【天秤印】横浜弁護士雑記

横浜で弁護士をしている元裁判官が、日々感じたことなどを書いています。

人が集まって生きるということ(「オオカミの護符」【書評】)

1 昔は木がたくさん

 先頃,横浜市の「北」に行った際,そこの方から「この辺りは,昔,木がたくさんあったんですが…」ということを言われ,この本のことを思い出しました。

www.shinchosha.co.jp

 この本は,宮前の土橋にて幼少期を過ごされた方が書かれ,土橋が多摩丘陵の「谷戸」-丘陵地の小高い丘が重なる谷間の地の集落-であったときのことに触れていますので,昔の横浜市の北部での生活を連想することができます。
 というか,私自身が育ったのも,昔の「緑区」であり旧都筑郡なので,同じような「谷戸」だったのかもしれませんが…。

2 「オオカミの護符」-平地と山の繋がり

 この本は,著者が,子どもの頃の暮らしや,その頃の人が大切にしていた物に思いをはせる中で,家の土蔵に張られていた「オイヌ様のお札」が何であったのかを調べ,「御嶽講」について尋ね歩いて行く…というような内容です。
 大学生だった頃,奥多摩の山に登に行ったことは幾度かあったものの,「御嶽山」は,必ずしも高くなく,またケーブルカーがあったことで敬遠してしまっていた山でした。
 ただ,いつだったか,朝寝坊をしてしまい,他の山に登るには時間が足りない…というときに,一度登った記憶があります。
 参道には,宿房があり,また,複数の「講」が納めたと思われる大きな石の碑(そういう言い方が正しいのかは知らないのですが…)があって,「どうしてこんなに,崇拝されてきたのか」と,奥多摩の他の山や,家の近所にあった神社などと比べ,何となく不思議に思った記憶があります。
 この本によると,武蔵のお百姓さん達が,信仰し,年に一度代表者が詣でるなどしていたと言うことなので,「なるほど…」と納得しました。

3 社会の成り立ち

 この本によると,土橋は昔は50戸くらいの集落であったものが,その後7000世帯近くにまでなったと書かれています。
 昔の集落の成り立ちについて,この本では,民映研の『秩父通過儀礼』シリーズに触れ,「誕生から少年期,成人,結婚,長寿のお祝い,葬式に至る『人の一生』に対し,その成長を見極め,丹念に祈り,寿ぎ,そして見送る人々の姿が鮮やかに映し出されている。」として「人は,人をこんなにも大切に扱ってきたのだ」と書いています。
 また,「村落社会というのは,初めて村を訪れる外来者に対しては慎重に接する」「限られた自然の恵みの中で維持されている村落に,全く異なる暮らし方が持ち込まれることは,村の破壊につながりかねない重大事なのだ。」とも書かれています。
 他方で,雪の多い土地から冬の間に関東に農作業を手伝いに来ていた人(作男)について触れ,「かつては,土地の持つ天然の資源に頼る他なく,多くの人を養うことはできなかった。特に寒さが厳しく冬に耕作できない東北や信州などでは,家を守る長男以外はこうして『作男』として外に出されるか,手に職をつけ,大工や植木屋などの『渡り』職をして暮らすか,あるいは肩身の狭い思いをしながら故郷で生き延びる他はなかった。」とも書かれています。

 むかしは,集落という社会の構成員が「移動」等をすることは容易ではなく,そうした構成員がきちんと助け合っていける人になってくれるかどうかは,集落という社会にとってとても重要なことだったのでしょう。
 だからこそ,構成員に所属しない人が集落を訪れた場合には慎重にもなったのでしょう。

4 今とこれから

 今,50戸が7000世帯になることができたのは,世界規模で分業(グローバル経済,といえばいいのでしょうが)をすることで,「天然の資源」によらなくても「物を作って売る」ことで,食べていくことができていたからでしょう。

 それを可能にするためには,そうした集落というものに囚われずに,人が移動して集まって働けるようにすることが必要であり,合理的だったのでしょう。
 ただ,【世界規模で分業】をしているということは,他の国の状況が変わってこれば,自分の国の状況も変わってくることになります。「うちの国でもそれを作りたい」「うちの国で作った方が安い」という外国も,あるでしょうから。
 そうすると,今までと同じように7000世帯を維持していくのは,なかなか難しくなっていくのでしょう。1人1人の就職や進路も,選べる選択肢が変わってくると思いますし,税金の収入が変われば税金で行われていること-教育や福祉といったことにも影響していくのでしょう。
 とはいえ,いまから50戸に戻ることができるわけではありませんし,50戸に戻ったからといって上手くいくという話でもありません(「外国」「他国」が無くなるわけではありませんので)。

 ですので,これからどうするかを試行錯誤していくしかないのだろうな…。
 そんなことを,つらつら思ったりもします。

養護教諭のためのいじめ対策プログラム(平成29年度こころの健康セミナー)

1 養護教諭が「いじめ」の問題にできること?

 前の記事よりも、日付は遡ることになりますが…。
 8月26日の土曜日には,平成29年度の「こころの健康セミナー」(神奈川県精神保健福祉協会主催)に参加してきました。
 このセミナーは、以前勉強会で面識を得た児童精神科医の先生が、主に関わっておられたもので、その縁で一度参加して以降,割と毎年参加しているイベントです。

 今年は、養護教諭の先生が「いじめ」の問題に気付き・関わって行くにはどうしたらよいか、というお話でした。

 まず、ベテランの養護教諭の先生から、ストレスなどを過剰に抱えた子に気がついたり、そうした生徒が保健室を訪れるきっかけになるものとして、「”こころのSOSサイン”に気づくためのチェックシート」というものを作成した試みなどが紹介されました。こうしたチェックシートだけではなく、保健調査票や来室カードなどから、問題に気がつくことができることもある、ということでした。
 インターネットで見てみても、全国いろいろな学校で、こうした取組みを独自に行っているところも,ある気がします。

2 養護教諭のためのいじめ対策プログラム

 また、東京大学大学院教育学研究科の北川裕子先生からは、日本学校精神保健研究会において作成された養護教諭のためのいじめ対策プログラム」の紹介(こちらの記事などで紹介されていますね。)と、さらに現在行っている【保健室にタブレット端末を置いてもらって、そのタブレット端末での質問に生徒が答えることで、メンタルヘルスに関連する注意点をスクリーニングできるアプリケーションの開発】について、話していただけました。
 これらの取り組みは、以前私も別のブログで簡単に触れた、「オルヴェウスいじめ防止プログラム」を参考にしたものだということです。
 また、同じく前にお話を伺ったカナダのクッチャー先生も、日本で児童・生徒のメンタルヘルスへの意識を高めるためには養護教諭のかかわりが重要ではないか、と言っておられました(あ、これ同じ「日本学校精神保健研究会」のイベントでしたね。)。

3 個人的な感想(養護教諭のかかわり方はどうしたらいいのか)

 この取り組みは、養護教諭からの情報をきちんと学校が受け止めることができれば、受け止めてくれるのであればある程度の効果を発揮するかもしれないと思います。

 実は、別のブログをそれぞれ見ていただければわかるのですが、私自身は、オルヴェウスいじめ防止プログラムにも限界は感じたところがありますし、クッチャー先生のお話でも、養護教諭に過大な負担を負わせてしまう可能性が問題ではないかと思ったところはあります。

 オルヴェウスいじめ防止プログラムは社会学的な要素を含んでおり、本来的にはいじめへの教育指導の方法等を考えたというにとどまらず、「地域社会における自治としていじめにとりくむ仕組み」を開発したものではないかと感じています。
 いじめの問題は、「どうしたらよい」という「正解」が常にあるものではない(と私個人としては思っています)ので、それを学校の先生の責任だけにしてしまうと答えが出せないこともでてきてしまう-【だから地域社会の人もどうしたらいいかを一緒に考えよう】というのがオルヴェウス・プログラムの一番の骨ではないかな・・・と思っていました(まあ、そうした自治を作るためにもまず学校の先生がいじめ根絶に声を上げましょう、となっているのですが)。
 学校から求められる業務も多くPTA活動もなかなか担い手がいないと伝え聞くところですので(その背景には経済的に厳しく地域社会の人も学校支援に回せるリソースがないのではないかと思っていますが…)、「地域社会」の自治としてそういった取組みを行うことは難しいのではないかと考えていました。

 また、クッチャー先生のカナダでのメンタルヘルスの取組みを聞いた際も、養護教諭が「この子には、ストレスがかかっているのではないか」と判断できたとしても、【そのあとどうするのか】という「道筋」ができていないと、養護教諭が一人で抱え込んでしまうことにならないかが、心配でした。

 しかし、今回の「養護教諭のためのいじめ対策プログラム」であれば、養護教諭は「この子にはストレスが強いかな」と感じたときに、それを学校側に伝え学校として組織的に対応していくという形のようですので、「学校側がそれを受け入れてくれれば」養護教諭が一人で抱え込むことにはならないのかもしれません。
 そして、メンタルヘルス」の問題は、いじめと関係はあってもいじめそのものと必ずしも同じではないので、いじめの被害者や加害者が生じてしまう前に、学校側からの働きかけて生徒の心の負担を軽くすることができる場合もあるかもしれません。

 それが、「一定の効果はあるかも」と思うところですね。

 他方で、税収や予算等が増えているかは私は把握していませんので、学校にそれだけのリソースがあるかはなかなか悩ましいと思うのですが・・・。

4 こうした問題について

 私自身は以前このブログで書いたとおり、【経済的な問題】がこうした問題の背景にあると思っていますし、それについては、他国との関係もあることで容易に好転させる方策があるわけではないのではないか(少なくとも自分自身は思いついていない)と思っています。
 そうした状況の中では、①家庭でも共働きや仕事にまわす時間が増えて子供に回せる時間が減ってしまったり、子供がストレスに直面することが増えるかもしれないと思っていますし、②同時に地域社会全体で見ても、子供にまわせるリソースが少なくなっていく可能性はあると思っていますし、③税収も減る可能性がありますので、学校等の対応にも限りはくるのではないかと思っているところがあります。

 そのため、こうした問題に対応する「答え」が、何かあるのかはわかりません。
 でも、何もしないよりは、一つ一つは効果が限られるかもしれませんがこうした取り組みを増やしていくことからはじめてもよいのではないか、そんなことを思います。
 私自身は、教育に関しては素人なので、正しいのかはわかりませんが・・・。
 そんなことを、思いますね。

母子保健:さいたまの取り組みを伺って(父子手帳と産後うつのパンフレットなど)

1 「母子保健」のお話

 日曜日に,さいたまの母子保健の話を伺う機会がありました。

 裁判所,という役所にいて,児童相談所は多少なりとも関わりを持つことがあったのですが,保健師,あるいは精神保健福祉士社会保険福祉士といった方々は,児童福祉や高齢者福祉に非常に重要な役割を果たされていることは知っていても,実際にお会いする機会はあまりなく,どういった仕事をされているのか知ることが難しかった方々です。

 ですので,そうした方々がどのような活動をしているのか,お聞きできるのはうれしかったですね。
 児童虐待等の問題に関わると,やはり,こうした問題は早いうちから「そうした問題が起こらないように」働きかけたほうが,少ない労力で大きな結果に結びつくのでは?,と思っています。そのため,この問題をある程度かじった立場からすると,実は「保健」の分野の取り組みが最も重要ではないか,という気もしています。

2 やっぱりあった「父子手帳」

 今回,面白かった,というか「やっぱり」と思ったのは,「父子手帳」でしょうか。
 埼玉では,「父子手帳」を作って,配っているそうです。
 母子手帳は,少年非行などがあったときの家庭裁判所調査官の調査において,その子が生まれたときのことを知るため,あるいは,お母さんにその時のことを思い出してもらうために,お母さんに持ってきてもらうことも多いものです。

 私なども少年事件の付添人になったときには,同じようにお母さんに持ってきてもらい,話を伺っていました。

 そして,今年AHTの論文を書いたときに「揺さぶられ症候群(SBS)」についての注意書きが「母子手帳」にあることも知り,そのすごさに感心しました。

 他方で。
 「何で『母子』だけで,『父子』はないんだろう?。赤ちゃんが泣き止まなくて困ってしまうのはお父さんも々だと思うし,そういうことはお父さんが知っていてもいいのじゃないかな…?」と思い,「父子手帳」が何故ないかが疑問だったので,今回のさいたまの「父子手帳」は,我が意を得たりというか,「やっぱりあった!」と思いました。
 早速,インターネットで検索したところ,見つかりました。 

http://www.city.saitama.jp/003/001/012/p022335_d/fil/hushitecho.pdf

 柔らかい色のイラストなどが使われていて,見やすくていいと思います。

 個人的には,「手帳のような文字が一杯書かれたものを渡して読んで貰えるだろうか…」と思っていたところもあるので,「母子手帳アプリ」とか「父子手帳アプリ」なども,つくってみてもよいのじゃないかと思ったりもします。
 子どもの写真を貼り付ける欄があったり,スマートフォンで検温できる機能があったり(あれ?,未来に進みすぎですかね??)したら,なんか,使って貰える人も多くならないかな…なんてことを思ってしまうのですが。どうでしょうね?。

3 SBSや「産後うつ」のパンフレットも

 また,埼玉では,SBSや,産後後うつ予防のパンフレットも配布いているようです。
 SBSは,日本小児科学会のパンフレットかなと思いますが,産後うつ予防のパンフレットは,さいたま市で作られたもののようです。
 これみたいですね…。

 こうしたものが,少しでも助けになるといいな,と思います。
 そのほか,「子育て世代包括支援センター」の話も出てきました。
 調べてみると,今年の4月に,ガイドラインも発表されているんですね。

 必要な支援を受けられるように,窓口を一本化してそこから各機関に繋ぐという点などは「法テラス」などと似た発想にも感じますが,それにとどまらず各機関の情報を集約できることはちょっと期待してしまいます。
 もっとも,そのためには労力も必要になりますし,児童相談所の役割との関係などもあると思いますので,実際のところどのような感じになるのかは,なかなかイメージできないのですが…。
 
 いまは,児童虐待関係の仕事に就いているわけではないので,こうした知識は必須のものではないのですが,もともと知りたかった分野の話ですし,「社会のなりたち」として他の制度にも関係してくるように思いますので。

 ちょこっと書き留めておくことにしました。

※ なんてことをいっていたら、「母子手帳アプリ」なるものが、結構あちらこちらのサイトにあることに気が付きました。

 どれがいいのかは全くわかりませんが、NTTドコモなどが開発に関わっているという、これが主なものなのでしょうか?。 

www.boshi-techo.com

 …う~ん。時代に置いて行かれていますね…。

 また、「父子手帳」は、こちらのサイトなどで見ると、30パーセントくらいの自治体で配布されているようですね。 

父子手帳調査報告書(全国都道府県版) - 論文・レポート

 実際に、読んでいただけているのかどうかとか、そのほか問い合わせが増えたか、受診が増えたかなど、わかるといいのですが、それはさすがにわからない…ですよね…。う~ん。。。。

(いえ、また調べてみたら、どこかに調査結果が載っているかもしれませんが^^;) 

※ 神奈川県も、母子手帳アプリを導入しているようです。

www.pref.kanagawa.jp

  でも、神奈川県には、横浜市は含まれていないみたいです…;。

 まあ、扱う情報はどこまでかわかりませんが、もしかしたら要配慮個人情報も含むのかもしれませんし、情報セキュリティの問題や、システム的な整備等が必要なのだろうと、と思います。費用をかけて導入しても、あまり利用していただけないと悲しいでしょうし。

 あとは、どれだけ利用してもらえるかが、まだ分からないということもあるからかもしれません。

 今後の推移をまた見てみたいな、と思います。

「手をつなぐ~子どものためにさらなる連携を~(第9回日本子ども虐待医学会学術集会)」に参加して

1 どちらに参加しよう?

 昨日(8月5日)と、今日(8月6日)は、日本子ども虐待医学会学術集会「手をつなぐ~子どものためにさらなる連携を~」に参加してきました。 

 私自身は、弁護士会の子どもの権利に関する委員会を4月で辞め、今現在そうした関係の仕事はしていませんが、他方で、まだ参加を続けている勉強会の関係でこのイベントのチラシを頂いてもいましたし、演題の中には去年専門実務研究に書いた論文「虐待の疑いのある乳幼児頭部外傷についての法的考察」と関連するものもありましたので、個人的な興味もあり、参加してみました。

 いえ、直前まで迷っていました。

 同じ勉強会の関係から案内を頂いていた神奈川県立こども医療センターの『子どもの心へのさまざまなアプローチ』が、同じ8月5日(土)に開催され、そちらは無料でしたから(日本子ども虐待医学会学術集会は、一般参加の参加費として6000円かかります。) 

 とはいえ、比較検討した結果、こちらに参加することにしました。

 一度、書いた論文と関わりがある方が関心があったことと、一度「医学会」「医師の学術集会」というものを見てみたかったことが、決め手でしょうか。 

2 「医学会」「学術集会」への関心

 裁判官であったときは、どうしても「判決の結論を導くことに必要な」「法律関係の書籍・文献」に関心が向いていました。

 裁判官が自分で「どちらかの当事者に有利に働く」証拠を集めてしまうと「公平」にならないので、証拠は、当事者が自分で集めることが裁判の原則です。そのため、基礎的知識(「顕著な事実」にあたるような知識ですね…。民事訴訟法179条)については書籍を購入したり読んだりすることはあっても、結論を決めるような(法律学以外の)専門的知見について、自ら調べて判決に活かすことはしてはいけないことが原則です。

 しかし、弁護士になってからは、①そうした「限定」がなくなったことと、②平日の10時から17時の間でも、仕事さえ入れていなければ調査に時間を回すことができるため、飛躍的に調査対象とする文献の範囲が広がりました。

 横浜市大の医学情報センターなどは、初めて足を踏み入れたときは「わくわく」しました。「自分の知らなかった知識が、こんなにあるのか」と思って。

 しかし、いざ医学情報センターで集めた文献を読むと、「わくわく」が半分になってしまいました。

 集めた文献の中には、いろいろな医学会の学術集会等のものがあったのですが、非常にあっさりした記載が多かったためです。

 面白そうに感じたものほど、「抄録」ということで10行程度の記載のものも多く、「おかしいな」と思っていました。

 実際に、医師の学会・学術集会に参加すれば、そうした疑問が解けるかもしれない…。

 そう思っていました。 

3 参加してみて

 参加してみると、配布資料に「抄録」しか書かれていないものも、当日の発表は非常に充実しており、とても面白かったです。

 …いや、「抄録」に書かれている内容が読み上げられるだけだったら、8月5日の午前中で席を立って、こども医療センターのイベントのほうに足を運んでいたかもしれません。

 児童虐待の問題は、児童の身体に与えられた「傷害」が問題になることも多いので、当たり前ですが医師の研究が一番進んでいます。そして、行われた発表に対して、会場の医師からも率直な疑問が出され、立場にこだわらずにやり取りが行われているところを見ると、本当に「いいなあ」と思います(いや、私が知らないだけで、本当はいろいろ気が遣われているのかもしれませんが;)。

 もっとも、もともと民事裁判官として「高次脳機能障害」等の理解に関連して脳のことや受傷機序を学び、刑事裁判官として「創傷」等の法医学的な知識を学び、さらにその上で、昨年AHTについての論文を書いていたから、理解できたこともあったのでしょうが、とにかく充実していました(ちょっと時間が長くて、色々疲れましたけど^^;)。 

4 診療や、学術研究目的での、医学データの利用

 ただ、発表の中で、症例数が限られていると、やはり「もっと多くの事例があっても同じなのかどうか」がとても気になりました。

 そうした視点からは、以前「医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会」のブログを書いたときに、ちょっと勉強したような、「レセプト情報・特定健診等情報データベース」や「がん登録」と同じような、「子どもの死因」や「脳外傷」についてもデータベースを作って、他の症例と比較ができるようになるといいのにな…と思っています。 

 もちろん、医療情報を共有することは危険もありますので、いろいろなことを考え、配慮して作る必要はあるのでしょうが…。

ときどき山(あまり高くない)に…

 

少し前ですが、17日の土曜日に、大山に登ってきました。

 

昔から、ときどき山に登ります。

 

役人だったころは、何日か午前3時まで仕事したり、金曜の夜から眠れないまま早朝から、山に登りに行っていました。

 

そんなに高い山じゃありません。

…そこそこ高い山もありましたが。

もちろん、冬山なんかには登りません。

 

なぜ無理して時間を作って、山に登っていたのかというと「等身大の自分」を定期的に、きちんと確認したかったのだと思います。

 

「ある仕事」「ある組織」に属していると、自分も、その影響を受けて、「波」ができます。自信を無くす時もありますし、自意識過剰かな?と思うときもあります。

ですので、そういう「仕事」や「組織」と離れたところで過ごす時間は、「仕事」「組織」に振り回されないためには必要だと思っています。

 

山に登ると、日頃どんだけ頑張って仕事をしていようとも、息が切れます(ガテン系の仕事の人は違うかもしれません…。)。そうなると、自分の中に意識過剰になっているところがあっても、「ああ、自分は結局この程度しか体力がないんだな…」「なさけないな…」ということが分かります。

 

他方で、自信を無くしていても、「あ、これだけ登れるのか。」「結構頑張った。」と思えて、自分を持ち直すきっかけになったりもします。

 

しばらく、大した山に登っていなかったので(去年「畔が丸」に登って以来ですかね…。)、大山でもきつく感じましたね…。ケーブルカーは使わなかったのですが。

頂上に咲いていた更紗満天星がきれいでしたね。

 好きな花なので、少し嬉しかったですね。

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改正個人情報保護法と、自治会・町内会

 

1 自治会・町内会も改正個人情報保護法の対象に

 先日タウンニュースの取材に応じる際、いろいろと必要以上に調べてしまったこともあり、こちらのブログに書き残しておこうと思います。

 改正個人情報保護法平成28年5月30日に施行され、このときから町内会や自治会にも個人情報保護法が適用される、という話題が出てきました。

 いえ、それまでも、「町内会や自治会は適用しなくていい」ということになっていたわけではないんです。ただ、【6か月以内に5000件を超えない個人情報しか持っていない場合】には、法律が適用される「個人情報取扱事業者」にあたらないとされていたところ、「5000人も会員がいる町内会・自治会」というのはなかなかなかったので、気にしなくてもよかっただけなのですよね。

 今回の法改正で、そうした事業者も、みんな個人情報取扱事業者になることになりましたので、町内会・自治会も対応をする必要が出てきました。

 でも、慌てる必要はありません。

 改正された個人情報保護法は平成29年5月30日から適用されますが、だからといって、それまでに持っていた個人情報=町内会の名簿などを捨てなければいけなくなるとか、必ず会員の同意を取り直さなければならなわけではありません落ち着きましょう。

 また、個人情報保護法は、あくまで「行政法規」=行政が、あらかじめ困ったことが生じないように事業者などにルールを課す法律、ですので、この法律に違反したからといって、実害が生じていないと評価されれば、損害賠償等が必要になるわけではありませんもともとこの法律は、国の機関への苦情や、国の機関からの勧告等によって、少しずつ個人情報の取り扱いをよくしていくことを目指した法律だと思います。もちろん、だからといって、放置していて実害が生じれば問題になりますので、注意しましょう。

 ただ刑事罰が新設され、「個人情報取扱事業者」である自治会・町内会の会長や役員の方が名簿を売ってしまったりすると、犯罪となり得ますので、注意が必要です。

 そして、横浜市では、平成29年3月10日に、町内会や自治会の上部組織である、「横浜市町内連合会」「個人情報保護法改正に伴う名簿の取り扱いについて」「自治会町内会向け個人情報取扱い手引き」という書面を交付し、各町内会長・自治会長に1部ずつ配布するよう依頼しているはずです。しまってあったら、出してきて読み直しましょう。

 また、国の機関である「個人情報保護委員会」が、「自治会・同窓会向け」に、「会員名簿を作るときの注意事項」という資料も作成しています。こちらも参考にしてもよいかもしれませんね。

2 「個人情報取扱事業者」の【中の人】は誰?

 個人情報保護法は、まず、個人情報を「取得」して、「利用」「保管」し、最後に「廃棄」をすることについて、個人情報取扱事業者に対していろいろな義務を定めています。

 そして、この法律を理解するためにまず必須の前提として押さえておかなければならないことは、【どの範囲の人がその個人情報取扱事業者の内部の人間なのか】です。

 町内会や自治会は、数年ごとに会長や、役員が交代すると思いますが、交代したら、あらたしい会長や役員は、前の会長や役員がもっていた個人情報を引き継げないのでしょうか?。

 また、会長や役員という役割を持っているわけではない、その町内会、自治会の区域内に居住し、自治会や町内会に加入している「会員」には、個人情報を渡してもいいのでしょうか?。

 ここをきちんと理解しないと、混乱してしまいます。

(1)会長や役員は【中の人】=利用目的の範囲内なら利用可  

 結論を言えば、前者=つまり、「会長」や「役員」など、自治会や町内会からその自治会・町内会の事業を行うために役割を任されている人は、個人情報取扱事業者」の内部の構成員(会社で言うなら、社長や社員)ですので、その内で個人情報をやりとりすることについて、改めて同意をもらわないといけないということはありません。

 とはいえ、あらかじめ利用目的を定めておいて、その利用目的の範囲内で個人情報を利用することが原則です。 

第16条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定に より特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

個人情報の保護に関する法律

(2)会員や上部組織は【第三者】=提供には「同意」がいるのが原則

  これに対して、後者=つまり、自治会や町内会の会員は、そうした立場ではないので(「第三者」と言われます。)、自治会や町内会が、会員に個人情報(他の会員の個人情報もですが)を渡すときには、原則として「同意」が必要となります。

第23条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同 意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

 個人情報の保護に関する法律

3 会員名簿の場合

 上の法律等がどうで起用されるか、会員名簿を例にして、具体的に見てみます。

  なお、ここに書く内容は横浜市「自治会町内会向け個人情報取扱い手引き」を基に、「なんでそういう記載がいるのか」を私なりに説明する程度のものです。混乱しないためには、手引きだけを読んで、以下の記載は読まない方が良いかもしれません。不安になったとき、「知りたい」というときには、読んでみてもよいでしょう。

(1)取得の場合(同意と利用目的の考え方)

 自治会や、町内会は、加入を強制されている団体ではなく、脱退もできる任意団体です(最高裁判所平成17426日判決)。 

 ですので、区域内に転居して、加入する方には、「加入申込書」を書いてもらうことになり,このとき個人情報を取得することになります。

 個人情報を書面で取得することになりますので,「あらかじめ利用目的を明示」して取得する必要があります。

18条2 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。

個人情報の保護に関する法律

 同時に,書いてもらった個人情報を,【第三者】に提供するのであれば,それについての同意も頂いておく必要があります。

 同意のもらい方については,個人情報保護委員会」の「会員名簿を作るときの注意事項」の3頁目,「個人情報を第三者に提供するときのルール」において,「名簿に掲載される会員に対して配布するため」と伝えた上で任意に書面を提出してもらえば,同意を得たことになるとされているので,この方法で良いと思います(同じ個人情報保護委員会の,「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」24頁などを見ると,本来はもっと明示の同意を得なければならないようですが,おそらくは非営利の事業者であることや、その用途等から,こうした形の同意でよいとされているのだと思います。)

 ただ,自治会・町内会では,会員に配布するだけではなく,上部団体である連合会や,近隣の自治会に名簿を提供することもあるかと思われますので,その場合には,それらについても記載する必要があります。

 具体的には,横浜市「自治会町内会向け個人情報取扱い手引き」にもある「自治会(町内会)加入申込書記載例」を参考にされればよいと思います。もちろん,自治体によって,ここに書かれている以外の【第三者】にも名簿を提供する場合には,それも記載しておくこととなります。

 提供先については,必ずしも名称を明示する必要はありませんが,提供する範囲や属性は示す必要があるとされています(上の「名簿に掲載される会員に対して」というのは,「名称」を明示しているわけではありませんが,範囲がわかるのでOKです。)。

Q5-9 第三者提供の同意を得るに当たり、提供先の氏名又は名称を本人に明示する必要はありますか。
A5-9 提供先を個別に明示することまでが求められるわけではありません。もっとも、想定される提供先の範囲や属性を示すことは望ましいと考えられます。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A 

 そのほかの利用目的についても,おおむね横浜市「自治会町内会向け個人情報取扱い手引き」にもある「自治会(町内会)加入申込書記載例」を参考にし,もし自治体や町内会独自の取り組みで他にも個人情報を利用しているものがあれば,それを記載しておくことになるでしょう。具体的な記載である必要があるため,「町内会の事務に利用します」では望ましくないのではないかとも思われます。

 なお,横浜市では,自治会・町内会に現況届を提出してもらう際に,「役員名簿」も提出してもらっているようですが,これは提出時に改めて「役員」の同意をとればよいので,その同意まで「全会員の」加入申込書でもらう必要はありません。

(2)第三者に提供する場合の「記録」

 取得の際に,上記のように第三者提供の同意を頂いたとして,その後,実際に第三者提供した場合(会員への名簿の配布,上部団体への提出等)は,何かしておくことがあるでしょうか?。
 今回の改正法では,ベネッセで起きた情報漏えい事件を受けて,「名簿」のようなものが本人の知らないところで流通したりしないように個人情報取扱事業者に対して,名簿等を提供した場合,名簿等を提供してもらった場合には,【記録に残すこと】を義務づけています。
第25条 個人情報取扱事業者は、個人データを第三者(第2条第5項各号に掲げる者を除く。以下この条及び次条において同じ。)に提供したときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならない。ただし、当該個人データの提供が第23条第1項各号又は第5項各号のいずれか(前条の規定による個人データの提供にあっては、第23条第1項各号のいずれか)に該当する場合は、この限りでない。

 「提供した時」に記録に残しておく事項としては、①本人の同意を得ていること、②提供(代表者)の氏名・名称、③「誰の個人情報が書かれていたか」その本人の氏名等、④名簿に書かれている内容の項目などです(個人情報の保護に関する法律施行規則13条1項2号)。  

 各会員に配布したことについては、その「会員名簿」に、③、④が書かれ、「加入申込書」に①、②がかかれていますので、これを「配布時から3年間」(個人情報の保護に関する法律施行規則14条)捨てずに保管しておけば大丈夫です。だから「個人情報保護委員会」の「会員名簿を作るときの注意事項」3頁で、「名簿そのものを一定期間保管する必要があります。」とだけ書いてある(別の記録の作成までは不要)のですよね。

 ただ、隣接自治体・町内会や上部組織については、実際に提供したかどうか「加入申込書」の記載だけでは明確ではないかもしれませんので、保管している名簿に、「○○自治会(代表者✖✖)に提供」「○○連合会(代表者△△)に提供」等とメモをしておいてもよいかもしれませんね。もっとも、上部団体が隣接団体の役員名簿ももらうことはあると思うので、そこに書いてあればそれを保存しておけばよいのでしょうが。

(3)第三者に提供してもらった場合の記録 

 上記の通り、今回の法改正では、「名簿をもらったとき」も「個人情報取扱事業者」は、記録を残さないといけなくなりました。

 第26条 個人情報取扱事業者は、第三者から個人データの提供を受けるに際しては、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項の確認を行わなければならない。ただし、当該個人データの提供が第23条第1項各号又は第5項各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

 個人情報の保護に関する法律

 「提供を受けたとき」に記録に残しておく事項としては、①本人の同意を得ていること、②提供(代表者)の氏名・名称、③提供がその個人データを入手した経緯、④「誰の個人情報が書かれていたか」その本人の氏名等、⑤名簿に書かれている内容の項目などです(個人情報の保護に関する法律施行規則171項2号)。  

 いただいた名簿で、④⑤は書いてあります。③も、「会員名簿」である以上、町内会・自治会に「加入」したことでその会員の個人情報を入手したことがわかりますので、特に確認せずとも明らかと言ってよいと思います。②提供元の代表者については(2)と同じです。①は少し問題でしょうか。加入申込書の書式を見せてもらい、そこに、「こちらの自治会・町内会に提供することもあります」ということを確認できれば、その写しをもらっておいて、もらった名簿と一緒に3年間保存すると確実でしょうか。

 (2)のとおり、これらの項目は、提供元の自治会・町内会も残していますので、提供をうけた自治会・町内会は、提供元の自治会・町内会に記録義務の作成の代行をお願いする形を、相互にとる(自治体・町内会相互間では、常に提供元が提供先の分も代行して記録義務を履行する)といいような気もしますね。

 上部組織等で、そうした話し合いや取り決めまでできるものなのかどうか、そこはわからないのですが…。

4-1-3 代行により記録を作成する方法  
提供者・受領者のいずれも記録の作成方法・保存期間は同一であることに鑑みて、提供者(又は受領者)は受領者(又は提供者)の記録義務の全部又は一部を代替して行うことができる(提供者と受領者の記録事項の相違については留意する必要がある。)。なお、この場合であっても、提供者及び受領者は自己の義務が免責されるわけではないことから、実質的に自らが記録作成義務を果たしているものと同等の体制を構築しなければならない。 

個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)19頁

4 災害時要援護者名簿の場合 

 1でリンクを張った、横浜市の「個人情報保護法改正に伴う名簿の取扱いについて」には、会員名簿以外に「災害時要援護者名簿」というものについて記載があります。

 この「災害時要援護者名簿」というものは、災害対策基本法に基づく「避難行動要支援者名簿」のことを差します。 

第四十九条の十 市町村長は、当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に努めるとともに、地域防災計画の定めるところにより、避難行動要支援者について避難の支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置(以下「避難支援等」という。)を実施するための基礎とする名簿(以下この条及び次条第一項において「避難行動要支援者名簿」という。)を作成しておかなければならない。  

 平成25年以前、災害対策基本法にはこうした名簿についての規定はなかったものの、平成18年3月に国が「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を作成し地方自治体が「災害時要援護者名簿」を作成し、本人の同意のもと、民生委員や自治会に提供することを提案しました。

 これに基づき、横浜市は「要援護者の避難支援に関する作業部会」での検討を経て、平成19年2月に「災害時要援護者の避難支援システム策定の手引き」を作成して、この取り組みを進めてきたようです。

 そうしたところ、平成23年3月11日に東日本大震災が起き、その中で、本人の同意を得ないままに、地方自治体が持っている情報を被災者支援に使用してよいのかが悩ましい問題として出てきました(こうした経緯については、岡本正弁護士の、「災害対策と個人情報利活用の課題‐災害対策基本法と消費者安全法が示唆する政策展開‐」(社会情報学第3巻3号)に記載されています。)。

 その教訓から、平成25年に災害対策基本法が改正され、「避難行動要支援者名簿」についての規定ができましたが、これについては、それまでに災害時要援護者名簿を作成しており、それが法律の要件を満たしていれば、「避難行動要支援者名簿として活用することができる」とされています。

 避難行動要支援者名簿(災対法第49条の10~第49条の13)関係の質疑応答の16

  そのため、横浜市の「災害時要援護者名簿」は、法に基づいて、地方自治体が作成した名簿であり、法律上同意に基づいて関係機関に自治体が提供できることになっています。 

49条の11第2項  市町村長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、地域防災計画の定めるところにより、消防機関、都道府県警察、民生委員法 (昭和二十三年法律第百九十八号)に定める民生委員、社会福祉法 (昭和二十六年法律第四十五号)第百九条第一項 に規定する市町村社会福祉協議会自主防災組織その他の避難支援等の実施に携わる関係者(次項において「避難支援等関係者」という。)に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、当該市町村の条例に特別の定めがある場合を除き、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によつて識別される特定の個人をいう。次項において同じ。)の同意が得られない場合は、この限りでない。 

災害対策基本法

 ですので、横浜市と協定を結んで、この「災害時要援護者名簿」の提供を受けている自治会・町内会では、自治会や町内会で公表している利用目的に関わらず、法律に書かれている目的の範囲内で使用する限り、「法令に基づく」ものとしてこれを利用することができます。 

第16条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。(中略)

3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。

一 法令に基づく場合 (以下略)

第23条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合(以下略) 

 地方公共団体から提供を受けたものですので、記録化も必要ありません。 

第25条 個人情報取扱事業者は、個人データを第三者(第2条第5項各号にげる 者を除く。以下この条及び次条において同じ。)に提供したときは、人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該個人データを提供した年月日、当該第三者の氏名又は名称その他の個人情報保護委員会規則で定める事項に関する記録を作成しなければならない。(以下略)

2条5 この法律において「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。

一 国の機関

地方公共団体

(以下略) 

 個人情報の保護に関する法律

 ただ、こうした名簿を基に、各自治会等で情報を書き加えるなどして作成した名簿や、個別支援計画等については、災害対策基本法に明示的な定めがないように見え、「本人の同意」に根拠を持っていると思いますので、その情報を提供・共有する範囲も含めて、きちんと同意をとって取得し、同意を得た範囲の中で運用する必要があるでしょう(災害時要支援者名簿・避難行動要支援者名簿に記載されている情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当するものも多いと思われますので、本人の同意をきちんととることは必要です。)。 

 NPOなどに渡すことも、本人の同意がない限りは、基本は避けた方がよいでしょう。

 ただし、本当に災害が起きてしまった場合、本人の生命が危ない場合には、個人情報保護法の以下の規定に従って、第三者提供等も行うことができるでしょう。悩ましい場合には、市役所・区役所の健康福祉局福祉保健課等に伺ってみてもよいでしょう。 

第23条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。(以下略) 

 個人情報の保護に関する法律

5 それ以外の個人情報?

 それ以外に、各自治会や町内会が、どんな個人情報等を持っているかについては、残念ながら、それぞれ違うと思いますので、何とも言えません。

 総務省「コミュニティ団体運営の手引き」などを見る限りでは、101頁の「会費集金補助簿」のようなものは、個人情報の名簿(個人情報データベース)にあたるでしょうから、利用目的以外に使ったり、同意のないままこれを第三者に提供してはいけないでしょう。

 横浜市では、「地域の見守りネットワーク構築支援事業」なども行われていたようですので、そういったところでやりとりされた、保管された個人情報もあるかと思われます。ただ、これも多くは「本人の同意」があるはずですし、「利用目的」の範囲内で運用するのであれば、問題ないことが多いのではないかと思われます。

6 刑事罰

  タウンニュースの取材のときにも聞かれたのが、この刑事罰の話です。

 改正された個人情報保護法には、以下の規定があります。 

第83条 個人情報取扱事業者(その者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人 の定めのあるものを含む。第87条第1項において同じ。)である場合にあっては、 その役員、代表者又は管理人)若しくはその従業者又はこれらであった者が、その業務に関して取り扱った個人情報データベース等(その全部又は一部を複製し、又は加工したものを含む。)を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し、又は盗用したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 

 個人情報の保護に関する法律

 ですので、こういうことをやってはいけません。今後は、警察が特殊詐欺の拠点などを検挙した後、使われていた名簿がどこから流れてきたのかを調べて、場合によっては立件できるかどうかを検討することも、絶対にないとは言えません。

 これは、あくまで「提供した人」が犯罪に問われますが、そうした人を雇っていたり、そうした人が役員を務めていた個人情報取扱事業者についても、「両罰規定」というものが設けられています。 

第87条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、そ の法人又は人の業務に関して、第83条から第85条までの違反行為をしたときは、 行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。  ­
法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は 被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。  

 個人情報の保護に関する法律

 ただ、この両罰規定というものは、その個人情報取扱事業者がきちんと安全管理措置を行っていた場合にまで処罰するというものではありません。

参議院法制局

 その点からも、日ごろの安全管理措置をきちんと心がけることは、大切だろうと思います。 

※ 6/13 誤字や、誤解を招くおそれもあるいくつかの個所を微修正しました。

「改正個人情報保護法Q&Aと誰でもつくれる規程集」【書評】

 5月30日まで行っていた,改正個人情報保護法にかかる仕事との関係で,個人情報保護委員会から公表されているガイドライン(「通則編」及び「第三者提供時の確認・記録義務編」),のほか,「金融分野における個人情報保護に関するガイドライン」,「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」「Q&A」などには一通り検討し,また作業に必要な範囲で,法律,施行令,施行規則,そして宇賀克也先生の書かれた逐条解説などに目を通していましたが,それ以前に購入していたこの本をまだ目を通していなかったので,この機会に通勤読書で目を通しておきました。

www.daiichihoki.co.jp

 正直,私自身既にガイドライン等に目を通しているので,もっと早く目を通せると思っていましたが,EUデータ保護指令等と関わる立法経緯や,私がガイドラインを読んでいなかった匿名加工情報,外国第三者への提供に係る部分の記載は手強く,ちょっと時間を取ってしまいました。
 「規程」等は巻末に付録として付いているのですが,それぞれの条項等に細かな解説があるというほどではありませんので,規程等を作るためにこの本1冊で足りるかは,何とも言えません。もちろん,ガイドライン等と併用して,規程を考える際の「たたき台」としては,悪くはないと思います。なお,巻末の規程はそれなりの規模の会社向けと思われ,小規模事業者等には,少し詳しすぎるだろうと思います。

 弁護士が,改正個人情報保護法に係る業務を請け負ったときに,この本で何か対応できるかというと,それは難しいと思います。ガイドラインの内容も,それほど詳しく引用されているわけではありません。弁護士が業務として請け負った場合は,上記の各ガイドライン等と,宇賀克也先生の逐条解説の方が,優先順位が高いと思います。
 ただ,ガイドラインや,宇賀先生の逐条解説は,何分,取り扱っている事項が広範かつ詳細であるため,全体像を把握するには不向きなところもあります。
 そうした意味では,いずれ個人情報に関わる相談などがされたときに「どんなところに問題があるのか」「どういった資料を見ればよいのか」の【気づき】を持てるようにしておく,そのための書籍としては,悪くないと思いました。

 書式集も付いているという点では,第2東京弁護士会の書籍も,同じだったと思いますが,そちらはまだ目を通せていませんね…。書式集の書きぶりを比べてみると、いろいろと面白いかもしれないと思っていますが,改正個人情報保護法だけに時間を割くわけにもいきませんので,そちらの本はまだ先になると思います。

 ほかに,改正個人情報保護法の関係では,水町先生の本や,一問一答なども目に付きますが,申し訳ないながら,そうした書籍までは購入していませんね…。

 所属する委員会や研究会で報告・調査を頼まれている事項もありますし,インターネット法研究会との関係では,匿名加工情報と外国第三者への提供についてのガイドラインも関わってくるので,またそれらにも目を通すつもりです。
 でも,まだ少し先になってしまうでしょうか…。