【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

期待に沿う答えを返してあげられないとき

 法律相談に来てもらっても、相手の期待に沿う答えを返してあげられないときは、難しいな、と思います。

 とはいえ、本人の思いに沿ってしまうと、現状を変えようと(裁判等をやって)しまうと、かえって本人の望まない結果に結びつく場合はあります。

 僕としては、そのことも含めて正直に話し、本人に選んでもらう、あるいは選択の手助けをするほかないかなあ…と思っています。

 依頼を受けて活動した後、「こんなはずじゃなかった」と思われること、いただく報酬に見合ったものをお客にお返しできないことは、僕は嫌でしたから。

 「四路五動」「尺蠖之屈 以求信也」というように、「あえて動かない事」が実は「最善」であることもありますから…。

 

 とはいえ、長引く不況の中、少子高齢化で先行きが暗く、みんな閉塞感に苦しんでいる中で、相談に来てくださった方に「期待に沿った答え」を返せないことは、やはりちょっと悲しいのですが…。

 法律相談の方法には、他にもいろいろとあります。依頼人の心情に寄り添い、時間をかけてその感情を解消していく、カウンセリング型の法律相談もあります。

 女性の弁護士の先生で、離婚事件などを担当されると、そうしたやり方でないとなかなか事件が進められないことも多いと思っています。

 そして、最も無責任なのは…

 「勝ち目があるかどうか」あるいは「弁護士として何を依頼人に返すことができるか」を考えることなく、依頼人が最も望むであろう言葉を与え、いざ裁判になって負けたら、「僕が君が勝てると思っているけど、今回は裁判官が悪かった」等と口にする方法でしょうか。

 実のところ、営業的には最も理に適った方法です。依頼人の言うとおりにした方が依頼人も喜びますし、口を挟めば不満を持たれます。依頼人の言うとおりにして負けたとしても、なかかな弁護士を責めにくいものでもあります。

 ただ、僕は好きにはなれませんでした。「何がしたくて弁護士になったのか」「何の報酬としてお金を頂いているのか」がさっぱり理解できなかったので。

 とはいえ、人は残念ながら「自分にとって耳触りの良い言葉を好む」ものではあるので、そうした弁護士を人が求めるのであれば、それはそれで当然かもしれないな、と思うこともありますね…。