ブログが中断していた間に読んでいた本について書こうと思っていましたが、一度読んで時間が経った本のことを、再度思い出して書くのは、なかなか大変です。とりあえず、最近読んだ本を一つ。
児童相談所の常勤弁護士は、どんな業務をやることになるのか。採用は決まったものの、それがまだわからなかったころに、「自治体が関わる訴訟」について広く学ぶ、という意味で購入しておいた一冊です。
残念ながら、「児童相談所」の常勤弁護士の業務とは、関連性が薄かったため、最近まで読んでいなかったのですが…。
東京都の、特別区人事:厚生事務組合法務部が編者となっている本です。
判例集や判例評釈と比べると、1つ1つの事件についての法律的な評釈や関連判例の言及は控えめで、また、対象となった判例も年月日等が書かれているわけではなく(そもそも公刊されていないものがほとんどだと思います。)、「法的知識の習得」に向いた本というわけではありません。
ただ、この本の特質は、「地方自治体の関わる訴訟・法的紛争が、いかに多彩か」「日常の自治体の業務の中に、訴訟になりうるものがどれだけあるのか」といったことを知ることに非常に良いことでしょう。そして、地方自治体の法務部がどんなことをしているのかを知ることにも、最適の本だと思います。
また、おもしろかったのは、「証拠」による「立証」についての工夫や努力が、いたるところに書かれていることです。
裁判例を読んでいると、ときどき、「この事実は、一体どういう証拠で認定したのだろう?」と不思議に思うことがままあります。判決文では、甲〇号証、などと書かれてあっても、具体的にそれがどんな証拠なのかは、判決文からは分かりません。そのため、判決文を基に書かれた評釈でも、そうしたことはあまり書かれてはいません。
この本は、具体的にそうした点での工夫がいろいろと書かれており、そこは非常に面白く感じました。
地方自治体にお勤めの方にとって、「裁判」というものの性質、「法務」とはどういうものなのか、を理解するためには、良い本ではないかと思います。
それにしても、東京はすごいと思います。次に読もうかと思っているこの本を見る限り、これだけの法務部があるのに、さらに、東京弁護士会に自治体等法務研究部があるようなので…。