【天秤印】春日井弁護士雑記(旧名古屋・横浜弁護士雑記)

現在春日井市に勤めている元裁判官現弁護士が、日々感じたことなどを書いています。

ライフストーリーワーク入門【書評】

随分と経ってしまいましたが、自分の進退について一定の決断ができたおかげで、少しずつ、何かを学びたいという気持ちも戻ってきています。

今回は、以前購入してあったこの本を読んだので、簡単に。

www.akashi.co.jp

児童相談所の職員の方が読まれているのを目にして、それ以降、気になっていた本です。

子どもに関わる学会に参加した時にも出張販売の書店で見ることがありましたし、「サインズ・オブ・セーフティ・アプローチ実践ガイド」等に出てくる、「ワーズ&ピクチャーズ」とどう違うのか、また、ライフストーリーワークの取り組みを行う中で、本人のトラウマに触れるようなところもあるかもしれないが、そうした場合はどうするのか(リマインダーになってしまうことも、ありうるように思われましたので)、そうしたことを疑問に思うようになり、読んでみた本です。

ライフストーリーワークと呼ばれる日本での様々な試みに、明確な定義、というものは存在しないようです。個人的な印象で言うと、子どもが自分の人生の過程を知りたいと思った時のために、子どもの周りの大人がどういった準備を日ごろからしていけばいいか、ということを考えた取り組みのようなものなのかな、ととらえています。

もともとは、外国における児童福祉の実践の中で、子どもの成長過程を記した本やアルバムをその子どもに渡す、という試みから始まったもののようです。現在は、さまざまな試行錯誤・過程を経て、形式的に本やアルバムを渡すという点よりも、いかに子ども自身が自分の成育歴に納得できるか、という点に、重きを置いているように見受けられました。

本人が知りたいと思っているのかどうかといった、本人の気持ちや、知らせた場合のリスクなど、さまざまな事情をアセスメントしたうえで、どこまでの事情を知らせるかを行うかを決めていくようです。この本には、アセスメントにおける詳細な考慮要素や、トラウマが関わるような場合の対処法までは書かれていませんでしたが、あくまで「入門」なので、類書を読めばそうしたことも分かるのかもしれません。

施設の職員など、子どもの日常生活を支える支援者に対し、「子どもはこういうところに疑問を持ちますよ。その時あなたはどうしますか?。どうしたらよいかを考えてみませんか」―そんな問いかけを投げかけられる本だと思いました。