。 

 …以前購入したまま、まだ読めていない、西野博之さんの「居場所のちから―生きているだけですごいんだ」を、読んでみたくなり、本棚から引っ張り出してみました(いつか読みたいとは思っていて、名古屋には持ってきていましたので…)。

 

※ 長らくブログの更新が滞っていましたが、この間、里親登録希望の方々の研修会を一緒に聞かせていただいたり、名養クラブの方々が行っている子どもの自立に向けての取り組みなどに参加させていただいています。

 ただ、一般に公開されているものではなかったため、記載を遠慮させていただいたことと、児童相談所の業務の中でなかなか余裕がなかったこともあって、ブログの更新までできませんでした。

 とはいえ、今日のお話は、「里親制度普及」という枠にとどまらず、一人でも多くの方に聞いて、考えてもらいたいと感じたことも多々ありましたので、ブログに書き残してみることにしました。

 すみません。日々充実していますが、更新は滞りそうに思います…。

南部地域療育センター「そよ風」スプリングバザー

 昨日は、南部地域療育センター「そよ風」で行われたスプリングバザーを見に行ってきました。

 「療育センター」というのは、障害を持つお子さんに対して、診察をしたり、障害に合ったサービスなどを行う施設です。

 当日の会場では、フリーマーケットや飲食店(屋台)、子どもの遊び場(スライムづくり、ビーズづくり、エアトランポリン)、ステージでの音楽、福引などがあり、たくさんの地域のお子さん・お父さんお母さんが来ていらして、とても賑やかでした(エアトランポリンやスライムづくりは、部屋から人(子ども)があふれているような状態でした…)。

 南部地域療育センターは、近くに小中学校や同じNPOが運営する福祉施設などもあり、「地域の子どもの集まる場所・子供の声が聞こえる場所」になっているところが、とてもいいと思います。

 横浜にいたころ、特別養護老人ホームと併設された川崎の乳児院を見学に行った際、施設の方から「子どもの声が聞こえると、お年寄りの方も、『アラ、赤ちゃんがいるわ』といって、うれしそうになる、しゃきっとする」という話を伺った覚えがありますが、こういう場所があると、その地域全体がやさしくなれるのかもしれないな、と思いますね。

 さて、とうとう5月7日が名古屋市東部児童相談所の開所になりますので、準備も大詰めですね…。

はや2週間

児童相談所に勤めて、はや2週間がたちました。

あっという間でした。

 

充実しています。

悔しいのは、まだまだ自分が知らないことが多く、現場のスピードについていくにはまだまだ不足していると感じることでしょうか。

書籍を読む時間も(自由業であったこれまでと比べると)限界があるため、工夫は要るのだろうと思います(工夫に時間を使うことが億劫になり、工夫を放り出す気もしますが…)。

そして、学びたいことが際限なく広がっていきますね…。

自分が「かなわない」ところを持っている人たちと、一緒にいられるのは、とてもありがたいと思います。

正直、そのまま手を出してしまうと、絶対に消化不良になるので、

何を学んで、何を学ばないかを、本当は考えていかないといけないのでしょう。

 

でも、苦手ですね。

できることは、何でも知りたいし、やってみたい、

そう思ってしまいますので…。

どうにか、更新可能に。

何とか、名古屋で生活できる状態になれそうです。

インターネットにもつなげるようになりました。

この間、名古屋で行われた安全パートナリングという、児童相談所の方々が参加している勉強会に出席して見たり、東京のCCAPの行っていた「妊娠期からの切れ目のない支援」のイベントでお話を聞かせていただいたりしていました。

あとは、塩野先生の行政法の本を読んでいましたね。行政法Ⅲを横浜に忘れてしまったようなので買わないといけないかな、と思います(今買うのならば、宇賀先生の概説の方が、最新の改正に対応しています。ただ、塩野先生のご本の方が、他の先生の学説や文献紹介が詳しいようにも思え、行政法の論文を読むときによいかもしれないと考え、あえて塩野先生の本を読んでみました。読み比べてはいないので、わかりませんが…。)。

しかし、今後、このブログをどうするかが少し悩みどころです。

公務員の端くれになる形ですので、これまでのように「忌憚のない意見」を書くというわけにもいかないかもしれません。

まだ、どうするかを決められてはいないのですが…。

なお、題名は少し直しました。(本体のホームページも改訂してあります。)