今朝、新聞を見てびっくりしました。
…いえ、取っているのは読売新聞なのですが。
労働契約法20条を根拠として、定年後の期間雇用社員が正社員と同じ業務に従事しているにもかかわらず、賃金に差があることを問題とした判決が出たようです。
判決文を見ていないので、具体的にどういった論理構成で、どこをどう判断したのかまではわからないのですが…。
こんな裁判が係属していたのですね…。
たしかに、現行の労働契約法20条ができる前に、大阪高裁平成22年9月14日判決(裁判所のHPには掲載されていません。)において、運輸業の会社において定年後も【同じ労務】に従事しているにもかかわらず、労働条件が切り下げられたことが争われ、
「正社員とシニア社員との間には、同一労働同一賃金の原則や均等待遇の原則の適用は予定されていない。」
等と判断された事例がありましたから、その後、【労働契約法20条ができたらどうなるのか?】、というのは、典型的に問題となりうる場面ではありますね。
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
新聞報道を見る限り、高年齢雇用継続給付を受給していたのか等について触れられていませんが、どうだったのでしょう。
上記大阪の判決も運輸業であることからすると、運輸業等ではこうした形態の定年後再雇用を行っているところも多いのかもしれません。
具体的な内容は判決文を見てみないとわかりませんが、労働契約法20条に関わる数少ない事例ですので、判決文が公刊されたら、目を通してみたいですね…。
※ 労働契約法20条についての厚生労働省の指針(平成24年8月10日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」 )では、以下の通りとされていますので、多くの企業(定年の前後で職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更される企業)には直ちにこの判決が影響するわけではないと思います。
どういった場合に労働契約法20条が及ぶのかについては、今後判決文が公開されるのを待つことになるかな、と思います。
エ 法第20条の「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」 は、労働者が従事している業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度を、 「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」は、今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等(配置の変更を伴わない職務の内容の変更を含む。)の有無や範囲を指すものであること。「そ の他の事情」は、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであること。例えば、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違することについては、定年の前後で職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情がない限り不合理と認められないと解されるものであること。
※ 6/21、その後法律家用の判例検索システムに、裁判例が掲載されましたので、裁判例を紹介してみました。残念ながら、感想等までは力が及ばず、また今後に回すことになってしまいましたが、関心のおありの方はどうぞ(埋め込みにすると、ブログ中に使った図や表が表示されちゃうんですね…。途中で切れた表が。)。
yokohamabalance.hatenablog.com
※ 6/27 裁判例を読んでの「雑感」のようなものを書いてみました。おそらく、見落としや、適当でない個所も多々あるでしょうが、関心のおありの方はどうぞ。
yokohamabalance.hatenablog.com
※ 7/2,7/20 「違和感を覚える根本的な問題」について、少し気が付いたところがありましたので、以下二つのブログで書いています(最終的には、7/20がもっとも進んだ内容の見解になっていますね。)関心がおありの方はどうぞ。